ヤフー知恵袋に7月初め、「50歳専業主婦。中1の娘から『ママはなんで働かないの?』と聞かれました」とのタイトルで相談がありました。相談者が「お金に困ってないし、毎日家族を迎える幸せがあるから」と答えると、娘さんから
「友達のお家はお金に困っているようには見えないけどお母さんも働いている、迎えてくれるのはありがたいけど頼んでいない、専業主婦で本当に良いの?」
と疑問をぶつけられました。
きっかけは学校の課外活動である「職業体験」で、娘さんは何か思うところがあったようです。職業体験とは、地域のお店や会社、公共施設などで2日ほど仕事を経験し、将来の職業について考えさせるというもの。相談者は、「先生が一体なんと言ったのかわかりませんが、大変迷惑です」としています。(文:篠原みつき)
「どこかで自分を否定する発言のようで嫌な気分になってしまった」
高卒でアパレル勤務を経て”主人のおかげで”専業主婦になったという相談者は、「専業主婦が出来ること、家族を毎日迎えられることに幸せと誇りを感じている」とのこと。娘も夫も自分がいなければ何もできないため、
「私が専業主婦であることは家族のためでもあるのです」
と胸を張ります。それなのに「専業主婦で本当に良いの?」と疑問をぶつけられ、「また娘にそう言わせた学校にも腹が立って仕方ありません」と怒り心頭です。
しかし困ったことに、普段は娘に大学進学を勧め、将来のキャリアについても語っていたため、「お母さんは働いてもいないのに、なんで私にはそう言うの?」と問われてしまいます。相談者は、
「『親だからあなたのことを思って』と言ったものの、どこかで自分を否定する発言のようで嫌な気分になってしまいました」
と、複雑な心境を語っています。
これは難しい問題で、娘に高学歴や働くことを求めることは、専業主婦である自分とは別の道を勧めることになります。娘さんの疑問も当然です。家族のために何かを諦めたならやめてほしいという気持ちもあったでしょう。専業主婦は決して悪くありませんし、賃金を稼ぐことだけが「仕事」でもありません。家庭がありながら仕事に集中し稼げるのは、生活を整えてくれる人がいるからです。
ただ、夫の収入に頼って生きる専業主婦は、リスクが大きいのも確かです。無収入ではとかく発言力や決定権は弱まり、家事育児をしているあいだは仕事のスキルも身に付きません。夫に何かあったときの心配や、離婚したくてもしづらくなるため、自分が稼げるほうが、遥かに自由に生きられます。今の時代、母としてそれを勧めるのは自然なことですが、相談者は夫に恵まれ、そこまで考えていなかったのでしょう。
娘の質問は、自分の生き方を問い直すきっかけになったのでは
この相談は閲覧数が12万を超え多くの注目を集めました。回答には、
「モヤモヤを払拭したければ外で働くしかない」
「質問者さんが言っているのは、外で働きたくない言い訳です」
という声や、「働かない理由を家族に押し付けてはいけない」といった、皮肉な声が目立ちました。
ベストアンサーは、「旦那が働き、妻が家事と育児に専念するのが本来あるべき姿」として、共働きせざるを得ない現在の社会状況を語った回答でした。「旦那の稼ぎで家計が回るなら、みんな、そうするはずです」と断言し、娘の先生に対しては、「裕福な家庭に嫉妬した教師の嫌味」と糾弾しています。
相談者を慰め励ます内容ではありますが、「女性が働く理由は家計の事情のみ」とする決めつけに、筆者は違和感がありました。先生に関しても、なにも専業主婦の悪口を語ったわけではないでしょうから的外れに感じます。
専業主婦歴20年で息子の一人暮らしを機にパートを始めたという人は、友人から、「何かしないとうつになる」と言われたそう。つまり、家族のためにばかり生きていると、子どもが自立したとき自分が空っぽになってしまうということでしょう。このままだと「私がいないと何もできない」と、子どもの自立を妨げることにもなりかねません。パート以外でも、習い事やボランティアなどを勧める声に、筆者も同感です。
就職するかどうかは個人の考え方や体力、病気の有無などさまざまなので、相談者は専業主婦であることに引け目を感じる必要はありません。けれど娘さんの質問は、自分の生き方を問い直す良いきっかけになったのではないでしょうか。