モノ売りから「コト売り」へ。時代を捉えて進化するオカムラの“人財”戦略「柔軟に世の中の変化に立ち向かえる人材を」 | キャリコネニュース
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モノ売りから「コト売り」へ。時代を捉えて進化するオカムラの“人財”戦略「柔軟に世の中の変化に立ち向かえる人材を」

株式会社オカムラ 常務執行役員 コーポレート担当 佐藤喜一さん(右)と人事部長 中條 敦さん(左)

国内の製造業はデジタル化や労働力不足などさまざまな課題に直面しており、予測できない時代へと突入した今、オカムラはいかにして事業を展開していくのか。また、オカムラの事業戦略を推し進めるのに必要としている人材とは。常務執行役員の佐藤喜一さんと人事部部長の中條さんに話を伺った。(文:千葉郁美)

ポストコロナ、労働力不足…社会課題を労働環境ソリューションで解決する

――オフィスの机や椅子、什器などの国内トップメーカーの一つとして知られている御社ですが、2018年に「岡村製作所」から「オカムラ」へと社名を変更されました。その背景についてお聞かせいただけますか。

(佐藤さん)当社は1945年10月、終戦直後に横浜で創業しました。創業者たちはもともと航空機メーカーの技術者でした。終戦職を失った技術者を中心に、それぞれが資金、技術、労働力を提供し、協力しあって立ち上げた企業、それが「協同の工業・岡村製作所」です。社名は創業地岡村に由来しています。

創業当時は生活用品を製造していましたが、進駐軍から注文を受けたのがきっかけとなり、スチール製家具の製造・販売をはじめました。その後、日本初の国産飛行機やFFオートマチック車「ミカサ」の製造手掛け、航空機技術を持つ職人たちの手でさまざまなものを生み出しました。こうしものづくりのDNAは創業当時から脈々と受け継がれてきました。

2018年に社名を「オカムラ」へと変更しましたが、その経緯は実際に行っている事業が「製作所」という社名にそぐわなくなっていたことがあります。製作所というと製造や工業のイメージが強いと思いますが、我々の事業は「モノ」だけでなく「コト」へと変化を続け、現在ではお客様の課題を解決する「ソリューション事業」が中心となっています。

――御社の「ソリューション事業」ではどういったことを手掛けられているのでしょうか。

当社は「オフィス環境事業」「商環境事業」「物流システム事業」の3つのセグメントがあります。

「オフィス環境事業」は、お客様のオフィスに当社の製品を納めるだけではなく、オフィス空間をデザインしてお客様に提案する事業です。オフィス家具や什器をどう配置するのか、ということだけではなく、お客様の働き方にも関与して、働きやすい環境を提案しています。

昨今の新型コロナウイルス禍においてはリモートワークが広がり、企業によっては「オフィスはいらない」という決断をしたところもありました。働き方の多様性への気づきがあった一方で、コミュニケーションの難しさを実感された方も多かったのではないかと思います。そんな時勢のなかで、私たちは「これからのオフィス」がどういう場になっていくのかを考えていく必要があるわけです。

今後、アフターコロナを迎えても、コロナ禍以前のようにみんなが出社して、顔を突き合わせて仕事をするという形には戻らないでしょう。これからのオフィスは、「出会いが生まれる場」、新しいものを創造する場として機能していく思っています。そんな新たなオフィスに対する価値観が反映された空間を提案しています。

「商環境事業」も、店舗に陳列棚や冷凍冷蔵ショーケースなどを納めるだけでなく、空間設計・内装を含めたトータルの店舗づくりを提案しています。

「物流システム事業」は自動倉庫や搬送・仕分け機器などでロジスティックスの合理化を提案する事業です。

物流業界は周知の通り労働力不足が深刻で、自動化が非常に求められています。当社が提案するシステムは、倉庫内で品物を自動で搬送・仕分けするシステムです。さらにピッキングロボットの開発行っています。ものを掴むという動作は一見簡単そうに見えますが、形や硬さの違うものを認識して、うまくピッキングするには高度な技術が必要です。このようなロボットの開発にも積極的に取り組んでいます。

「物流システム事業」で開発中のピッキングロボット

大量の定年退職を見据え若手を積極採用 DX化にもつなげたい

――御社の事業を推進していく上で、必要としている人材とはどのような人でしょうか。

専門的な人財(注:オカムラ社内では人材を人財と表記)も必要ですが、それだけでは経営が成り立ちません。多様な人財がこれからは必要だと考えています。ここ数年は新卒採用に力を入れています。

多くの企業が同じ傾向だと思いますが、当社では50歳から55歳くらいのバブル期に入社した社員が非常に多く、あと10年もすると大量に退職することになります。それに備えて若い人財の採用を増やしている、ということもあります

特に「こういう人がほしい」とあえていわせていただけるなら、いわゆるデジタル人、DX人といわれる人たちですね。また、グローバル化を推し進めるべく、語学力のある人も積極的に採用しています。

