以前NHK総合の『あさイチ』でセクハラが特集された際、「髪形を褒めただけで左遷された」という視聴者メッセージがあった。今やそんな時代なのに、上司は無自覚で言っている可能性が高い。投稿者もそれは分かっていて、悪意無くやっている可哀想な人と見ている。
しかしある日、意を決して採用担当に打ち明けたところ、相手は「でも大丈夫でしょ?」と返してきたという。驚くことに、
「正直騒がれると困る、この程度の発言はさらりと受け流すべき、それが大人の女性というものだ」
というメールまで送られてきた。担当者は既婚の中堅男性社員で、面倒か保身かは不明だが、被害者が我慢すれば丸く収まるという考えを押し付ける、最悪の対応をした。投稿者は絶望し、自尊心を大事にしたいからきちんと相談したのに、
「窓口に我慢しろと言われ追い返されるならここでの未来なんてないじゃない」
「他にも肩を触ってくるおっさんがいる。キモ。吐き気がする。死にたい、何で私が?早く辞めたい」
などと嘆いている。人事担当者は、この社員の信頼を大きく損ねたことになる。これに対してブックマークは500以上つき、注目を集めた。多くは、
「その会社、できるだけ早めに辞めた方がいい。今時そんなコンプライアンス意識の会社は生き残れないと思う」
「記録を取っておいて、いつでも有利でやめられる状況を固めつつ、固め終わったら嫌なことは嫌だと伝えて改善なかったらやめればいいと思う」
といった指摘や励ましだ。また、「人事総務は採用だけが仕事じゃなくていい環境を提供するのも仕事かと」との意見もあり、筆者も同感だ。
実際の職場で「被害者の口封じ」が横行すれば何も変わらない
日本は法律で、職場でセクシャルハラスメントが起きないよう対策をとることを事業主の義務としている。厚生労働省の広報資料によれば、『性的な言動』とは、「性的な事実関係を尋ねること」や、「性的な冗談やからかい」などとしており、『性的な行動』としては「必要なく身体に接触すること」などが挙げられている。
状況は多様で判断は個別に斟酌されるため、今回の件がセクハラだという判断は企業ごとで分かれるかもしれないが、
「一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得ます」
とある。肩を触られることはこれに当たるだろう。相談者が苦痛を訴えているのだから、放置どころか「それが大人の女性」と勝手な性的役割を持ち出して我慢させること自体が、セクハラと言えるのではないだろうか。
職場の女性を「働く人」ではなく「女」としか見ないようなセクハラは、呼び名がつくよりもはるか昔からあり、やっと表に出始めた価値観を否定し封じるようでは、企業は進化しない。投稿者は会社に不信感や不安しかなく、長く勤めることは難しそうだ。結局、ハラスメントの放置は人材の定着を妨げ、企業イメージも損ない良いことはない。相手を大ナタで処分とまでは行かなくても、せめて訴えた人の気持ちを汲むような対応ができなかったのか、残念でならない。