男性は、「大手企業のルーティンワーク」に飽きていた頃、知人から「物凄く良い仕事がある」と誘われた。大手の待遇に後ろ髪引かれながらも、「手に職を」と思い転職を決意。退社の翌日から入社したが、前述のように「雇用契約書」も「休憩」もない会社たった。しかも
「当たり前のように、定時を過ぎても帰っていいのか駄目なのかさえ分からず……」
と振り返る男性。入社後3か月もしないうちに「危機感しかなく」、転職サイトに登録。他の会社に応募したが、応募先の企業は自社の定時時間に連絡をしてくるため、
「こちらは絶賛休憩もなくタダ働きを続けているので、電話にも出られずが何度か続く……」
と転職活動もままならなかった。また男性が仕事中に大けがを負った際の対応も酷かった。
「『オメーが悪いんだから絶対に労災にすんなよ?』とその場で言われ、(自宅に)帰すこともなく、そのまま残業させられ医者にも行けず……。次の日も『必ず来い』と」
男性は「確かに給料面では決して悪くなかった」と振り返るが、「よくよく計算してみると、ものすごいサービス残業である」ことに気づいた。会社にサービス残業について聞いたところ、「会社に貢献しろ」という回答だったそうだ。
退職話は「『天気のいい日に』と流され続け半年」
さらにある時期から、男性のもとには役所から封筒が何度も届くように。開けてみると、「税金滞納のためにあなたの銀行口座を差し押さえました」というお知らせだった。役所で事情を聞くと、会社が払うはずの税金が天引きされていなかったという。
「どおりで決して悪くない給料だったわけで……」
男性がこの会社のブラックぶりを身内に相談したところ、他の会社に誘ってくれる人が現れ、男性は退職を決意した。しかし辞めるのも一苦労だったという。
「社長から『今忙しいし、こんな日にそんな話は暗くなるから、天気のいい日に』と(退職話を)流され続け半年」
退職を先延ばしにされていた男性だが、ある時、仕事仲間が目の前で労災レベルの大きなけがをした。その瞬間、社長は「この事は絶対誰にも言うな?」と指示。救急車も呼ばずにけがした従業員を自家用車で病院へ運んだという。結局、その同僚は緊急入院となった。この状況を目の当たりにした男性は、その日に「もう来ない」と社長に告げた。
男性は半年に渡って退職したい旨を伝えていたが、社長からは「筋が通らねぇ、聞いてねえ」とごねられたという。
「……かと思いきや、メールで『もう来なくていい』と情緒不安定。仲間達への挨拶と、仮にも働かせてもらった事への挨拶に行きたいと下手に出ると、『来ないで下さい』だそうで」
男性は無事に退職できたが、その後も離職票は届かなかった。この経験がよほど懲りたのか、男性は「就活の際に、休憩やら有休やら残業代やらを散々聞いてしまっている」とかなり慎重になったことを綴っている。