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過酷な環境で働く私立教員たち 残業177時間も未払い、校長から「地獄へ落ちろ」とパワハラ発言も

8月には、千葉県にある私立高校の教諭が月あたり最大177時間の残業をしていたことが明らかになり、世間に大きな衝撃を与えた。同組合の佐藤学代表は、

「いわゆる過労死ライン(月80時間)を2倍以上も上回る稀にみる深刻さ。死んでいてもおかしくなかった」

と肝を冷やす。同校では、このほかにも残業代の未払いや、「バカ、アホ、マヌケ」「地獄へ落ちろ」といった教員へのパワハラ発言があったとして計3人の教諭・元教諭が抗議しているが、誠実な対応がなれないまま先月付けで校長が退任する事態となっている。

教員間のパワハラと言えば、神戸市立東須磨小学校の一件が記憶に新しいが、佐藤代表は学内での陰湿なパワハラが絶えない原因について、「教員という業界が閉鎖的である」ことを挙げる。さらに、

「文科省が手を入れにくい私学はブラックボックス状態になっている。組合にも『仕事を与えられない、教えてくれない』『担任・部活を外された』といった相談が頻繁に来るが、おそらくまだ見えていない場所でもたくさん起こっているだろう」

と危機感を募らせている。

私立高の2割が労基署から是正勧告を受ける

長時間労働に関しては、私学経営研究会が2017年にアンケート調査を実施している。回答のあった私立高331校のうち、約4分の1にあたる85校が労働基準監督署から勤務時間の管理に関する調査を受けていた。うち、34校には実際に指導があり、28校には是正勧告があった。つまり、労基署は2割弱の私立校に対し、「改善が必要」と判断したことになる。

同組合はさらに、「求人情報と実労働のギャップ」を問題視する。実際に相談が寄せられることも多いという。2018年1月に改正した職業安定法では、求人申し込みやウェブサイト上での募集の際に、”賃金”を含めた労働条件を明記することを定めているが、依然として記載のない学校は多いという。佐藤代表は

「学校によっては、『教師は生徒のために尽くすのが当然で、給料は気にするべきでない』という昔ながらの風潮が色濃く残っているところもある」

と指摘する。同組合では、首都圏の私立中高を対象に求人票の実態調査を実施し、2020年1月をめどに調査結果をまとめることで、「誰もが安心して、転職できる業界にしていきたい」(佐藤代表)と語る。

「聖職者」と形容されることもある教師たち。子どもに勉強や生き方を教える仕事の重みから、時には仕事が長引くこともあるだろう。だが、大きな使命感やモラル、プレッシャーが伴う職場だからこそ、雇う側も一定の待遇や労働条件を守っていかなければならない。

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