サクさんに子猫たちを見つけたときを振り返ってもらいました。4月19日の夜にサクさんは田んぼ道を散歩していました。すると「時々強く、時には弱々しいミーミーという鳴き声」が聞こえてきたそう。辺りを見回すも見つけられず、一旦は通り過ぎるも、また鳴き声が聞こえてきました。
「気のせいではないと確信して戻りました。すると田んぼの掘り沿いに、あとふたひねり横に転がれば川ぼりに落ちてしまいそうな傾斜のある場所に、2匹の弱々しい子猫を見つけました。母猫がいるかも知れないと少し躊躇しましたが、周囲に民家もなく野良猫がいつく場所ではありません。人に捨てられたと考え、気づいたときには抱き上げていました」(サクさん、以下同)
抱き上げると、子猫たちの体は濡れており、体温は低かったそう。一刻を争う状態でした。
「あの場所に置き去りにすれば間違いなく命を落としかねないと考え、とりあえず今すぐ救いたい!という気持ちを優先しました。ハンカチで体を拭き、包みながら摩擦で温め手持ちのバックに入れて足早に家路を急ぎました」
子猫たちにはへその緒がついており、体重、体格、顔つきなどから生後2〜4日ほどでした。3、4時間おきに子猫用ミルクを飲ませ、食後のゲップ出しや排尿・排便も必要です。そのうえ1匹は特に弱っていたそう。「どうにか助けたくて、最初の3日間はほとんど寝られず、毎回クタクタになりながら必死でした」とサクさんは当時を振り返りました。
「聞いたことのない金切り声」で鳴きながら…
そんなサクさんに追い討ちをかけるかのように動物病院でショックなことが判明します。弱っていたほうの子猫(しーちゃん)は後ろ脚が曲がっており、治る見込みがないことを告げられます。そして痩せているのにお腹が妙に横に広がるほど深刻な便秘であることもわかりました。
「『便を出さないと命に関わる』とまで言われました。加えて、しーちゃんは自発呼吸も弱くミルクを飲む吸引力も弱いし、覇気が感じられないからと、獣医さんに『長くは生きられない』と告げられショックを受けました」
衝撃を受けながらもサクさんは諦めませんでした。YouTubeやフォロワーさんの育児記録などを探し、便秘に良いと思うことをいろいろと試したそう。ですが、それでも便が出ませんでした。
「そんななか、しーちゃんが出そうと必死になりすごい唸り声をあげたので、私も焦りながらマッサージなどしましたが、ほんのちょっと出ただけ。とりあえずホッとしたものの、翌日、聞いたことのない金切り声でしーちゃんが力みながら鳴く声に恐怖し、ネットで探しまくり2軒目の動物病院に連れて行ったんです」
すると2軒目の動物病院では手際よく摘便してくれました。安堵し、ずっと張り詰めていた糸が切れたサクさんは……
「堰を切ったように便が溢れ出し、恍惚の表情をしているしーちゃんを見た私は不安が安堵と変わり、へなへなと腰が抜け、恥ずかしながら人目も憚らず声を出して泣いてしまいました。このときの嬉しさは忘れられません」
こうして命の危機を脱したしーちゃんにサクさんは、「脚の障害をものともせずに生き抜いてほしい」という願いを込めて「ポンタロス」の名前を与えました。もう1匹もくーちゃんから「希望と進歩」の意味を込めて「カルトベック」に改名。現在の様子を伺いました。
「カルトベックは、元気で甘えん坊でやんちゃ!ポンタロスは、脚の奇形など物ともせずカルに飛びかかって毎日プロレスしてます。体重も保護時より8倍に!このままスクスク育って欲しいです。大変な授乳期間を経てこんな光景を見られる癒し時間が到来し、今すごく幸せです」
サクさんのお家にいる先住猫4匹との対面はこれからで、「今後の楽しみの一つ」とサクさんは話していました。