緊急事態宣言が5月31日まで延長されることになった。感染拡大を防ぐためには仕方ないとはいえ、これにより現在休業中の数多くの企業、店舗のオーナーさんたちがますます苦境に立たされるのは間違いない。お金を稼げなくても諸々の支出は発生し続けているのだから。
ここ最近はパチンコホールにも強く自粛が求められてきた。全国のほとんどのパチンコホールは休業となり、今、店を開けている店舗もあるにはあるが、ごくレアケースである。
ただし緊急事態宣言が延長となった今、状況は変わりつつある。しっかりとした補償もないまま営業を休止するのは、弱小ホールにとっては余命宣告のようなもの。既に5月6日までの休業ですら体力がもたずに閉店に追い込まれた店舗が複数出ている。(文:松本ミゾレ)
大手ホールのダイナムらも休業補償拡充求め声を上げる
パチンコ業界情報サイト「グリーンべると」の4月30日付けの記事によると、大手ホールグループのダイナムら4社が休業補償の拡充を求め、全国の知事宛てに国に対して働きかけを求める要望書を送付したという。
超大手のダイナムですら危機感をおぼえているというのが現状ということになるんだろう。今後さらに5月31日まで営業を自粛するとなると、損失額も相当な数字となるはず。
ただ、コロナ禍の真っ只中でやること続きの国、自治体が果たして反応するかというと微妙なような気がする。このような事態では、すべての企業への補償が必須となる。パチンコ業界だけをことさらリカバリーするような動きにはならないだろう。
「たかが25日の延長! もうひと踏ん張り乗り越えよう!」とは行かなそう
僕はこちらのコラムで、全日本遊技事業協同組合連合会(以下:全日遊連)からの自粛要請に、全国のホールがなかなか従わなかったことに何度か触れていた。
その後、営業しているだけでネットで叩かれ、大勢のマスコミ関係者が密集する事態となったので、大多数のパチンコホールは営業を自粛するようになった。全日遊連に実質的な発言力がないことが、図らずも浮き彫りとなった形だが、しかし全日遊連の主張は当初から業界のイメージ失墜を防ぐために一貫した”まともな声”でもある。
もちろん、補償ありきで話をしないから相手にされなかったわけだが、補償云々言う前に自主的に営業をストップしたホールがある以上、この状況では営業をしないのが正解だ。
そういえば、ついこの間まで営業していたホールが、営業自粛から2日ほどでメディアの取材に対して営業を続けているホールへの苦言を呈していた。「どの口が言うかね」と呆れてしまったが、全日遊連側はもう2か月近く、そういう気分を味わい続けていたんだろうなぁ(汗)
その全日遊連は4月に「緊急事態宣言による全日遊連の対応について」という声明を出している。その中に「全ての広告宣伝の自粛について、今後緊急事態宣言や休業要請が解除された際も、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、5月31日まで取組の継続を要請」という一文を見ることができる。
仮に緊急事態宣言が6日に解除されたとしても、様々なリスクを考えると月末までの休業が妥当と睨んでいた、ということになる。この見方は正しいと思う。しかし、要請だけだとさすがに今後さらに延長された営業自粛には耐えられなくなるホールは続出する。
パチンコホールの営業には、その他の業種で生じる人件費、福利厚生費、水道光熱費、それから地代家賃だけでなく、設備のリース料、毎月の新台導入でかかる機械代などが生じる。営業をしていない以上、それらランニングコストにつぶされるホールはどうしたって出てくる。
弱小店舗にとっては特に由々しき事態になってしまった。さらに言えば、5月31日を過ぎても緊急事態宣言が終わるとは、この段階ではまだ言い切れない。さらに延長ということも、場合によっては必要になる。
「たかが25日の延長! もうひと踏ん張り乗り越えよう!」と言うのは簡単だが、その25日って体力のないパチンコホールを殺すには、実は十分な日数かもしれない。一連の感染症対策が終わって平穏になったころ、残っているパチンコホールは大手だけだった、なんてことにならなければ良いが……。