自己肯定感が高すぎるとキャリアに悪影響を及ぼす? ”自分は出来ている”という思いがミスマッチを起こすことも | キャリコネニュース
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自己肯定感が高すぎるとキャリアに悪影響を及ぼす? ”自分は出来ている”という思いがミスマッチを起こすことも

自己肯定感が高すぎるのって?

自己肯定感が高すぎるのって?

最近、就活や転職の相談を受ける時、「自己肯定感」という言葉をよく耳にします。そのほとんどが、「自分は自己肯定感が低い」と感じ、自分自身の「未来のキャリア」に対して前向きになれていないケースです。

自己肯定感とは、「ありのままの自分を受容し、認める感覚」という無条件の自己承認感情です。その自己肯定感が低いがために

「どこも内定が決まりません」
「自己肯定感を高まればキャリアアップできると思うのですが……」

といった声が寄せられ、どうすれば自己肯定感を上げることができるのかと聞かれます。これらは、10数年前には、全く耳にしなかった相談です。(文:キャリアコンサルタント 坂元俊介)

「フィードバックしても改善されない」と思ったら……

このような相談が増えてきた背景に、個人の自由や個人の幸せを追い求める社会概念が拡がったことがあります。そこにコーチングという個人個人の幸せを引き上げる手法の1つの要素として「自己肯定感」という言葉が使われ始め、その言葉が独り歩きした結果であるように思います。

さて、果たして「自己肯定感の高さ」はキャリアを歩んでいく上で本当に必要なのでしょうか? これまで多くの面談や、その後のキャリア相談、自社の採用活動を通した身としては、一概にはそう言えないと思っています。

確かに、「個人の幸せ」を考える際には、「自己肯定感の高さ」は重要であることは否定をしませんし、自己肯定感が高い人ほど幸せであることは間違いのない事実だと思います。

しかし、キャリアを歩む上では、「自己肯定感の高さ」が弊害になっているケースを数多く見てきました。実際、採用責任者と話す中でも、自己肯定感の高さが採用のミスマッチを引き起こしているケースを良く聞きます。

■自己肯定感が高すぎて、自己認知が歪んでいたケース

私は年間数百件の面接を行っているため、一般の面接官の方よりは妥当なジャッジが出来るとは思っているのですが、それでも難しい場合があります。それが、「自己肯定感が高すぎる人」の面接です。

面接において「嘘」は、深掘りの質問を重ねて見破ることが出来ます。しかし、自己肯定感の高さから、過去のエビデンスを本人が歪曲して(良くとらえ過ぎて)認知しているケースがあります。

この場合、第三者にエビデンス確認を取らない限り見破ることが出来ず、結果として本人の適性とはあっていない環境にも関わらず採用をしてしまうケースが存在します。

実際に私もミスジャッジをしてしまったことがあります。数年前、今の会社が立ち上げ早々のベンチャーだったころ、社員であれ、インターン生であれ「自走できる力」「高い熱量」「困難な問題にも立ち向かう強さ」を求めていました。

その中で、採用したある学生インターンがいました。学生時代は様々な環境に身を置き、その環境ごとに意味を見出しながら熱量を注ぎ、高い成果を上げていたといいます。コミュニケーション力も高く、こちらの意図にそった回答をしてくれるので、面接後すぐに採用を決めました。

当時、採用率は3~5%で、一発採用を決めることはほぼ無かったので異例でしたが、高い成果を出してくれると期待をしていました。その人はまさに「自己肯定感が高い」タイプでしたが、インターン生として働き始めると少し違う側面が見えてきました。

例えば、何度も逃げようとする(活動が止まる)、他の活動を出来ていない理由にする、こうした問題点をフィードバックしても改善しようとしない、などといったことがありました。何とか成長してもらうためにも、何度も話をした結果、見えてきたことがあります。

その人は「”自分が逃げている”と本気で認知していない」「”自分は出来ている”と思っている」ということでした。根底に「今の自分で十分出来ている」という高い自己肯定感があるため、「出来ていない部分」に対してのフィードバックが全くピンと来ていなかったのです。

この点を1年以上のインターン期間でずっと指摘し続けることとなりました。卒業間際には、本人の正常な認知もかなり深まり、今では「当時の自己肯定感の高すぎる自分」を反省し、自分のキャリアを切り開いていってくれています。

周りの人に評価を聞くと、真逆の反応が

■自己肯定感の高さから、仕事よりプライベートに力を入れ、自分を正当に評価できなくなっていたケース

以前、プライベートでサッカーチームに所属している広告代理店勤務の方の転職相談にのったことがあります。勤務先のチームではなく、そこより大手の企業チームに所属しており、その兼ね合いで所属チームの広告代理店に転職したいというのです。

最初、面談をした際、いくつかの広告代理店をステップアップ的に転職してきたことや、これまでの仕事について非常に楽しそうに話していたため、話を聞く限り仕事でも高い成果も残してきたようでした。

しかし、30代中盤でマネジメント経験がなく、役職がないことが気になりました。そこで、その人の勤め先に知り合いがいたので、仕事ぶりや周りの評価を聞いたところ、周りからの評価はかなり低いことがわかりました。

さらにフィードバックを拒否することも多く、社内では扱いが難しい人と思われていました。本人から聞いていた成果の話も、社内ではその人個人の成果ではなく、チームで行っていた仕事での話でした。

転職希望先が、その人にとって今勤めている会社よりも成果・労働環境ともに厳しい会社であると伝えると、「プライベートが充実している今が幸せ」「厳しい環境でもやっていけると思うがプライベートを犠牲にしてまで移ろうとは思わない」とのことで、最終的に転職希望を取り下げました。

何を重要視するのかは人によりますが、中には自己肯定感が高すぎるゆえに仕事で成果が出せないと、プライベートに力を注ぐ人も見られます。

こういった「自己肯定感の高さ」が引き起こすキャリアの弊害は、人事界隈で耳にすることが少なくありません。採用時の判断の難しさも話題になることが多くありますが、”気を付けた方が良いパターン”は以下の3つです。

・話の中で感じるかなり高い自己肯定感
・環境をいくつも変えている
・話す成果が”定量的”なものより”定性的”な成果が圧倒的に多い

最近では、この3つが揃う人と面談・面接する際は、かなり気を付けてジャッジするようにしています。

また、この記事を読んで「自分に当てはまる」と思った学生・転職者は、定性ではなく定量での成果をしっかり出すことに注力してください。自分自身の仕事に対して本当の意味での自信を持つことができ、自らの望むキャリアに繋がっていくのではないかと思います。

著者近影

著者近影

【坂元 俊介】株式会社STORY CAREER代表取締役/キャリアコンサルタント・採用人事コンサルタント

同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化の際に、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなう

STORY CAREER事業部の責任者を兼任。2020年4月、STORY CAREER事業部の拡大に、同事業部を分社化、株式会社STORY CAREERの代表取締役に就任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。

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