北島康介「金メダルを一生ぶらさげて生きたくない」 アスリート学生のキャリアを考える就活イベント開催
体育会学生の就活の特徴について、日本体育大学学生支援センター主任の玉ノ井康昌さんは「トップで活躍している学生は実業団に行くが『競技ができるならいい』と引退後のビジョンを描いていない人が多い」と話す。
北島さんも、初めて金メダルを取ったアテネ五輪では「金をとることしか考えてなかった」という。
「次の北京五輪で取った時『このままじゃダメだな』って思いました。金メダルを一生ぶら下げて生きいきたくないなって。独立して、アメリカに渡ってトレーニング学とかを学んで、選手生活を続けながらしたいことをできる環境をつくっていこうと思いました。また引退したことで視野も広がり、今の自分があると思っています」
現役時代にやっていてよかったと思うことは「自分自身を知ること」。「五輪が4年後だったら、その2年前にはこういう状況に持っていこう」と自身のマネジメントが重要だったという。
また0.1秒を縮めるために気をつけていたのは「神経質になりすぎないようにすること。当時を振り返り、「大胆にオンとオフの切り替えをしていました。中高生の頃からコーチの目を上手く盗んで。いかに最高の状態を出すためにオフは必要だと思います」とコメントした。
現在、北島さんはスイミングスクールの経営や、パフォーマンス向上やリハビリなどを行う「Perform Better Japan」のゼネラルマネージャーとして活躍している。水泳については、
「どの業界にもスーパーアスリートがいるけど、下を見たい。水泳は0歳からおじいさんおばあさんまでできる生涯スポーツだし、健康にいい。より多くの人に楽しさを伝えていきたいと思っています」
と語った。
体育会学生の強み「上手くなる過程で叱咤は当たり前だと知っている」
では、どうすれば仕事と選手活動を両立できるのだろう。スポーツ人材の就職支援を行うアーシャルデザインの小園翔太さんは「仕事をしながら競技を続けたいなら『何をやりたい』を発信しないと応援されない」といい、周囲の理解を得ることと自分の気持ちを強く持つことが重要だと話した。
社会人になっても9年間アメフトを続けていたゼビオ代表取締役社長の加藤智治さんは、「社会人になって両立しようとするとタイムマネジメントが必要になる」という。
「どんなに頑張っても1日は24時間しかないからどう捻出して、何の目的を持って何のために練習するか考えるようになりました。パフォーマンスのピークは20代中後盤ですが、できる限りスポーツを続けるためにはタイムマネジメントが必要ですね」
就活における体育会学生の強みについて、小園さんは「目標にコミットする力」と「失敗からの回復力」の2点を挙げた。
「一般学生を採用する企業から『彼らは欲求がない』という声を聞きます。お金を稼ぎたいとかいい家に住みたいとか、目標がない。でも体育会系は『目標達成するまでに何をすればいいか』というPDCAが習慣化している。これって企業が求めていることなんです。社会人は結果を求められますが、つまりスポーツと一緒ですよね」
また何かに打ち込んだ経験がない人は”怒られなれていない”という。体育会学生は上手くなる過程で叱咤は当たり前だと分かっているため、このメンタリティが仕事にも生きるというのだ。
北島さんも「ほとんど失敗しかしてない水泳人生だったんですけど、目標とする記録があったので結果にコミットできていたのかなと思います」と頷いた。小園さんは
「一般学生が授業をサボったり飲み会に行ってる時間、練習したりしてましたよね。そのやってきたことを言語化してください。体育会学生は8%。希少価値があるし、今までの4年間は武器になる。変に飾ろうとせずありのままを伝えてください」
とアドバイスをした。