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ベルシステム24のDX人材育成策 「デジタル人材戦略部」との兼務により所属部署の業務以外でも能力発揮の機会を提供

ベルシステム24の岩堀司さん

ベルシステム24の岩堀司さん

コンタクトセンター大手のベルシステム24は、グループが策定する「中期経営計画2025」の中で「NEW BPO」というコンセプトを掲げています。顧客接点で発生するVOC(顧客の声)をはじめとするさまざまなデータを利活用し、最適なCX(顧客体験)を実現するサービスの提供を目指しています。

この計画を具現化すべく、ITエンジニアを積極的にキャリア採用する一方、グループ全体で約4万人の従業員の能力向上を促進する取り組みを行っています。ベルシステム24のHR本部で事業人事部長とデジタル人材戦略部長を兼任する岩堀司さんに話を聞きました。(キャリコネニュース編集部)

「VOC(顧客の声)」を基にサービスを作るエンジニアを募集

岩堀司さん:ベルシステム24 HR本部 事業人事部長 兼 デジタル人材戦略部長。2007年入社。入社後CRM、BPRコンサルティング、企画・開発職を経験。現在は、CRMにおける人材開発組織とデジタル人材の育成組織を兼任。

岩堀司さん:ベルシステム24 HR本部 事業人事部長 兼 デジタル人材戦略部長。2007年入社。入社後CRM、BPRコンサルティング、企画・開発職を経験。現在は、CRMにおける人材開発組織とデジタル人材の育成組織を兼任。

――御社では現在どのような人材の採用に注力されているでしょうか。

ITサービスの提供を担うエンジニアやシステム管理全般を担う社内SEといったIT系の人材が、キャリア採用の主だったところです。このほかコーポレート部門でも、情報セキュリティの強化に取り組む職種など会社機能上で必要な専門人材を経験者採用しています。

また、当社では「ヒト」と「新技術」を融合させた「次世代コンタクトセンター」の構築を目指して、ソニーコンピュータサイエンス研究所と共同で「イノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所」を社内に設けています。こちらには素地素養を持った当社の従業員が参加していますが、研究所でも社外から研究職をキャリア採用で募集しています。

――エンジニア職は前職の経験でいうとどういう方がマッチしそうですか。

SIerに勤務していたエンジニアの方であれば、基本的にあてはまると思います。研究職は、機械学習に馴染みがある方や、生成AIに興味がある方、もしくはそういうことを前職で研究されていらっしゃった方は歓迎です。

その他、業界ならではの専門性を持つスキルとして、当社の音声システムに採用しているAVAYA(アバイア。米通信・ネットワーク機器メーカー)に精通されている方を歓迎しています。このほか、当社のクライアント企業にシステム開発をデリバリーしたい方や、4万人の当社従業員が活用する基幹システムの社内SEなどを幅広く募集しています。

――そのような人材採用に注力している背景はどのようなものでしょうか。

当社は1,000社を超えるクライアント企業からコンタクトセンター業務を中心に、バックオフィスBPOなど幅広いアウトソーシング業務を受託しています。コンタクトセンター業務では、年間約5億件ものお問い合わせへの対応をしています。この応対データから多角的な価値を創出するために、音声データのテキスト化や感情解析など、音声周辺の多面的なソリューションを標準装備したサービスを提供しています。

現在、この仕組みをマーケティングやカスタマーサポートに活用するサービスのお取引が増えています。このサービスをデリバリーする部隊と、デリバリー後の保守の部隊を今後強化していく必要があり、先にあげたITエンジニアの採用を増やしているところです。

専門知識に特化した社内研修でDXスキルを磨く

中期経営計画2025(2023年4月)より

中期経営計画2025(2023年4月)より

――クライアント企業で「顧客の声」を活用したサービスの需要が高まっているのですね。

「中期経営計画2025」では「NEW BPO」というコンセプトを掲げ、コンタクトセンターに蓄積される顧客の声に加え、あらゆる顧客接点のデータを利活用することで、最適な顧客体験(CX)の実現を目指しています。

この一環として、2023年9月にはデータマーケティング事業やAIソリューション開発を手掛けるシンカーを子会社化しました。同社のノウハウと、当社が持つ顧客接点の設計・運用や、コンタクトセンターでのVOCの利活用ノウハウを融合することで、データ利活用型マーケティングBPO体制の構築を進めています。

データサイエンティストなどのDX人材については、今後事業が成長するうえで新たに外部からの採用を行うフェーズもあるかと思いますが、現状では当社の従業員の中に、例えば「統計検定」などの公的資格を有する人材も豊富におり、まずはそういった素地素養を持つ社内人材をデータサイエンティストとして育成することから進めています。