ただ、どこの企業も同じようなニーズがあるわけですから、採用するのは難しいだろうと理解していますので、同時に社内育成強化しているというところです。

――社内の育成に関しては、具体的にどのようなプログラムに取り組まれているのでしょうか。

幅広いテーマのなかから自由に選択して学べる「e-leaning」や企業内大学「オカムラユニバーシティ」、通信教育の受講をサポートしています。そのほかにも、30代社員を中心にした「次世代リーダー研修」、いずれは海外で活躍したいと考える社員向けの「グローバル人財育成制度」など、学びに関する制度が充実しています。

また、DX人財育成ついては2021年から新たな取り組みが始まりました。全社員を対象に公募をしてDXに興味関心のある人に集まってもらい、デジタル化に関連する勉強をしてもらうとともに、個人もしくはグループで実際に社内の仕組みを変える提案を作り上げるというものです。

この取り組みには当社の幅広い部署から人が集結しているため、社員には普段担当する仕事とは関係のない分野の人との関わりを持つ機会になり、さまざまな相乗効果も期待されています。

取り組みを初めて丸1年となり、それぞれが作り上げたアイデアを役員にプレゼンする発表会を行い、提案が通ればそれは実現に向けて動き出すという段階に入ります。今後の展開を非常に楽しみにしています。

東京・港区赤坂にあるラボオフィス

知名度の無さが目下の課題 インターンシップを通じた地道な採用活動に注力

――人材の採用実態について、人事部長の中條さんにお聞きします。先ほど佐藤さんから「新卒採用に力を入れている」というお話もありましたが、採用活動の実情はどのような状況でしょうか。

(中條さん)今年の4月は大卒100名、高卒47名、計147名が入社しました。その内訳の多くは営業職を含めた一般職です。先にお話していたとおり学びの制度が充実していますので、DXをはじめとした専門知識やスキルは入社後に取得してもらえたらいいと考え、広く総合的な人財に入社していただいています。

そのほか、空間デザインに対応できるデザイナーや設計などの技術者などですね。中途採用も並行して実施していまして、中途では主に専門的な技術や知識のある方の採用を行っています。

――採用活動のなかで特にご苦労されたのはどういった部分でしょうか。

やはり、知名度が低いことですね。当社はB to Bのビジネスをやっている企業ですので、CMをしているわけでもないですし、広告を出すのは新聞や業界誌などで一般的な知名度には自信がなく、実際に学生の認知度は非常に低かったです。

ですが2018年に社名を変更し、モノ売りからソリューションへと事業の中心が移行してきたこと、また働き方改革への積極的な取り組みによって徐々に認知してもらえるようになったようで、だいぶ興味を持ってもらえるようになったなという実感があります。

なにより「オカムラならこんな仕事ができる」ということを理解してもらうことが一番だと考え、現在は新卒者に向けたインターンシップで、実際に働いているような体験ができるようなメニューをたくさん用意して対応しています。

それによって専門技術を持つ学生にも、会社の表面的なイメージではわからないような現場でどのような技術が使われているのか、どのような仕事が行われているのかを体験していただけているので、かなり理解が深まっているかなと思います。

参加した学生からは、他社では会社説明に近い内容が多いものの、当社の場合実際に社員と触れ合うことができたり、課題を与えたりもするので、入社した場合にどうなるのかをリアルに体験できた、という声をいただきます。また、会社の雰囲気や社風を理解し、それを当社のよさだと感じてくれて入社に繋がった、という方もいました。

現在、大卒の新卒入社のうち6割がインターンシップに参加した方です。毎年インターンシップ経由で入社につながる方が多くなっているので、一定の効果が出ていると思っています。

――最後に、採用戦略の展望をお聞かせください。

今年度も、新卒や中途の採用を積極的に実施していこうということで、さまざまな施策・企画を打ち立てているところです。日々環境の変化が大きく、お客様の求める「空間」もどんどん変わっていっています。そうした変化に柔軟に対応できる人を、数多く採用していきたいと考えています。

【プロフィール】

佐藤 喜一(さとう・よしかず)

株式会社オカムラ 常務執行役員 コーポレート担当(人事部、人財開発部、お客様相談室、サステナビリティ推進部、シェアードサービス部、秘書室)

1982年岡村製作所(現・オカムラ)入社、経営管理部を経て、1989年岡村製作所労働組合出向、1999年中央執行委員長、2009年岡村製作所に復帰、総務部長、人事部長を経て2019年執行役員就任、2020年5月執行役員 コーポレート担当(人事部、人財開発部、お客様相談室、サステナビリティ推進部)、2021年4月上席執行役員 コーポレート担当、2022年4月より現職

中條 敦(なかじょう・あつし)

株式会社オカムラ 人事部長

1997年岡村製作所(現・オカムラ)入社、情報システム部、オフィス環境事業のスタッフを経て、2009年岡村製作所労働組合出向、2013年岡村製作所人事部に復帰、人財開発、人事制度企画、人財採用を経て、2020年より現職

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