「残業=立派」「自分の仕事が終わっても帰れない」――「日本の嫌な風潮」はどうにかならないのか
先日、知り合いの美人編集者から仕事の打診をされた。物凄く魅力的な案件だったが、唯一の欠点が毎月数度の都内でのミーティングであった。
僕は田舎に暮らしている引きこもりなので、そうそう何度も都内なんて行きたくない。だから断った。すると件の編集者から「そうやってスッパリと断るヤツいねえぞ」と怒られた。
そうなのだ。日本の労働者の多くが、嫌なことや無理なことを「できない」とはっきり伝えることができない。だからこそ、こんなにもほら、息苦しいのだ。(文:松本ミゾレ)
「お茶汲みやトイレ掃除が女性の仕事ってなってること」
先日、ガールズちゃんねるを閲覧していると「日本のこんな風潮が嫌だ」というトピックを発見した。読んで字の如くのトピック内容になっている。
たとえば「お歳暮の存在」だとか「ご祝儀3万円は高い」だとか、色々と思うところのある風潮について書かれているんだけども、案外仕事にまつわる声も目立った。どんな内容のコメントが寄せられていたのか、いきなりだけどいくつか紹介していきたい。
「苦労が美徳」「有給が使えない現実」
「お茶汲みやトイレ掃除が女性の仕事ってなってること」
「残業=立派、偉いみたいなやつ おかしい? 定時で帰るのが当たり前になってほしい」
「自分の仕事が終わっても帰れない」
こんな具合に、社会に出て働くようになると、どこにでもある嫌な風潮についての意見が非常に多い。
で、こんなにもネガティブなものが風潮として定着しているということは、知らず知らずのうちに、みんながこれに倣っているということも考えられる。1人ずつがしっかり反抗していれば、風潮としては立ち行かないわけだし。
結局みんな、出る杭にならないように自重しつつ生活している。何か目立つ言動を見せた人に対して、たとえその発言が正論であっても「和を乱すな」と否定する、遺伝子のようなものが僕らの中には備わっているのではないだろうか。
社会に蔓延する厄介な風潮に辟易する一方で、実際には自分もその空気作りに一役買っている。そういうことって、さほど珍しくない。
「安定」を求めるなら空気に染まらなければならない?
僕はフリーランスなので、割と自由に仕事を選んでいる。冒頭にも書いたが、仕事を打診してきた人の期待を裏切ることも多いし、何なら「もっといい仕事ないの?」みたいなことも、相手を選んで追及できる。だけどこれは、あくまでフリーランスだからこそできる所業。
僕もサラリーマンを経験したことがあるが、思い返せば定時上がりしかした記憶がない。ただ、和を乱す発言が多くて、しょっちゅう怒鳴られていた。
そうだ、だから結局クビになったのだ。恐ろしい話である。日本では空気を乱すと、爪弾きにされてしまうのだった。こういう思いをしたからこそ、ボーナスの出ない今のような職種に変更したんだった!
「安定」を求めるなら死んだ目をしながら空気に染まらなければいけない。日本の労働環境の悲しいところだ。