コンサルだからこそ、あえて夢を語りたい。自らの可能性に挑む元SIerの軌跡と未来
2022年6月現在、コンサルタントとして関西事業部で総合商社向け人事システムのプロジェクトマネジメント支援を担当している畑 浩之。2020年にSIerからの転職を果たしました。大胆な転向の背景にあったものとは──。これまでの歩みと、自身が理想とする姿について語ります。【talentbookで読む】
開発者の出す答えが正解とは限らない。意見を擦り合わせ、最適解を探る
総勢100人以上が関わる大規模なプロジェクトに携わっている畑。システム開発会社での経験を買われ、チーム内ではサブリーダーという重要なポジションを務めています。
畑 「現在のプロジェクトは、アプリケーションの業務機能の開発、基盤のインフラ開発、データやシステム移行という、大きく三つの領域に分かれていて、そのうち三つ目の領域で、お客様の課題解決を支援させていただいています。システム開発に関わる大型プロジェクトに初めて参画するチームリーダーと、システム開発会社出身の私とで、いわばツートップの形でプロジェクトを進めているところです」
さまざまな意見の中から双方が納得できる着地点を探し出すことを大切にしているという畑。仕事をする上で心がけているのは、相手が誰であれ、言われたことを鵜呑みにしないことだと話します。
畑 「社内のメンバーはもちろん、お客様に対してもそうですが、『こうだよね』『こうしたい』といわれたことに対して『本当にそれでいいのか』と自分の中で一度咀嚼した上で結論を出すようにしています。やっぱり『違うな』と思ったときは、むやみに否定するのではなく、きちんと理由をつけて説明できるよう準備することを意識していますね」
こうした行動原理は前職で形成されたものだといいます。畑は2003年、新卒で大手SIerに入社。開発部門を経て、3年目で年金事務サービス会社の情報システム部門に出向になりました。
畑 「その会社がまさに飛躍しようとしている時期だったので、システム開発計画の立ち上げに関わることができたんです。上司と先輩と私の3人体制だったんですが、何から手をつけていいかわからない状態で、まずは『現場で働いている方が何しているのかを見てみよう』というところから始めることになりました」
そこで畑が学んだのは、「あくまでシステムの使い手となる現場の想いを大切にすべき」という考え方でした。
畑 「たとえば、事務サービスをIT化すれば、作業が効率化され、現場の負担は軽減されます。ところが、その会社のケースでは、現場で働いている人たちのあいだで『職を失ってしまうのでは?』という懸念が生じ、社内からの理解が得られないという問題が発生していました。私たちシステム開発者が『良い』と思うことに、必ずしも全員が賛同するわけではないということに、そこで初めて気づくことができたんです」
“常識”を疑い、お客様にとっての価値を最大化するのがコンサルの存在意義
7年間の出向の後、畑は官公庁のシステム刷新という大規模プロジェクトの初期メンバーに抜擢されます。そこで初めて、ITコンサルタントとしての仕事を任されますが、ここで大きな壁にぶつかることになったのです。
畑 「私にITコンサルとしての経験が不足していたことに加えて、官公庁という特性上、決断までに時間がかかるケースがありました。いろいろご提案するのですが、なかなか首を縦に振っていただけないんです。非常に悩みの多い4年間でした」
突き詰めて考える中で、やはりお客様の立場に立って考えることの大切さを痛感したと畑はいいます。
畑 「官公庁の方々は、税金を使って仕事をされているので、使途についての説明責任があるという意識をお持ちなんです。話し合いを重ねる中で、『上の人を説得するのは簡単だけれど、広く世の中に対して、あらゆる角度から事業の正当性について説明できるよう準備する必要があるから慎重にならざるをえない』と教えていただきました」
同時に、自分が業界内の常識にとらわれていたという気づきがあったという畑。
畑 「それまでは、あうんの呼吸で『これは常識だよね』と、擦り合わせをしなくても、なんとなく進められたところがありました。ところが、まったく新しい業種・業界の方々とお仕事させていただいたことで、過去の成功体験や自分たちの常識を頼りにお客様と接するやり方に限界があることがわかったんです。今後さまざまな業界のお客様とお仕事する上で、留意しなければいけない点だと思っています」
また、この官公庁のプロジェクトには、他企業のITコンサルタントもメンバーとして参画していました。畑がリーダーとして参加したとある会議でかけられた厳しい言葉が、コンサルタントとしての原点になったと振り返ります。
畑 「打ち合わせの中で、私が一言も発しなかったことがありました。終了後、とある外資系コンサルの方に呼び止められて『さっきの打ち合わせでの畑さんのバリューって何ですか?何もいわないんだったら、いる意味なかったですよね』と詰められたんです。
その直後はショックを受けましたが、おかげでITコンサルタントの存在意義に気づくことができたと思っています。システム開発者にとっては、最終的な完成度が価値になりますが、コンサルティングの価値は、限られた時間でいかにお客様にプラスになるものを持ち帰ってもらえるか。その価値を最大化するために、たとえ1時間の会議であっても、徹底的に準備することの大切さを教えてもらいました」
