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「もういいかな、って気持ちになっています」
東京都に住む森さん(仮名、40代男性)は、20年以上勤めた会社を見限った瞬間をそう静かに振り返る。誰もが名前を知る大手の通信関連企業で中間管理職を務め、現在の年収は1300万円に達する。
はたから見れば順風満帆なエリートコースだが、心はすでに会社から離れているという。編集部は森さんに取材し、その理由と職場の実態を聞いた。(文:篠原みつき)
15年出し続けた異動希望は通らず、社内調整に忙殺される日々
森さんは、ルート営業からキャリアをスタートさせた。店舗スタッフや顧客との触れ合いにやりがいを感じ、自身の本質は営業だと考えている。
しかし、その後は長い間営業部門への異動希望が叶うことはなく、本社での勤務が続いていた。現在のポストは、庶務全般や人事などをつかさどる中間管理職だ。人事に関わる仕事だけに、人員配置にもどかしい思いを抱えている。
「営業というポジションは若い社員から敬遠されがちで、若手を配置してもモチベーションが上がっていないように見えました。それなら、適性と経験がある自分を現場に送ったほうが会社のためになるのではと考えていました」
しかし願いは届かず、業務は社内調整ばかりだった。会社が大きくなりすぎたうえに事業展開が幅広く、何か新しいことを始めようとしても必ず関係部署との調整が必要になるという。
「ビジネスをどう成長させるかよりも、関係部署をどうやって説得するかに多くの社員が忙殺されているように感じます。以前在籍していた別会社では、取引先を巻き込んで新しい世界を作ることに時間を割いていましたが、当社はすっかり内向きだと感じています」
顧客が離れ方針転換する上層部への失望
会社への不満を抱えつつも、「信頼感の高い会社だから定年まではいよう」と考えていた時期もあった。しかし、3年前から組織の人事を見るようになり、会社の方針に疑問を抱くようになる。
森さんは、新卒をいきなり本社に配属する最近の傾向を危惧している。
「現場の感覚を肌で知らない人間がサービスを企画しても、顧客の心には響きません。せめて数年現場を経験させてから本社に送ってほしい、本人の希望を重視しすぎると必要なところに人材を配置できなくなるという危機感を持っています。しかし一向に変わる気配がありませんでした」
そして、徐々に顧客が離れるという事態に陥ってしまった。すると会社は、急に方針を転換し始めたという。
「経営者は目先のことしか見てないのかなと、残念な気持ちになりました。この状況だったら、自分が定年を迎えるまでに会社が劇的に良くなる未来はなさそうだと思ったのです」
この出来事が、彼が会社に完全に見切りをつける決定的な瞬間となった。
年収1500万が頭打ちの未来と、20年前の縁が結んだオファー
現在の役職から計算すると、将来上がれるランクの上限は見えており、年収はどんなに頑張っても1500万円程度だと予測できた。
「もちろん金額自体に不満はありませんが、退職再雇用制度があるため、60歳を待たずに年収が下がっていくフェーズに入るので、それも最大瞬間風速ですね」
そんな折、20年ほど前の営業時代に関係を構築した取引先の社長からオファーを受けた。
「10年ちょっと前から、ことあるごとに『うちに来ませんか』と声をかけてもらっていました。今回は具体的なビジネスプランを聞かされ、自分の経験とスキルがぜひ欲しいと言われました」
その市場の将来性を予測し、今から携わることで確固たるポジションを築けると確信した森さんは、ついに転職を決意した。
給与面でも現状の年収を最低ラインとして提示され、最終的にはボードメンバーとして迎え入れたいと言われているという。
安定した今のポジションに見切りをつけ、自らの手で新たなビジネスを切り開くため、静かに、だが確実に次のステージへと歩みを進めようとしているようだ。
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