内閣府は先月末、40~64歳のひきこもり状態の人が全国に61.3万人いるとの推計を公表しました。ひきこもりはこれまで若年層の統計だけでしたが、中高年を対象とした全国規模のデータが明らかにされたのは今回が初めてです。
4月8日の「はてな匿名ダイアリー」には、友人がまさに「中高年ひきこもり」で、どうやって助ければいいのかと悩むエントリーがありました。友人は7年前に勤め先が廃業し、いまだに無職。実家で母親の年金を頼りに暮らしているといいます。(文:篠原みつき)
就活を勧めると「もうそういうのやめてくれ」とブチギレされる
友人が失業後に就職活動をしていたのは半年程度。会うたびに言うのは「そろそろ本気で仕事探そうかと思うんだ」です。投稿者は、派遣登録や様々な求人をあれこれ勧めてきましたが、高齢の母親の世話などを言い訳にして、結局なにもしないと不満げです。
あるとき、いつものように求人応募を勧めると、ついに相手から「もうそう言うの止めてくれよ!どうせ何にもしないんだから」と”ブチ切れ”されてしまいました。投稿者は、「じゃあどうすれば、こいつを助けられるだよ」と苦悩しています。近年、親の年金で暮らし、親の死後困窮し悲惨な末路をたどる中高年のニュースをよく聞くため、友人がそうなるのではと気が気でない様子です。
ブックマークは500以上つき、多くのコメントが寄せられました。目立っていたのは、投稿者に対する批判的な声でした。
「気を落とさないで聞いてほしいんだけど、一言で言うとお節介。無条件で全人生を背負える覚悟が無いなら程よい距離感を保ちましょう」
「人が人を救うなんておいそれとできないので、フェードアウトして縁を切るといいと思います。もうどうしようもない」
と突き放す人もいます。
さらに、「同じ境遇で就活してみろよ。気力を奪われるくらい嫌な目に合わされる。迫害されて尊厳が失われたら働くどころか生きる気力すらなくなる」といった批判や、「無理矢理働かせて更に失敗したらホントに死にかねない」など、厳しい意見が寄せられました。
7年前と言えば2012年。リーマンショックの余波で新卒は就職氷河期とも言われた時期です。中途採用も、それなりのスキルや経験がないと厳しかったでしょう。友人は半年ほどの就活で心が折れてしまったのかもしれません。
「本人が立ち上がろうとするとき後押ししてあげたらいいよ。待てば海路の日和あり」
一方で、コメントには友人にとって投稿者の存在が何よりの助けだとフォローする声もあります。
「アドバイスしなくていいよ。ただ話を受け身で聞いてあげて。もう一度言う、アドバイスはするなよ」
「一緒に遊んで話を聞くだけで十分だと思う。『増田(注:投稿者)という友達がいる』ということが、ご友人にとって何よりの助けなのではないかな」
「ときどき連絡して世間話をする。気にかけてくれる人がいることがどれだけ救いになるかわからない。本人が立ち上がろうとするとき後押ししてあげたらいいよ。待てば海路の日和あり」との声に、筆者も同感です。時々会う友人がいるなら完全にひきこもりではなく、投稿者との交流は、外と繋がる数少ない道といえます。外で楽しい時を過ごせば、いつかもっと外に出たくなるかもしれません。
専業主婦でさえニートと定義される昨今、無職は本人が一番気にしていることでしょう。はたから見ればのんきに見えても、心の中では焦りや不安があるはずです。ただそれも、こちらの勝手な決めつけで、本人は母親と2人で穏やかに過ごし、幸せかもしれません。
筆者も専業主婦のころ、ママ友に「自分のお小遣いくらい自分で稼いだら」と言われてカチンと来た覚えがあります。正論ではありますが、人にはそれぞれ事情があります。しかも、見下されている気がしたものです。優しさで助言しているつもりでも、投稿者は友人をどこか下に見てはいなかったでしょうか。「優しさ」のさじ加減というのはなかなか難しいものです。
投稿者は反響を受け、今後仕事の話はしないでおく、友人は本当にいいやつなんだよと追記していました。