早稲田大学に入るために”9浪”した濱井正吾と申します。今年大学を卒業し、31歳の新卒社会人として働き始めています。
兵庫県の田舎で生まれ育った私は27歳で早大生になったのですが、そこはカルチャーショックの連続でした。特に驚いたのは、学生なのに「タクシー」を使う友人がいたことです。(文:濱井正吾)
もったいなくない!?
その友人は移動手段に電車をほとんど使わず、頻繁にタクシーを使っていました。もったいない!と感じた私が、どうしてタクシーなんかつかうのかと尋ねたところ、彼は「お金よりも時間がもったいない」「1000円以上高いお金を払っても、10分?20分のロスを埋めることに価値がある」と断言していました。
その時、私は「10分程度の時短に1000円を支払う人」がいることを、初めて目の当たりにしたのです。衝撃を受けました。地元の学生が10分に1000円を払うなんて、とてもありえない。時給にしたら6000円……。兵庫県の最低賃金は928円で、学生がバイトで稼げるのはせいぜいこの額です。
そもそものんびりとした田舎では、時間感覚がまるで違います。私の地元では1時間に1本しか電車が来ません。つまり、乗り過ごしたら1時間待ちが普通です。学生なら、1本乗り過ごしても特段焦ることはないでしょう。「仕方ないか」とぼーっとするか、スマホや携帯ゲーム機で遊んで過ごすのが多数派。私もこのパターンで、電車を待っている間に缶コーヒーを一本買うのももったいないので、水筒を持ち歩いていました。
そんな私から見ると、東京の人の時間に対する執着はすごいです。学生なのに1時間区切りでスケジュールを入れていたり、待ち時間が発生しないように時刻どおりに到着するよう計算して行動したり、寝食を削って勉強や課外活動、バイトをしたり……。学生はもっとのんびりしているものだと思っていました。
彼らは卒業後、有名企業に入って、良い給料をもらえることを確信しているからこそ、学生時代から「時間に投資」することにも抵抗がないのだと思います。東京の社会人たちはそういう感覚を共有していて、それが学生にも影響を与えているのだと思いました。
9浪して就活にも苦戦した私としては、いまだにタクシーを使うのは、「ちょっと気が引けて」しまうのですが……。地方と東京、その果てしない格差は、こんなところにもあったのか、と感じてしまうエピソードでした。
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■濱井正吾