潤沢な資金さえあれば、”早期リタイア”に憧れる人もいるだろう。しかし、はてな匿名ダイアリーに9月上旬、「仕事辞めて数年経った友人が老害みたいになってきてつらい」というエントリがあった。投稿者は、数年前に家庭の事情で仕事を辞めた友人の変化について綴っている。
仕事が激務で貯蓄があり、「5~10年は引き込もれる」と言っていた友人は、家庭問題が落ち着いてからも「少しのんびりする」と復職しなかった。最初の1年ほどは楽しそうに趣味に生きていたが、2年目以降はいかにもネット上で拾ってきたような浅い知識の披露や、他人を非難する発言が増えてきたという。
「3~4年経った今となっては、話しててもすぐに何かの批判になったり、自分の経験だけから何かを決めつけるような発言が増えて、話すのもしんどくなってきた」
と苦しみを吐露していた。(文:okei)
「人間は暇ができたら他人のあら探しをしたりする生き物」
自身や友人の年齢は、早期退職を視野に入れていることから40~50代とみられる。投稿者曰く、友人はもともと大らかな性格で、やたらと自慢したり他人をすぐに批判したりするようなタイプではなく、「忙しいながらも色々な本を読み、『賢者は歴史に学ぶ』のように思い込みを排除して判断しようと努めるようなタイプだったのに」とのこと。
変化の激しさ、嘆きぶりからは友人の変貌ぶりがよく分かる。投稿者は、仕事を辞めて他人との関わりが減ったことで「人間、この様になってしまうものなのだろうか」などと嘆き、
「早期引退を考えそれなりに貯蓄等している自分も怖くなってきた」
と煩悶していた。
投稿者がエントリに解決策を問いかけると、ブックマークは400件以上つき、さまざまな意見が寄せられた。最も共感を集めていたのは「うちの親もそう」というコメントだ。
「定年後のウチの両親の会話もそんな感じなので(情報ソースは、親父がワイドショー、お袋がYouTube)、『人間は暇ができたら、他人のあら探しをしたり、正義の拳を振り下ろしたくてしかたなくなる生き物』と思ってる」
自分の親で思い当たる節があると書く人は多く、「確かにうちの親も仕事を引退したあたりから変にクレーマー化して迷惑している。将来的に自分もこうなるんだろうかと心配になってきた」と不安になる人もいた。
また、社会と関わることは大切、他者と接点がないことで自己評価が低下する、人間ヒマだとダメになる、といった意見も多くみられた。このほか、仕事の有無よりも加齢の影響や、認知症のきざしを疑う人もいた。望む、望まないにかかわらず、仕事を辞めてからの人生は誰にとっても他人事ではない。
結局のところは”人それぞれ”
一方、解決策としては「いまは無理だが、旅だ。それも手作りの海外一人旅!」という助言や「私もそうだった。欧米人とのシェアハウス(共同生活)で心機一転しました」という体験談もあった。いずれも、ポイントは環境を変えることだが、本人がその気になるまでは難しそうだ。
また、当然のことながら”人それぞれ”という声もある。
「(親の恋人は)早期リタイアして今は仕事してないけど株と旅行と水泳が趣味で下世話な話を全くしない。気質の問題では」
「うちの母は引退したし趣味も特にない状態が長いが全然そんなじゃないぞ。人間どうこうじゃなくて人それぞれ」
確かに、仕事をしていてもクレーマーになる人はいるし、歳を取っても一貫して穏やかで理性的な人もいるので、一概には言えない。ただこの場合、客観的に見てそうなった分かれ道が「仕事を辞めたこと」に見えて、友人としては心配なのだろう。早期リタイアも一見良く見えるが、金銭を稼ぐためだけではない、仕事をする意味について改めて考えさせられた。