日本生産性本部が10月、「働く人の意識」に関する調査結果を発表した。調査は10月上旬にネット上で実施し、20歳以上の雇用者1100人から回答を得た。
新型コロナウイルスの感染対策として推奨されているテレワークについて、企業で働く人の実施率は18.9%にとどまることが分かった。5月(31.5%)から7月(20.2%)の間でオフィス勤務への回帰がみられたものの、その後は2割前後で大きく変化していなかった。
実施率は「大手企業>中小企業」「首都圏>地方」
職種別にみても、多くの職種で5~7月にかけて実施率が低下したが、10月調査では大きな変化がみられなかった。全体的にホワイトカラー系の職種で実施率が高く、ブルーカラー系の職種で低い傾向は5月、7月と同様だった。
また、在宅勤務によって5割が「効率が上がった」「やや上がった」(計50.5%)と回答。満足度についても、7割が「満足している」「どちらかと言えば満足している」(計68.9%)と答えた。
同本部の生産性総合研究センターによると、大手企業と中小企業の間でテレワークの実施率に差があり、大手企業の方が20ポイント近く高い。また、首都圏と地方では、首都圏の方が実施率は高い。上席研究員の柿岡明氏は、
「テレワークの目的の一つは、首都圏の密な状況を回避することなので、地方のように密な状況が発生していなければ『テレワークをしよう』というモチベーションも低いのでしょう」
と考察していた。
会社側の課題改善が進んだ一方、自宅環境はあまり改善されていない
全体のテレワーク実施率が2割にとどまる理由には、テレワークに適した職種とそうでない職種があることを挙げる。「5月にはみなさん、やや無理してテレワークをしていたように思います」と印象を語り、現在は新型コロナの特性や致死率が分かってきたことに加え、”コロナ慣れ”などにより20%前後で落ち着いてきた、とみていた。
また、同じ職種でも担当している業務によって、テレワークのしやすさは変わるという。
「例えば、同じ事務職でも経理関係の仕事はテレワークだと難しい。現在20%に残っているのは、業務内容がテレワークに適合した方だと思われます」
調査では、テレワークの課題を聞くと、上位には「部屋、机、いす、照明など物理的環境の整備」(41.8%)、「Wi-Fiなど通信環境の整備」(44.7%)といった自宅環境に関する課題が多く挙がった。柿岡氏は
「『職場に行かないと閲覧できない資料の共有』など会社のシステム側の改善が進んだ一方、自宅環境はあまり改善されていないことが分かります」
と調査結果を読み解く。こうした背景から”自宅勤務が非効率”との認識が広がり、テレワークの実施率が伸び悩んでいるのはないか、という。だが、自宅環境の改善はそう簡単なものではない。
「鉄道会社や不動産会社がコワーキングスペースや、サテライトオフィスを開設する事例が増えています」(柿岡氏)
最寄り駅のコワーキングスペースなど会社でも自宅でもない、第3の場所で仕事をすることで、密を避けながら快適に業務ができるとした。