ビッグデータで医療業界を変革するMDVが目指すヘルステックの未来像「医療を選択できる社会を実現するために」 | キャリコネニュース
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ビッグデータで医療業界を変革するMDVが目指すヘルステックの未来像「医療を選択できる社会を実現するために」

メディカル・データ・ビジョン株式会社 管理部人事庶務ユニット長の佐藤達哉さん

「医療ビッグデータでキミはなにができる」。そう問いかけるのは、国内の医療ビッグデータ活用のパイオニアであるメディカル・データ・ビジョンだ。

世の中のIT化が加速度的に進み始めた2003年に創業したメディカル・データ・ビジョン(以下、MDV)は、2023年に創業20周年を迎える。

創業当時から医療データが利活用される社会を目指して事業を展開してきたMDV。日本のヘルステックを牽引してきたMDVが考える、ヘルステックの未来とは。そしてそれを担う「人」に求められることとは。管理部人事庶務ユニット長の佐藤達哉さんにお話を伺った。(文:千葉郁美)

ICT化、DX化、ビッグデータの利活用…デジタルシフトへの動きが鈍い医療業界に変革を

ーー御社は病院向けの経営支援システムの提供をきっかけに病院から預かった医療ビッグデータを用いて、病院経営改善や医薬品の研究・開発などを支援、さらに近年では個人に医療・健康情報を提供する取り組みをされています。経営支援システムの提供、そしてデータ利活用サービスというビジネスモデルの構築には、どのような背景があるのでしょうか。

データの利活用による医療の変革は、創業者の岩崎がこの会社を設立した理由でもあります。

医療・健康分野においては、いまだデータ活用があまり進んでいません。世間でも取り沙汰されるように医療のICT化が遅れているために、本来有効活用されるべき医療情報や健康情報が活用されていません。そもそも、自分で自分の医療や健康に関する情報を知らないという状況があるんですね。

これらの医療データが活用されれば、私たちはより自分に合った医療・健康サービスが受けられるし、医師もその患者にとって最適な医療を提供できるようになると考えています。そして何よりも、私たち自身が、「自分の情報を自分で管理する」という、一見するとごく当たり前に見えるけれど出来ていないこと、これが可能になるんです。

創業者の岩崎は、それをやるべきだ、自分でやらなければという思いを持ってこの会社を立ち上げ、それを実現するための手法の一つとして今のビジネスモデルをつくり上げたのです。

最終的には、私たち一人一人が、自分の医療・健康情報を自分で管理し、どう活用していくのかを考えることができる社会をつくっていくこと、データ活用を通じて「自分自身で自分の医療を選択できる世の中にする」ということが、私たちが目指している場所です。

ーー医療業界のICT化やDXには障害も多いと聞きます。昨今、電子カルテの普及はスピードを上げて前進しているようですが、一方で診療情報の利活用となると一筋縄ではいかないのではとお察しします。どのようにしてビッグデータを構築してきたのでしょうか。

ビッグデータ構築にはまず病院さまとの信頼関係構築が重要だと考え、当社はそれを非常に大事にしています。経営支援システムを導入していただくお客様との関係は、システムを導入していただいて終わりではなく、システム導入からがむしろ起点だと考えています。導入初期からお客様サポートの部門が細かなコミュニケーションを取ってサポートしたりですとか、医療制度の改定があれば「その制度をどのように捉えていくか」といった内容のセミナーを開催したりして情報発信をするなど、様々な形で経営をアシストしています。

また、システムを導入していただいている病院さまを集めて情報交換などの交流の場も設けています。コロナ禍に入りオンラインでの実施になっていますが、以前は頻繁に対面で実施していました。

同じ地域で開業しているけれどコミュニケーションはなかった病院さま同士が知り合うきっかけになったり、システムを使って経営改善する中でこういう工夫をしたよ、こんな成果があったよ、といった実例を共有し合うことで病院経営のヒントを得ることができたりと、非常に有意義な会となっています。

このようにして、当社のシステムを導入したことをきっかけに病院にとって良い効果を感じていただけるようになったことで、さらなる情報の提供や活用できる新たな商品の開発に期待を持っていただいている。それが信頼関係の源になっているのではないかなと思います。