――従業員のデジタルスキルを高めるためにどのような取り組みをされていますか。

主に3つの取組みを行っています。1つ目は「出向制度」です。シンカーのような先進的な技術を持った企業に出向したり、ソニーのような先端技術を持った企業から社員の方に出向してもらったりして、実務を通じて直接学べる機会を作っています。

2つ目は「キャリアマップ制度」です。職種や役職に応じて必要な知識を定め、e-ラーニングで必要な研修を受けられる仕組みを作っています。DXやITに関する基礎知識から、社外のデータサイエンティストと共同し開発した、データ分析・解析論を本格的に学べるコンテンツなどさまざまな内容を網羅しており、自身のレベルに合わせて気軽に専門知識を身に着けることができます。

3つ目は「デジタル人材戦略部」という組織を設け、DXに関する素地素養を有する当社内の人材を可視化し、当該の組織に兼務として集めています。DXに関する専門的な知識や経験を有するものの、所属する部署での業務のみでは発揮する機会が限定されることから、兼務によって発揮する機会を最大化しています。さらには、DXに関する新たな知識習得のための自己研鑽プログラムも用意し、経験と知識の両面を会社としてサポートしています。

デジタル人材戦略部ではDX人材を「クリエイター」「データアナリスト」「ビジネスアーキテクト」「エンジニア」という形で区分けしていますが、例えばPythonの知識があるエンジニアの場合、Pythonで解決できる他業務の課題に取り組んでもらい、関連するデータ分析・解析の知識を自己研鑽プログラムの活用により習得してもらったりしています。

AIを使った「業務マッチング型採用モデル」を運用

中期経営計画2025(2023年4月)より

中期経営計画2025(2023年4月)より

――人材の定着のために、どんな取り組みをされていますか。

当社の正規社員への雇用経路には、新卒入社とキャリア採用、契約社員から正規社員への雇用形態変更の3つがあります。いずれの場合でも早く職場に慣れて能力を発揮してもらうためのオンボーディングを、人事の専門人材が施策化し施行しています。

雇用経路問わず、入社後、直属の上長や先輩によるOJTや支援と併せて、教育担当がメンターとしてつき、会社や組織への早期定着に向けて全面的にフォローしています。本人だけでなく上長や同僚に対しても定期的にヒアリングやアンケートを行い、必要なアプローチを行うことで、問題の早期発見と解決を図っています。

柔軟な働き方については、場所を問わずに働けるフルリモート勤務を導入しています。それ以外にも、社内外問わずの副業制度や、業務負担を軽減するワークシェア制度などさまざまな制度を設けており、個々の従業員の志向に合った働き方のできる環境を整備しています。

――採用に関して、新しく行っている取り組みはありますか。

当社が蓄積するHRデータを用いたAI予測モデルと、全社統一した採用基準・プロセスを組み合わせた「業務マッチング型採用モデル」を、資本提携するDUMSCO社とともに構築して運用を始めています。

当社では、クライアントから受託した案件に人材を配置するために年間3,000件におよぶ採用活動を行っています。この採用プロセスを効率化し、応募者に対して幅広い業務の中から活躍できる最適な場を提供するために使われています。

具体的には、応募者に対して行った定型フォーマットによるヒアリングを基に、業務への親和性などをAIが判断し、マッチング度合いの高い順に案件を提示するものです。なお、最終的な判断は人間が行い、AIはあくまでも判断をサポートするために使われています。

「年俸制の有期雇用」でDX人材市場の高騰に対応

2021年に移転した本社オフィス「BellSystem24 Communication BASE」(東京・港)

2021年に移転した本社オフィス「BellSystem24 Communication BASE」(東京・港)

――コンタクトセンターはジョブ型の仕事ともいえ、人材の流動性の高い業界ですね。

今後は人材不足も進むと予想されるので、さまざまな理由で一度当社を退職された方を、アルムナイネットワークとして関係を維持する施策を進めています。

そして、仕事に復帰されるときには、業務や求められるスキル、求職者の人となりも考慮したうえで、最適な就業環境と育成環境を提供していきたいと考えています。

――事業会社が専門性の高いDX人材を中途採用する際に、既存社員との待遇のギャップをどう埋めるのかというのは、多くの企業の悩みになっています。

今後もDX人材の労働市場が高騰し続けると、他社と同様、当社の報酬体系や制度も市場に合わせ見直す必要があります。

この課題に、現在2つの対応を使い分けていこうと考えています。ひとつは年俸制の有期雇用契約です。活躍ぶりを踏まえて1年ごとに契約し、その時点での職務価値に照らして市場、職務の両面で適切な報酬となるよう年次で更新をする契約方法で、こちらはすでに運用を始めています。

もうひとつは、市場が高騰している「高度専門人材」を定義し、通常の報酬テーブルとは別の制度、給与体系で対応する方法で、実現に向けて社内でフィジビリティスタディ(実行可能性調査)を進めています。

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