「進学校」とは、単に”大学進学率が高い学校”ではなく、ほとんどの生徒が「難関大学」へ進学する高校のこと。ほぼ部活もなく、すべてのエネルギーを受験勉強に注ぎます。相談者は、「学校全体の雰囲気が大学進学以外ありえないといった感じで、特に先生達からそうした発言が出ます」と嫌悪感を表します。
中学のころから勉強する意味がわからず、とりあえず進学校に行けば「自分の選択肢が広がるのではないか」と考え進学しましたが、
「正直がっかりです。大学以外の選択肢は無いように思えます。自分は家庭の都合もあり私立の大学なんて出れませんし、尚更選択肢なんてありません」
と嘆いています。
彼の親はシングルマザーで、(国立大学が)ダメなら就職するしかないとのこと。兄は専門学校卒で就職に失敗し運転手になっており、妹は私立高校通い。もう自分にかけられるお金などなく、「僕は失敗できないんです」と、追い込まれています。
実は小説家になりたいという夢があり、小説に対する向き合い方は相当なものだそう。しかし、思いを親に打ち明けることはできず、「この僕の夢ですら逃げでしかないんでしょうか?」と答えを求めています。
これに対する回答は、ほとんどが「高校は卒業しましょう」というものでした。「辞めて後悔している子がほとんどです。高校を辞めると、かなり進路が狭まります」と諭す人も。この助言は、多くの大人が口にすることでしょう。実力社会になってきたとはいえ、学歴のせいで求人に応募すらできない、給料の格差がある等、大人になると学歴に泣かされることが多いのが現実です。
「『難関大学』への進学によって選択肢が増えることはありません」
しかしこの高校生の悩みは、「進学校に進んだ男子は、エリート街道しか許されない」ことに気付かされます。男性学が専門の社会学者・田中俊之さんは、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波ジュニア新書/2019年7月19日発行)の中で、まさに進学校に通う男子の「選択肢のなさ」を指摘しています。
「誰でも少し落ち着いて考えればわかることですが、『難関大学』への進学によって選択肢が増えることはありません。『難関大学』の学生には、『一流企業』への就職が期待されます」
進学校は、難関大学→一流企業(立派な社会人)→安定した高収入→良い家庭を作る、へのルートであり、「進学校」でなくても選べる「脇道」に逸れることは認められないと説明しています。なるほど、と唸ってしまう見解です。
そうした中、「男性が求められる役割」について、過去・現在・未来、また海外や女性との比較など様々な観点から説き、今後の男性の生き方について考える材料を与えてくれます。周囲の期待を裏切るかもしれないという心配は無用で、
「主体的に考える機会を奪おうとするような大人は、みなさんの人生に責任を持つことはないからです」
と、若者を励ましています。
相談者の男子生徒にぜひ読んで欲しい。学校に行けない理由について、客観的によく考える機会を与えてくれることでしょう。