MDVのビジネスモデル

ーー来年で創業20周年を迎えられますが、これまでを振り返ってみて医療業界のICT化についてどう総括されていますか。

まず私たちの事業について振り返ってみますと、病院向けのいわゆる経営分析システムは全国800を超える病院で導入していただくことができました。「診療データを活用することで医療の質をさらに上げていく」ということに関しては、多くの病院で徐々にスタンダードになりつつあるのかな、と感じています。

現在は国内では難しいとされていた大規模な診療データベースを構築し、二次利用を進めるというフェーズにきました。診療データベースの実患者数は2022年5月末時点の集計で4001万人分で、国内最大規模になっています。これに加え、健康保険組合のデータの取り扱いを2020年4月にスタートし、2022年5月末時点で実患者数777万人になりました。

この膨大なデータは、製薬会社のマーケティングや薬品の副作用の調査研究のほか、学術機関での研究の材料として活用していただいています。

ビッグデータの利活用は着々と前に進み出しているものの、一方で全体を見渡すとやはりまだまだICT化が進んでいないと感じるところが多いと思います。

例えば、オンライン診療というのがあります。コロナ禍に突入したばかりのころに注目されましたが、これもなかなか利用が進んでいない状況です。

というのも、オンライン診療をいざやろうとしてみると様々な制約があることがわかるんですね。国の調査によると、電話や情報通信機器を用いた診療を実施できる機関として「登録されている医療機関」は1万6,872施設あるのですが、実際に初診からオンライン診療ができる医療機関はその15%程度しかない。旗は上がっているものの、その先に進んでいないというのが現実です。

また、最近ではマイナンバーカードを健康保険証と紐付けて、診療情報共有をしていったらどうだろうかという声も上がっていますが、これも整備には時間がかかりそうです。

まずは健康診断のデータから徐々に提供していくという方向で進めて、年数を刻みながら取り扱える情報を増やしていこうとしている、その動きは見えるんですがこれもやっと始まったところ、という認識です。

医療業界全体を見ると、ICT化に意識が向くようになってきてはいるものの、実際にはまだまだクリアしなければならないことや整えなければならない環境がたくさんあると感じています。

ーー医療におけるデジタルシフトの難しさというのを感じます。御社の理想とされるヘルステックの未来とはどのような姿なのでしょうか。

最終的に私たちのつくりたい社会は「自分の健康や医療に自ら参加できる社会」です。自らが参加することで人々の意識が高まり、医療の質が上がったり生活の質が上がったりする、さらには、病気の予防にもつながるのではないかと考えています。

そういった社会の実現に向けてやるべきこととして、今後ますますPHR(パーソナルヘルスレコード)の事業を進展させていきたいと考えています。実際のサービスとしては、患者個人に向けた「カルテコ」を開発、提供しています。病院という特定の機関だけではなく、個人が医療・健康情報を保管できる仕組みです。

カルテコのイメージ

「最前線で歴史に残る仕組みづくりをする」そんな思いを持つ人が生き生きと働ける

ーーヘルステックを牽引する御社の事業を推し進める上で、必要とされる人材はどのような方ですか。

MDVのスタッフは医療という分野に対してデータを用いて、何かしら改革をしたい良くしていきたいという思いを非常に強く持っていますので、やはり医療に対してその人なりの興味やこだわりがあった方が、よりやりがいを持って楽しく働けると思います。

例えば、中途採用の方でしたら医療業界に身を置いた経験があったり、新卒の方であれば、研究のテーマとして医療問題っていうのを取り扱っていたりする人もいます。ただ、そういったことが必ずしも必要というわけではありません。「患者」という視点で見れば、誰もが何らか医療と関わりを持ってきたはずですので、その中で何か感じたことがあるという方がいると思います。それは課題じゃなくてもいいんです。中には病気になったときに、自分の担当の医師と看護師の人たちがすごく良くしてくれた、自分のために考えてくれて嬉しかった。だからそういう人たちのために恩返しができるシステムを作りたい、そんな発想で入社された人もいます。むしろ、そういった医療に対する思いの方が重要だと思っています。

医療への直接的な興味関心のほかにも、社会課題解決という視点もあります。やはり医療は社会課題としても筆頭に挙げられ、日本のこれからの社会の中で解決しなければならないこととして強く意識される分野です。課題解決の一つのフィールドとして医療を選んで、ここで何かしらやってやろうという、そういった発想もあると思います。

