本来ならそろそろ忘年会シーズンだが、コロナ禍ではそうも行かない。東京商工リサーチが今年11月に実施した調査によると、忘年会・新年会を開催しないと回答した企業は87.8%にのぼる。
そこで、「オンライン忘年会」に切り替える企業もあるようだ。Zoomなどを使ったオンライン飲み会の忘年会版になるが、ネット上では「地獄じゃん」「普通の忘年会より嫌」とすこぶる評判が悪い。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「そもそも忘年会の参加自体に消極的な人だと、自宅から参加するオンライン忘年会は『家にいるのに会社に縛られている気がする』と嫌がる人も多いのではないでしょうか」と話す。
「同じ忘年会でも”オンライン”の方が嫌」という声
元々、忘年会はオン・オフ問わず、世代や職場での立場などで捉え方が変わってくる。20~30代の若い世代は仕事とプライベートを完全に分けたい人が多い。業務をこなしているならそれ以外のコミュニケーションは不要と考える人もいる。
「一方、特に50代以上は社内コミュニケーションは重要と考える人が多いです。そのため『若い人が何を考えているか分からない』と”飲みニケーション”を取りたがる傾向も。若い世代からすれば上司からの誘いは強制力がありますし、不満を感じる人もいるでしょう」(井上氏)
その上で「同じ忘年会でも”オンライン”の方が嫌」という声が出ているという。
「通常の飲み会と比べ、オンラインは気配を消しにくいです。普段だと会場の隅に移動したりトイレに立ったりなど中座しやすいですが、オンラインで席を立つとすぐに『あいつがいない』と分かります。リアルより抜け出しにくいです」
「上司・管理職として『メンバーの元気な顔がみたい』と思う人がいるのも当然です」
また、オンライン飲み会はハラスメントが発生しやすいとも指摘する。オンライン飲み会だと同時多発的な会話が出来ず、話すのを待つ時間が長い。その間に飲みすぎてしまい、「お前は結婚しないのか」などハラスメント発言をしてしまうケースもある。
カメラで自室が写るために窓の外に珍しい建物や景色が写っていると、自宅が特定される可能性もある。通常よりストレスを感じる人も多いオンライン忘年会だが、それでもなぜ企業は実施するのか。井上氏は、
「新型コロナウイルスの影響で長らく在宅ワークをしている職場だと、メンバーと長らく会っていない、コミュニケーションはメールやチャットツールなどでの報告のみということも多いです。在宅ワークで外出が減り、うつ状態になる人もいます。上司・管理職として『メンバーの元気な顔がみたい』と思う人がいるのも当然です」
と話す。しかし、オンライン忘年会を行ったことがないためか「全員参加」「余興あり」と通常の忘年会と同様に行おうとする企業もある。”古き良き風習”を大切にしたいのも最もだが、せっかくニューノーマルに手を出すなら参加の可否や余興の有無など、参加者の気持ちを尊重してみてはどうだろう。