番組を見てみると、年収の数字はウェブサイト「給料BANK」からの引用という説明がされていた。そして確かにサイト上には「ラノベ作家の平均年収 6070万円~8085万円」と書いてあった。なんだこれ、どうやって調べたんだ。
サイトを見ていくと、「オリコン ラノベ売上ランキング2015年度版」の上位20までの作品について、発行部数と推定印税(根拠は書いていない)をかけ合わせたものが列挙されていた。そして最後に「上記からトップランカーの平均給料が505万円 平均年収は6060万円となりました」と結論づけられていた。
結局、冒頭の数字の根拠はどこにもなかった。が、サイトの書きっぷりを見ると、年間発行部数ランキング1位から20位までの作品について、そこから得られる印税額をなんとなく推測し、それを適当に足したり、割ったりしたものが「ラノベ作家の平均年収」の根拠のようだ。
こんなもの「平均年収」と呼べるわけもない。引用するテレビ局もどうかしている。まあ、しょせん「バラエティ」か。
ラノベ作家で年収8000万ってどういうレベルなの?
しかし、ラノベ作家は本当に8000万円も儲かるのか? 気になったのでライトノベル編集者たちに話を聞いてみた。
「年収が8000万円クラスになっている作家は確かに存在します。本だけでは無理ですが、作品がアニメ化などメディアミックス展開などして当たれば、不可能ではありません。ヒット作品であればアニメ化やグッズ展開で得られる収入が、本の印税よりも多くなることもありますよ」(ライトノベル編集者Aさん)
おお、可能なんだ。ただ、大ヒットを飛ばした作家でも、コンスタントにその収入が続くわけではない。別の編集者はこう語る。
「メディアミックス展開が大当たりして、莫大な収入を得る作家も確かにいます。でも、そんな収入が毎年続くわけではありません。あくまで、僅かな作家が一年だけ、それくらいの収入が得られることもあるというだけの話です。実際、10年前にアニメ化されて大ヒットした作家で現在も変わらずコンスタントに作品を出版している人は僅かですよね」(ライトノベル編集者Bさん)
どんな人気クリエイターでも、浮き沈みはある。長く活躍している人もいるが、今年8000万儲けたから、来年も8000万稼げるだろう、というような計算が成り立つ世界ではないのだ。
もう一人、別の編集者からはこんな意見も。
「平均年収としてはあり得ないとしても、めちゃくちゃ儲けたことのある作家は確かにいます。でも金額の多寡なんて作家にとっては、どうでもいいことでしょう。お金を儲けたいからライトノベル作家になりたいなんて人は、いませんよ。もしも、儲かると思って原稿を書いているのだったら、別の仕事を探したほうがいいです」(ライトノベル編集者Cさん)
この話を聞いて、15年ほど前、あるアニメ化され大ヒットしたライトノベル作家に取材した時のことを思い出した。作品ヒット後に人生に変化はあったかと訊ねたところ……。
「マンションは買えたし、結婚も出来たけど……まだ、もっといい人生があったんじゃないかと思う時のほうが多い」
と、返ってきたのは驚きのネガティブ発言だった。
もちろん作家も人それぞれだが、「お金をもらうための仕事」という次元を超えて活動している人は少なくないのかもしれない。いやはや、これは業というかなんというか、何とも大変な「職業」であることよ。