伊藤忠商事も、子育て支援をしていない訳ではない。企業サイトによると2016年には、子育てや介護で通勤困難な社員向けに在宅勤務制度を整備した。男性の育休も2015年度から取得促進キャンペーンを行い、2017年度までの3年間で168人が取得している。世の中の数ある企業の中では、進んでいる部類に入るだろう。
しかしだからこそ、今回の放送内容には「伊藤忠商事ですら産休や育休をブランクと捉えるんだ」「働き方を選べるのは男性社員だけか」と残念がる人も少なくなかった。
番組で密着した他2人の社員はいずれも男性だった。水産部調達チームのリーダーになった男性は、同社の売上の中核を担う子会社コンビニチェーンとの大きな商談に向け、水産加工品の調査や試作をする様子が放送された。もう1人は、社長が期待をかけるITビジネス部署の一員として紹介されている。
歯科医院向け求人サイトを手がける企業への投資を、上司から「この会社を本当に経営して大きくしてく覚悟はあるのか」と問われる厳しい場面もあったが、どちらも子育てとキャリアの板挟みになっている様子は見られなかった。
子育てと仕事の両立に悩むのは、まだまだ女性のほうが多い。今回の議論は伊藤忠商事1社の問題としてではなく、社会全体の課題として捉える必要がありそうだ。