その会社では、社員は昼食時に業者に注文したお弁当を食べていた。40人ほどのお弁当がまとめて会社に届けられていたという。無くなったのは「メインにはなれないサブ的なおかず」だった。
「ハンバーグ弁当であれば、メインのハンバーグではなく付属のエビフライ、唐揚げなど。違和感がないように同じものを40人分盗んでました」
バレないようにすべての弁当から抜き取っていたのだからタチが悪い。これが「週2~3日、およそ3か月」続いたという。
しかしあるとき、時折おかずが減っていることを不審に思い始めた人たちがいた。
「その業者が届けてくれるお弁当の広告の写真と、同じ弁当を見比べた時に写真と違うこと、前より少なくなっていると感じた人たちからの声で調査が始まりました」
さすがにメインではなくてもエビフライが無くなっていたら気付くだろう。決め手は、弁当の受け取り場所になっている倉庫につけられた防犯カメラ映像だった。
「あまり人がいないので盗みやすかったと思います」と女性が語るように、中年女性は弁当を受け取ると、何食わぬ顔でせっせとタッパーにおかずを詰めていたのだ。その中年女性は既婚者で子どももおり、夫は関連会社で勤めていたという。タッパーで持ち帰ったおかずは夕食に出していたのだろうか。
「消しゴムや鉛筆など自宅に持って帰り子どもに使わせていました」
しかし、会社としては大ごとにしたくなかったため注意と別部署への異動という比較的軽い処分になった。ところが中年女性はこれに懲りず、異動先でも文房具を私物化したり、社内PCで私用のネット予約をしたりなど問題行動を繰り返していたという。
「消しゴムや鉛筆など自宅に持って帰り子どもに使わせていました。他にもハサミやテープなど、私物にするために持ち帰っているものが多数ありました」
「テプラで子どもの名前を作って持って帰っていったり、切手を横領したり……」
これらは、やはり防犯カメラの映像で発覚した。
「前科があったため、念のため社内にあるカメラを確認したところ備品室から盗んでいる姿が確認できました。切手の減るスピードが早かったので不審に思ったのもあります」
社内の従業員たちはこの騒動をどう受け止めていたのだろうか。
「見た目が派手な人だったので、防犯カメラ映像をみてなるほど……といった形でした。本人は証拠映像があると言っても何もしていないの一点張りだったので呆れていました」
度重なる窃盗ですっかり信用を失った中年女性。結局、「懲戒解雇になりました」と最悪の結末になってしまった。一つ一つは小さなことでも、他人の物を勝手に盗れば立派な犯罪だ。
社内に防犯カメラがあると分かっていてこうした行動をしてしまうのも理解に苦しむところだが、認識の甘さが招いた結果だったのだろう。
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