この高齢男性は明らかに様子がおかしかったが、「体はピンピンとしているので、元気に毎日役所に来て叫びまくります」というからたまらない。その内容は
「この市役所は馬鹿な奴ばっかりだ。特にお前!」
「本当にバカな奴だ、社会のクズだ。このアンポンタン!」
「無能なんだからとっとと死んでしまえ」
などと役職者たちを指差して罵倒するという酷さだった。
「雨の日も風の日も毎日、自転車で元気にやってきます。この方は妄言がひどく、誹謗中傷、下ネタ、差別発言のオンパレード。私達が接客していても電話をしていてもお構い無しで叫んできます。注意するとすぐに逆上するので、職員も手を焼いていました」
警察を呼ぶこともあったというが、「非常識なだけなので『もう帰りなさい』と警官から諭されて終わりです。逮捕もされないので、次の日にはまた元気に登場します」とうんざりした様子で回想する。
「毎日続くと、職員も完全に無視するようになっていくのですが、そんなことはお構いなしに大声を出し、職員に迫ってきます。目が合うと絡まれるので、みんな極力無視するようにしていました」
そんな日々が約20年も続いたというのだから、職員たちの心労は並大抵のものではなかったに違いない。
きっかけは、「自宅と隣地との土地の境界線で揉めた件」
しかもこの男性の言動は、年を追うごとに酷くなっていった。
「だいぶお歳を召して80才を越えてからは暴力行為も増えてきて、職員の頭を叩いたり物を壊したりするようになり、警察もようやく重い腰を上げて逮捕してくれるようになりました。ただ、釈放されると、またすぐにお礼参りに来るので本当に厄介でした」
ついに警察も動く事態となったが、逮捕されても懲りずにやって来るのだから打つ手なしだ。なぜこの高齢男性はこうも執拗に市役所に通い詰めたのか。きっかけとして、こんな出来事があったという。
「最初は私も関わっていませんでしたが、役所に来たきっかけは、自宅と隣地との土地の境界線で揉めた件と聞いています。その段階から被害妄想のような発言も多くあり、登記情報などの証拠説明も聞き入れることができず、数日後にまた役所に来て同じ隣地との境界線の話をして怒るというのが始まりでした」
男性は、「おそらくですが、長年のうちに認知障害が進行して当初の土地境界の話はすっ飛んで誹謗中傷ばかりになっていったと受け止めています」と推測する。
「最終的には、何回も逮捕されたことがきっかけで、離れて住んでいたご家族の方が施設入所を決めたようです。ようやく平和が訪れましたが、20年近くも意味不明に役所に通い続けたエネルギーは今でも不思議です。もうこんな人は現れないだろうと思っています」
やっと職場に平穏な日々が訪れ、ほっとした様子の男性。さすがに懲りたようで「もう流石に勘弁!」と付け加えた。
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