ハラスメントを受けたことのある人、見聞きしたことがある人に、誰からのハラスメントだったかを聞いた。最も多いのは「監督・演出家・スタッフ」で37.1%。2位が「所属先の上司・先輩・マネージャー」(36.1%)、3位が「発注先・取引先・クライアントの従業員」(35.8%)だった。
見聞きしたり、実際に被害にあったりしたハラスメント事例を聞くと、壮絶な体験が数多く寄せられた。パワハラ被害では、
「頼むから死んでくれ、誰がこいつを殺せ、などの暴言。大声での叱責」(女性50代、女優)
「殴られたり蹴られたり、翌日は病院に行き休んだ日もあった」(男性30代、映像制作技術者)
「事務所関係者に支払い遅延について、お金のことについてあれこれ言うなら仕事を与えないと言われる」(女性30代、声優)
「筋トレ中に演出家にタオルで打たれた。ダメ出しでこんなこともできないのかというようなことは何度も言われた。仕事は残っていないのに、新人はスタッフの方々や先輩が帰るまで帰れなかった。お弁当を毎日何種類も用意するという仕事があったが、先輩に厳しく言われて、頼んではいけないお弁当の種類があった。食べられない人が残せばいいだけだと 思った。毎日、考察したことを書いた手書きのノートを演出家に提出した。24時くらいに帰宅して次の日も午前には家を出るので心休まる時間がほぼなかった」(女性30代、女優)
などの声が寄せられた。セクハラ被害では、
「性的な関係を迫られてお断りしたら、知らないうちに周りに『あいつは女癖が悪い』と噂を流され、結果仕事を振られなくなった。(男性30代、声優)
「編集者に漫画(仕事)の話として飲みに誘われたが、自分の男性性アピール(妻も子もいるが自分はまだ男としてイケると思う)、こちらに視線を向けながら好みのAVシチュエーションを語られる、等常識のない対応を受けた」(女性20代、漫画家)
「夜、マネージャーと二人きりで事務局にいる時に鍵をかけられ、仕事のダメ出しされながら服を脱がされ、体をじろじろ見られた。一生忘れられない、辛くて嫌な思い出」(女性40代、女優)
などの声が上がっている。
98.9%「フリーランスもハラスメント防止法の対象にすべき」
このほか、「妊娠を告げたら、ほとんどすべての取引先から仕事を切られた。ハラスメントだと感じたが、どうしようもなかった。 どうするのが正解だったのか、今でもわからない」(女性30代、編集者)、「人格否定、差別発言(「バカでもチョンでもできる」など)。私の夫は韓国籍」(女性30代、アートディレクター)など、様々な体験が寄せられた。
一方、ハラスメントを受けた人のうち、誰かに相談した人は54.8%。相談しなかった人の多くは「相談しても解決しないと思った」(56.7%)、「人間関係や仕事に支障が出る恐れ」(53.7%)などの理由から泣き寝入りしていた。
今年5月に成立したハラスメント防止法では、事業者に対し、労働者保護のための措置義務が課されている。しかし、フリーランスや求職者など雇用されていない人は法律に規定がない。調査元によると、「相談窓口や支援制度は労働者が対象であるため、フリーランスは門前払いになることも珍しくない」という。アンケートの回答者のうち98.9%は、フリーランスもハラスメント防止法の対象とすべきと答えている。