ジオン公国はどうすれば一年戦争を勝利できた? やはりギレンの”縛りプレイ”を止めさせる必要があったのでは… | キャリコネニュース
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ジオン公国はどうすれば一年戦争を勝利できた? やはりギレンの”縛りプレイ”を止めさせる必要があったのでは…

ジオン公国の敗因とは?

ジオン公国の敗因とは?

『機動戦士ガンダム』という名作アニメを知らない者などいないはずだが、本作を何度も観返してみると、敵方のジオン公国軍の選択ミスが目立つ。

地球連邦軍とジオン公国軍は、単純な戦力差だけ見ると圧倒的に連邦に軍配が上がっている。しかしジオンはその状況を人型機動兵器”モビルスーツ”の開発によって覆し、以降は連戦連勝。一時は連邦軍のレビル将軍を捕虜にさえしている。

ところが戦争が長引くと(と言っても一年だけど)次第にジオンには綻びが生じてしまい、最終的には宇宙要塞ア・バオア・クーまで連邦艦隊が押し寄せる結果となった。ジオンはなぜ、負けたのか。(文:松本ミゾレ)

キシリアがギレンを殺さなければジオンは勝てた?

先日、おーぷん2ちゃんねるに「ジオンはどうすれば勝てたのか」というスレが立っていた。ここでは実にさまざまな意見が挙がっていて、秀逸な声もあるのでいくつか紹介したい。

「最後キシリアがギレンを撃たなければジオン勝てた」
「サイド7をコロニー落としに使っていれば……」
「ギレンは地球圏を制圧したいとか、スペースノイドの自治を確立したいとか本気で思ってたのかね? デギンが言うように、周りをみんな駒にして独裁者ごっこがしたかっただけのような気がするなぁ」

キシリアが恨みに恨んだギレンを、よりによって最終決戦の場で暗殺したことは、これこそ返す返すジオンの直接的な敗北の原因だと個人的にも考えている。まあ、あそこまで連邦の侵入を許している時点でもはや……という気がしないでもないけど、宇宙空間って従来の地政学的な見地では測れない部分もあるだろう。

実際、ギレンが撃たれた直後からその指揮系統に乱れが生じたことは事実だった。調略に長けたキシリアの、あれこそ最大の失敗であったことは間違いない。

また、サイド7をコロニー落としに使っていれば良かったという意見もある。面白い意見だと思う。あそこでは秘密裏に連邦がガンダムを開発していたし、アムロも住んでいた。仮にコロニー落としの標的に選定されていれば、連邦のモビルスーツ実戦投入時期はさらに遅れていたことだろうし、そうなるともう連邦はジオンの地球侵攻作戦にも対応できず、詰み確定だったはずだ。

それからギレンがそもそも本気で宇宙に住む人類の自治権獲得のために戦っていたか疑問視する声もある。これについては僕の考えを後述したい。

結局ジオンは縛りプレイ好きなギレンを大将とした時点で負けていた

ギレンは天才的な頭脳を持ち、底知れない指導力を持つまさにカリスマだ。地球へのコロニー落としやジオンの本格的かつ徹底的な地球圏への侵攻作戦の、ほぼ全権を掌握していた人物でもある。

しかしながら彼は、実の妹にして最大の政敵であるキシリアの暗躍を把握しつつ、直接的にその行動を咎めず終いであった。これって普通なら考えられないことである。

さらには弟のドズルが駐留しているソロモンに連邦の一大反抗作戦が展開される情報を知っていても、試作モビルアーマーのビグ・ザムぐらいしか物資をよこしていない。「戦いは数だよ!」とモニター越しに怒鳴るドズルに対しても涼しい顔でやり過ごした。

結局ドズルは部下を逃がすための囮となって奮戦ののち戦死。連邦軍のティアンム艦隊旗艦タイタンを沈める大戦果を挙げたものの、これでは良くて痛み分けだ。

自分に殺意を抱く妹を生かし、戦争屋を取りまとめる弟を死なす。挙句には父親のデギンと連邦のレビル将軍の和平交渉を邪魔すべく、まとめてソーラ・レイで焼き払って事実上ジオン公国に退路がない状態にしてもなお、うすら笑う。

そもそも父の公王デギンは、元来の出自はどうあれ劇中では既に穏健的な性質になっている。ギレンらの急進的な挙動には憂慮を見せることも少なくなかった。

そんなデギンが一年戦争において着地点と認識していたのが、ジオン公国の名実揃った主権確立であって、それを連邦に認めさせることである。だがその願望も、ギレンによってないがしろにされた。ギレンはあくまでも連邦軍を叩きのめし、地球圏全域にも強い影響力を持つことこそがジオン公国の理想と提示している。

暗殺の少し前に、ギレンは父デギンに対し「地球連邦の絶対民主性が何を残しましたか? 情実の世を生み、資源を浪費するしか能がない大衆を育てただけです」と発言してのけた。連邦の統治する世でジオン公国の主権を認めさせても、大した価値はない、とギレンは考えていてもおかしくない。

そして最終防衛ラインに殺到する連邦艦隊に対しては持ち前の天才的な采配を以て応戦して、彼は言うのだ。

「圧倒的じゃないか、我が軍は」

僕はギレンという男について、圧倒的不利な状況に自分を追い詰めてもなお挽回できる絶対的な自信を持った、縛りプレイマニアだったんじゃないかと考えてしまう。普通なら匙を投げる局面でも絶対に投了せず、どうにか頭脳をフル回転させて状況をひっくり返せないか考える。そういったところに楽しみを見出してしまった人のように思えるのだ。

じゃなきゃ実の父がよき落としどころに向けて歩み出したところを後ろから撃ったりできないし、最終防衛ラインまで連邦の侵入を許したりもしない。どう考えても”わざと”なのだ。ア・バオア・クーに連邦軍を誘い込み、そこで一網打尽にするビジョンありきで一年戦争を俯瞰していたのではないか。

あの局面まで追い込まれておきながらも、自身が最後の演説で士気を上げに上げた精鋭が連邦軍を撃滅する。それさえできれば連邦政府もジオン公国の独立を認めるどころの話ではなくなり、明確な脅威としてギレンは君臨することになる。ましてレビルもティアンムも、もういないのだから。

デギン死後も一切の後悔の表情を、ギレンは見せない。「タイミングずれの和平工作が何になる」と話しているし、ギレンはやはり父が目指した土壇場での和平の、もっと向こう側にある目的に向かって動いていたんだろう。まさにそれこそがギレンの野望だ。

たしかに彼の終盤の采配は見事で、連邦軍最後の猛攻にも見事に対応している。でもそのギレンが、恐らくあえて放置していた危険要素のキシリアに撃たれてしまってはすべてがおじゃん。天才の考えることは分からないと常々思うが、死ぬ間際までギレンはキシリアに対して歯牙にもかけない素振りだった。ギレンはあのとき、何を考えていたのだろうか。

ジオン公国の一切は結局、この一人の天才の縛りプレイの駒でしかなかったのかもしれない。そのギレンがジオンの実質的なトップであったことが、ジオン敗退の一番の原因と考えるのは行き過ぎだろうか。

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