サイバー藤田社長の「激怒」ブログに賛否 「若手の退職は自由」VS「嫌われ役は立派」 | キャリコネニュース
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サイバー藤田社長の「激怒」ブログに賛否 「若手の退職は自由」VS「嫌われ役は立派」

サイバーエージェント(CA社)の藤田晋社長が10月1日朝に、日経新聞電子版「経営者ブログ」に投稿した記事が波紋を呼んでいる。その内容が、同社の退職を希望する若い現役社員に「激怒」した理由を述べたものだったからだ。

社内の事情を公の場に書いた理由には、経営者としての意図があったようだ。しかし、個人を特定されかねない内容や、「激怒」という感情的な表現が含まれていたためか、識者をはじめ各方面から賛否の意見が出ている。

「セカンドチャンス」中の社員を「競合」が引き抜いた

藤田氏は自身のブログでも「よろしければどうぞ」と宣伝

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藤田氏が若い退職者に「激怒」した理由は、主に3つある。ひとつめは、新事業の立ち上げを任せていたのに、「突然アルバイトを辞めるかのように放り出されてしまった」からだ。転職が理由というが、「個人的理由を優先」して社内外の関係者に対する責任を「放り出す」形になったことを許せなかったようだ。

2つめは、その立ち上げが「セカンドチャンス」だったこと。若い社員はかつて「会社に億単位の損失を与える失敗」をしたことがあったが、「挑戦した敗者」を評価する文化で再チャンスを得ていた。それを袖にするような振る舞いを許せば、「この価値観を維持することが危ぶまれる」という。

3つめは、その若い社員の転職が「競合からの引き抜き」だったことだ。かつてCA社が人材を引き抜いていた際、業界1位の会社は、出入禁止とばかりに「カンカンに怒っていた」という。その会社が今でも業界首位にいることに触れ、藤田氏は、

「優秀な人材を競合には渡さない、という毅然とした態度も必要」

と気付き、それから競合の引き抜きにあうと「激怒する」と決めているそうだ。藤田氏は普段はめったに怒らないことで知られているが、それでも「激怒」という態度をとったことを、次のようにあらためて肯定している。

「大勢の社員を率いる立場として、組織の未来のために、あえて毅然とした態度をとったのです。(略)今回の件に限らず、会社としての価値観や姿勢を見せるための『一罰百戒』は、経営していく上で必要なことだと思っています」

70代日経読者「こんな事で怒ってると寿命が短くなる」

この投稿に対して、ネットでは多くの批判が集まっている。「怒鳴って何がしたいんだ?」「億単位の失敗を取り戻さなければならないのは、社員でなく会社」といったものだ。ライターのかさこ氏も、自らのブログで「(藤田氏の)気持ちはわかる」としながら、今回の記事がかえってCA社の「魅力のなさを公言してしまった」のではとする。

会社を辞めるのは「社員の自由」であり、退職は競合他社が「魅力的と判断」された結果でしかない。事業立ち上げを放り出したのは「経営者にも企業にも魅力がなかった」からで、「そんな社員を育ててしまったのはどこの誰か」と揶揄している。

「こうしたことを書けば、『若い社員は企業への忠誠心がない!けしからん!』と共感してくれる老害読者が日経新聞には多いと思ったからだろう」

実際、日経サイトのコメント欄には、60代男性読者から「気持ちはよく理解できます。最近の若者にはモラルの欠如が感じられます」と、退職者を批判する声が寄せられている。他の60代男性も、「人の道に反する行いをするといつの時代でも、そのしっぺ返しがくるのではないでしょうか」と書き込んでいる。

一方で、年長者の視点から藤田社長をたしなめるコメントも。70代以上という男性読者は、「まだまだ、人のコントロールに関しては未熟。こんな事で怒ってると寿命が短くなる」と、達観したような意見が寄せられている。

藤田氏は「誰をどう動かしたかった」のか?

一方で、藤田社長は当然のことをしたまで、という声もある。ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみ氏は、日経新聞というマスメディアを利用して、社内に「脅威」のメッセージを伝える手法は、優秀な社員の流出や引き抜きを防ぐ「抑止効果」になるという。

「一代で上場企業を築く社長の感覚はこんなにも凡人と違うものか、と驚愕とするばかりだ。嫌われ役を買ってでも会社を成長させる姿勢は正しすぎるとしか言いようが無い」

PR会社社長の本田哲也氏は、フェイスブックに「誰をどう動かしたかったのか?という目的次第で、今回の成否は判断すべき」という冷静な意見を掲載している。確かに、結果を出さずに逃げ出す人を許す風土が社内に蔓延すれば、会社は取り返しがつかなくなる。

さらにCA社から人材の引き抜きを狙っている同業者には、「ヘッドハントしたらCA社に嫌われる」「取引できなくなるかも」という恐怖感を与えるだろう。個人ブログではなく公のメディアを使ったことも、そうした牽制球を投げる意図もあったかもしれない。

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