ちなみに、この派遣は期間終了後に双方の合意があれば社員として採用される紹介予定派遣だった。研修3か月目からはOJTが始まる。
「私は海に近いグループホームへ行きました。私は介護は未経験。グループホームの求人票には『未経験者可』と書いてあり、さらに『若い人を育てたい』とも記載されてました」
その介護施設では認知症の程度によって3つのユニットに分けられていた。女性が配属されたのは、最重度のユニットだった。
「初めの数日は体の起こし方、着替えさせ方、トレイ介助、食事介助など、先輩女性職員さんのお手本を見せてもらいましたが、それが終わると1人でやるように言われました。1人でやるものですから、時間はかかりました」
職場の基本姿勢が“見て覚えろ”だったため、詳しい説明を受けたりマニュアルを渡したりしてもらうことはなかったようだ。一人でお手本をもとに試行錯誤しながら対応しなければならなかった。
「淡々とした口調でこっぴどく叱られました」
OJT開始から1週間ほど過ぎた頃、当時介護職歴25年のケアマネジャーから
「最重度ユニットでの仕事が思わしくないので私のいる軽度ユニットに行ってもらいます」
と言われた。わずか1週間で仕事ぶりを判定されてしまったのだろうか。
しかし異動した先でも思わぬことが起きた。軽度ユニットに移った日の午後、散歩の時間に利用者が倒れてしまったのだ。座り込むように倒れたため、幸い大きな怪我にはならなかった。しかし、
「ケアマネジャーさんには淡々とした口調でこっぴどく叱られました。『あなたがしっかり支えてないから!』と。支え方もまともに教えてもらえず、一方的に叱られる。そもそも最重度ユニットでも『見て覚えろ』だった」
こう憤る女性は、職場に限界を感じたようだ。
「私はそこでのOJTを中止したい旨を支援事業のコーディネーターさんに相談しました。 結局、2週間でOJTは終了しました」
2024年から介護無資格者は「認知症介護基礎研修」が義務化されたが、当時は無資格でも働くことはできた。しかしだからこそ、有資格者の適切な指導が必要だったのではないだろうか。
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