ーーそうした「人」の力を最大限発揮するには、組織づくりも重要かと思います。

人事としては、組織づくりにおいて、理念に基づいたチームづくりを意識しています。チームを編成してから何かを作り上げるのではなく、会社としての理念を掲げて「この理念を実現させるためにどんなチームづくりが必要か」を検討する。そしてそのチームに所属しているスタッフが「理念に向けて自分の立場でやるべきことは何か」を手繰り寄せる、というやり方です。

事業拠点は東京と九州の2拠点を設けていますが、こちらも業務分担上はあえて本社・支店と切り分けていません。複数拠点のある企業では、各拠点の中で縦に割って組織をつくるケースが多く見受けられると思うのですが、私たちとしては、東京・九州どちらにいても会社としてのやるべきパフォーマンスの質は変わらず提供できる、そんな環境づくりを心掛けています。

ーー教育という観点ではいかがでしょうか。

現段階では、成長したいという社員の自主性に任せている部分があり、組織としてはそうした動きを促していけるように努力をしています。具体的には、社員一人一人がそれぞれの部門のなかで「自分のなりたいイメージ」を持ち、そしてそれを実現していけるように、上長との対話を積極的に行っています。

社員が主体的に動こうとすれば、部門や部署を超えた連携を容易にできる環境があります。例えば本社オフィスの造りで言えば、ワンフロアぶち抜きで300坪ぐらい、部門の垣根なく同じ空間にいる状況なんですね。

個々の目標達成につながるような情報や過去のノウハウは先輩が持っていますので、いつでも取りに行ける。そんな環境です。

しかし、体系化された教育カリキュラムというところまでは至っていないというのが現状で、これまでは専門的な技術や知識を持った「人」をベースにノウハウをつないできたという背景があり、強く課題感を持っている部分です。培ってきたノウハウを会社の資源として標準化していくことも考えていかなければいけないと思っています。

ーー具体的な採用活動はどのように行っていますか。

当社は以前から即戦力の中途採用に力を入れてきたのですが、現在は若手の獲得に注力する方向に舵を切っているところです。

創業から20年あまりが経過した今、創業当時から活躍している社員が近い未来に大量退職する時期を迎えます。それに備えて当社でも、若手をどんどん入れていこうとしているところです。

新卒に関しては、毎年3、4人に入社していただいています。職種を限定せずに募集していまして、選考プロセスの中でその方の適性や興味関心を知り、どの職種で活躍していただけるかを見ていくという方法をとっています。

中途社員に関しては2022年度に20人から30人の採用計画を立てています。当社のほぼ全職種で人員を増やしていきたいと考えていますが、特に営業職とエンジニア職の採用には力を入れています。

ーーこれからのヘルステックを担う人材の獲得に向け、工夫していることはありますか。

私たちの持つビッグデータがどのように活用されるのかを、視覚的に知ってもらえるウェブツールがあるので、それを学生やエンジニア向けの説明会などで紹介しています。

当社が開発した「MDV analyzer」というWebツールを使えば、すごく短い時間で、臨床現場の実態が見えるようなデータがパパっと出てくるんです。昨年12月のイベントで展開したところ非常に好評で、これには手応えを感じました。

データを手にすること、活用することが、医療業界をはじめとした私たちが暮らす社会全体の未来にどれだけいい影響を与えるものかということに気付いてもらい、「自分もその最前線で歴史に残るような仕組みづくりをやってみたい」という思いを持って働ける仲間を求めていこうと考えています。

【プロフィール】 佐藤達哉(さとう・たつや) バブル崩壊が始まった1991年に大学卒業。新卒で入社した音楽配信会社で営業に従事。その後、PC・OA機器等を取り扱う卸販売会社に転職し、庶務・総務・人事のあらゆる業務に携わる。 2014年にメディカル・データ・ビジョン入社。現在は管理部人事・庶務ユニット長として、新卒・中途採用をはじめ、人事総務庶務業務に幅広く携わっている。採用活動においては、企業理念への強い共感をポイントとして掲げながらも、それを単なる共感に留めず、主体的に企業理念実現に取り組むことができる人材を求め、地道な発信を続けている。

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