40歳で転職を決意。この会社でなら、自分のやりたいことができる
ITコンサルタントという仕事にともなう責任の重みを痛感しつつも、大きなやりがいを感じた畑。こうしたプロジェクトに携わるうちに、“やりたいこと”の軸がだんだんと変化していることに気づきます。
畑 「改めて自分が本当は何をしたいのか考えたとき、先の官公庁のプロジェクトのように、お客様とひとつのゴールに向かって一緒に進めていくところにやりがいを感じていると気づいたんです。官公庁のプロジェクトが継続契約となった際、お客様から『畑さんにもう少し手伝ってほしい』と指名いただいて。苦い経験もありましたが、そうやって頼ってもらえることも手伝って、コンサルタントという仕事に興味があると気づいたんです」
ITコンサルタントとしての道を進むことを決心した畑は、転職エージェントからの紹介でエル・ティー・エスと出会いました。お客様に徹底的に寄り添いながら支援するというそのスタイルに、自分との親和性を感じたといいます。また、“可能性を解き放つ”というミッションに象徴されるような、挑戦できる社風にも惹かれました。
畑 「転職当時の年齢は40歳でしたが、コンサルタントとして自分はまだ1年生だと思っていましたし、この歳からでも何か新しいことにチャレンジしたいと考えていました。ところが、大手のコンサルティングファームの場合、自分のキャリアに一番合うポジションを与えてくださろうとするんです。それはそれで非常にありがたいんですが、せっかく転職するのであれば、自分がやりたいことを実現できる会社を選びたい。エル・ティー・エスならそれができるんじゃないかと直感しました」
また、面接にあたった社員から好印象を受けたことも、入社の決め手になったという畑。
畑 「とにかく“エル・ティー・エス愛”をすごく感じたんです。採用活動でも業務的なところがまるでなく、会社やお客様のために、こちらをしっかり見極めたいという姿勢が感じられました。この会社であれば自分がやりたいことが実現できる、そしてこの会社で実現したいと感じ、入社を決意しました」
あえて夢を語り、それを実現するコンサルタントを目指して
2020年にエル・ティー・エスに入社し、製造業の働き方改革、“Smart Factory プロジェクト”支援に取り組んだ畑。現場でお客様と膝をつき合わせながらコミュニケーションを重ねていく中で、プロジェクトの進行を阻む原因を見つけ出します。
畑 「製造業は機械を使ってモノを作るわけですが、そのための条件を機械に入力しないといけません。機械の種類はさまざまですから、機械の数だけ条件を変える必要があります。その作業のための知識を共有しようというプロジェクトだったんです。
ところが、大きくふたつの課題がありました。ひとつはプロジェクトの推進メンバーの中に、製造技術に精通している方がおらず、要件定義が進んでいなかったこと。もうひとつが、現場の製造部門と、スマート化を進める技術部門との連携がうまくいかず、指示の差し戻しが頻発していたことです。従来の仕組みが常態化し、内部からはメスを入れづらくなっていました」
状況の改善には大きな痛みをともなったといいます。
畑 「あいだに入って軋轢を少しずつ解消していきました。矢面に立つことにはなりましたが、結果的にプロジェクト実現のための架け橋のような存在になれたのかなと思っています。同時に、ナレッジを蓄積していくことの難しさを思い知ることに。良い経験になったと思っています」
2022年6月現在、入社2年目を迎える畑。ITを駆使し、お客様の課題により良い解決策を提案できるようになりたいというのが今の目標です。
畑 「『変わらなきゃいけないけど、どう変わればいいかわからない』という段階からご支援ができるようになりたいですね。既存のお客様に対しては『畑に相談したら、変わるきっかけが掴めるんじゃないか』と思っていただけるように実績を積んでいきたいです。また新しいお客様に対しては、単なるシステム化ではなく、お客様の会社の課題解決につながるような新しいご提案ができるよう努めていきたいと思っています」
そう思えるのは、会社に社員の挑戦を後押しする雰囲気があるから。畑は次のようにいいます。
畑 「今はまだコンサルタントとしての基礎体力をつけている段階ですが、今後、自分のやりたいことをサポートしてくれる風土がエル・ティー・エスにはあるとを感じています。自分がやりたいことを会社や関西事業部のメンバーが背中を押してくれる、願ってもない環境ですね」
お客様の本当の課題を見極め、解決のための提案をする。それを実現するのは簡単なことではありませんが、畑はコンサルタントだからこそ、あえて「夢を語りたい」と強調します。
畑 「コンサルティングは、夢を語るだけで実現性がないといわれることもありますが、私は夢を語りたくて。ただ、それに対してのエビデンスや実現性はきちんと示した上でご提案ができるようなコンサルタントになれたらと考えています」
システム開発者としてのキャリアを強みに、プロジェクトの経験を重ねるごとに自身の価値を更新し続けている畑。自分を高めるのに最良の場所を得て、自分のそしてお客様の価値を最大化するためにこれからどんな夢を描き、叶えていくのか。目が離せません。