組合から意見を求められた男性は、まずこんな正論を主張した。
「賃下げの前に、せめて例のあの契約は破棄してほしい」
だが、組合役員の一人は「それはできない」と即答。その役員は件の営業部長の部下であり、上司に逆らえないことは明らかだった。そこで男性は、組合役員としての立場を問いただす。
「会社の業務と組合活動は別物です。部署内の立場は関係ありませんよね。組合の代表として、ハッキリと上層部に伝えてください」
「1000万のコストをかけて800万で販売する商売を、組合員の給与を引き下げてでも続ける価値はありますか?」
さらなる意見に言葉を詰まらせた組合役員は、しばらくして耳を疑うような言葉を口にした。
「…たとえ800万でも、それが皆さんのお給料になるんです」
800万円の売上のために1000万円のコストをかければ、200万円の赤字が出る。それが給料になるはずもない。それでも「その後は話題をウヤムヤにされ、強引に合意・妥結に持っていかれました」と振り返る。
「組合役員の立場のはずなのに、完全に上部の息がかかっている状態でした。『この会社ダメだな』と思い、退職を決意しました」
組合が完全に機能不全に陥っていることに愕然とし、これが会社を見限る決め手になったようだ。
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