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終身雇用のない社会で労働者は「勝手に育っていくしかない」就活アウトロー採用のトークイベント開催

登壇した三人。左から坂本さん、曽和さん、若新さん

登壇した三人。左から坂本さん、曽和さん、若新さん

「就活アウトロー採用」を実施するキャリア解放区は7月17日、都内でイベント「『就活アウトロー採用』から見えてくる終身雇用崩壊後の新卒採用、働き方とは?」を開催した。企業の人事担当者や経営者らを対象に開かれたイベントでは、アクセンチュアでマネジングディレクターを務める坂本啓介さん、人材研究所所長の曽和利光さん、慶應義塾大学特任准教授の若新雄純さんによるトークセッションが開かれた。

就活アウトロー採用とは、就活のバカバカしさに就活をやめた若者を対象にした就職サービス。29歳までの就業経験のない若者なら第二新卒や中退者も参加できる。

トークセッションでは、「素の自分」と「仮面」をキーワードに、終身雇用崩壊後の労働環境について議論が交わされた。

新卒の育成機能は企業に残る 課題は「40代、50代以降の学び直しをどこが担うか」

今年5月、経団連会長の「終身雇用難しい」発言が話題になった。今後は雇用の流動化が進むと言われているが、その場合、これまで企業が担ってきた人材育成の機能はどうなるのだろうか。

曽和さんは、終身雇用が崩壊しても、企業の新卒を育成する機能は変わらないと見る。それより課題になるのは、就労期間が延びるにつれて必要になってくる労働者の「学び直し」や能力開発の機会が、どこで担保されるのかという問題だ。

年金の支給開始年齢は今後、後ろ倒しされると予想されている。70歳や75歳でも働く必要のある社会では、新卒時の能力開発に加え「40歳で1回、50歳から60歳くらいに1回」の学び直しが必要になると指摘した。

「最初の一回り目、新卒の育成は企業がやると思う。でも二回り目、三回り目の学び直しや一度学んだことを一旦手放して、学び直すアンラーニングも企業がお金を払ってやるのかというと、今のところそういうメカニズムにはなっていない。一回り目で培ったものが普遍的なスキルで、二、三回り目で使える人ならまだしも、そうじゃなかった人たちは『次何やれるんだ』って。そこが一番やばい」

若新さんは現代を、「素顔というものを求め始めた時代」と指摘する。経済成長の著しかった終身雇用の時代には、仕事場で自分らしくありたい、素顔でありたいと思う人は少なく、むしろ企業や職業の求める「仮面」を望んでいたのではないかと言うのだ。そして企業もまた、そういう労働者の期待に、長期間の安定した雇用と上がり続ける給料という形で応えてきた。

「終身雇用の社会で企業が人材を育ててきたのは『最後までいてくれるなら、ステージに合わせてふさわしい仮面を用意し続けるよ』というものだったと思うんです。会社に勤め上げる前提で、理想の仮面に合わせてくれるんだったら、次の仮面もあるからと保証してきた」
「素顔でやっていくとなったら、企業が一人ひとりの素顔に合わせてアレンジして育成するのは無理だから、それぞれ勝手に育っていくしかない気がする」

坂本さんも、終身雇用もなく、仮面を付ける必要もない時代には、「仮面を脱ぎますという人は、仮面を脱ぐ権利の代償として、会社ではなく社会を生き抜くための力を自分で付ける必要がある」と述べた。

「20代で試行錯誤して、素で生きたいか仮面を被り続けたいか判断すればいい」

では、「仮面を付けたまま生きたい」人たちは、今後生き延びることは出来るのだろうか。坂本さんは「相当難しい。会社の中で生きていくことは、実力だけでは実現しない。すごく仕事ができて頑張っていても報われないことはよくある。そこに一本足打法というのは逆に怖い」という見方を示す。

曽和さんや若新さんは、公務員やエネルギー産業などは仮面が求められる仕事として残っていくだろうという考えだ。若新さんは、これまで多くの地方公務員に接してきて、彼らは「与えられた仮面をばしっと被ることに長けいて、そこにやりがいを感じている」と指摘する。

そうなると、終身雇用崩壊後の社会で働く上で重要になるのは、自分が仮面をつけたまま生きたいのか、素顔で生きるのが合っているかという見極めだ。しかし曽和さんは、「新卒採用の入り口で、顔が固くなっていく人(編注:素顔で生きていきたい人)と固くならない人(編注:仮面を被れる人)を見分けるのは難しい」と指摘する。

「だからこそ、20代での試行錯誤が大事になる。若者が3年で3割辞めるというのも、試行錯誤と見ればそんなものだろうと思う。その後は、20代半ば過ぎくらいから『ちょっと固くなってきたな』『ふにゃふにゃだわ』とかで判断すればいいと思う」

と、20代のキャリアで試行錯誤する重要性を訴えていた。

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