奨学金を受ける人の数は2011年から増加し始め、利息の無い「第1種奨学金」よりも利息がある「第2種奨学金」が特に増加している。奨学金の貸与金額(2017年度末)は9兆3743億円で、在校生を除いた要返済債権額は7兆498億円になる。そのうち、返済されない可能性が高い「リスク管理債権額」は、5940億円にのぼる。
網屋氏は、奨学金増加の背景には、大学の授業料の高騰があると解説。景気の良かった80年代から上りはじめ、2000年には倍以上に跳ね上がっている。国が大学への補助金を下げていることも理由として挙げた。
一方、サラリーマンの年収は95年を境に上がらず横ばい傾向に。仕送り額も90年をピークにどんどん下がっている。負担が重くなるにつれ、奨学金を借りる人が激増しているのだ。
網屋氏は、かねてより議論になっていた給付型の奨学金制度がやっと今年4月から開始されるとしつつ、奨学金の返済義務について強調。そもそも奨学金制度は、「返ってきたお金を次の学生に貸す」という仕組みのため、返済されなければ次の学生へ回すお金が無くなってしまうと説く。「奨学金という名前がよくない。貰えるというイメージがある」として、
「奨学金は低利の『学生ローン』であることを忘れてはならない」
「安易に奨学金じゃなく、返さないと次の世代に回らないよということを認識してやってほしい」
と警鐘を鳴らした。
堀潤氏「未来への投資なんだから、国がしっかりと育ててあげて」
また、奨学金を延滞するとどうなるかについては、
「滞納1か月で電話催促や督促状、2か月で延滞金が発生し、3か月延滞するとブラックリストに載る。9か月を過ぎると法的措置が取られ、返済しても5年間はブラック情報として信用情報に残ることになる」
と釘を刺している。
確かに安易に多額のローンを組んでしまう人もいるだろうが、背景として補助金の削減や授業料の高騰、親世代の収入減が関係していることを考えれば、やむを得ない選択の人も多いはずだ。今年から始まる給付型の奨学金も、すべての学生が利用できるわけではなく課題は残る。何より、もう大学を出れば高収入の職に就けるとは限らない現実が問題だ。
司会の堀潤氏は、「これ(ブラックリスト)は若者に背負わせるの可哀想ですよ」とコメント。
「未来への投資なんだから 負債を前提とした奨学金じゃなくて国がしっかりと育ててあげてよって(思う)」
などと、若者の立場を思いやる言葉を口にしていた。
保証人制度の廃止は今月中に有識者会議が開かれ検討される。保証人の負担をなくし、奨学金制度の財政安定化を図るのが狙いだが、制度を利用するすべての学生に保証料負担が生じるため、政府内での慎重論も根強く調整は難航すると見られる。