ICTで教育現場にさらなる「躍動」を。長年の夢を叶えたエンジニアがめざす地域創生 | キャリコネニュース
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ICTで教育現場にさらなる「躍動」を。長年の夢を叶えたエンジニアがめざす地域創生

AKKODiSコンサルティング株式会社 地方創生部の古家 憂二

Adecco Groupにおいて、エンドツーエンド・コンサルティングサービスを提供するAKKODiSコンサルティング株式会社のエンジニア古家 憂二の職場は、静岡県南伊豆町の小中学校。ICTを活用して教育現場での支援を行う古家は、教育に関わる仕事をするという長年の夢が叶い、毎日「躍動」していると笑みを浮かべます。【talentbookで読む】

初となる試み。夏休みの「デジタル登校日」は先生がICT活用に目覚めて自ら企画

現在、古家はAdecco Group JapanのAKKODiSコンサルティング株式会社 地方創生部に所属。「Social Innovation Partners」プログラムの一環として2022年4月、古家は静岡県南伊豆町に着任しました。

古家 「2019年にスタートした『Social Innovation Partners』プログラムは、高いコンサルティング力と技術力を備えたエンジニア社員が地方自治体に赴き、地域住民や自治体職員の方々と対話しながら、地域の課題を解決へ導くという取り組みです。

地方創生を人財育成の場として捉えたプロジェクトであり、南伊豆町を含む20の自治体が参加。現在、120人超の社員が全国の自治体と連携して各地域での課題解決に取り組んでいます」

古家は2022年4月に静岡県南伊豆町初となる「地域活性化起業人」の協定が締結されたことにより、同町に着任することになりました。現在は、月の半分を南伊豆で過ごしています。

古家 「南伊豆町が推進するGIGAスクール構想の実現に向けて、ICTを推進する教育アドバイザーとして、町内の5つの小中学校に常駐し、先生たちの業務の負担軽減や教育の質の向上、デジタル人財の育成に関する業務、地域と連携した教育推進体制の強化を担っています。

先生たちからの質問にいつでも対応できる態勢を整えているほか、ICTを活用した授業作りを支援しています。GIGAスクール構想の一環として、学校では一人一台パソコンやタブレットなどの端末が配布されますが、生徒だけでなく教員の皆さんが使いこなせるようになることで、教育の場を通じてより良い町づくりができるように、ITのプロフェッショナルとして支援を行っています」

南伊豆町の人口は現在、8,000人を切っており、過疎化が進む町の教育の課題は山積しています。

古家 「南伊豆町の学校は生徒数が少ないため、教員の人数もそれに応じて他の地域と比較して少なく、教科担任が全学年に対して1人しかいない場合もあります。学校内で同じ教科を受け持つ先生が複数人いればできる、授業の進め方などについて相談し合えるような状況がほとんどありません。さらには、生徒同士の関係も小学校から固定化しています。

そこで、外とつながるためにICTが活用できるわけです。チャットツールを使って、町内の先生同士がつながる取り組みを推進しています」

ICTの端末の配布自体を目的とするのではなく、対話を通じて、学校や地域が目指す理想の実現に向けたICTの使い方、スキルや判断力を先生方に身につけてもらうことが目標です。

古家 「夏休み中に生徒間交流をするための『デジタル登校日』を設け、休み中でも児童生徒との関係性を保つ試みを行いました。これは先生たちが、『夏休み明けの登校渋りを改善したい』という想いのもと企画したものなんです。最近ではこういった先生からの未来志向の問い合わせが増えています」

嘘を許してくれた先生の対応に感動。教育とエンジニアリングの2つの強みを生かす教育

地方創生部の同僚と一緒に

古家は2016年、AKKODiS(旧VSN)にエンジニアとして入社。大学では物理学を専攻し、教員免許を持つ古家は、小学4年生のころから教育に関わる仕事に憧れを抱いていたと言います。

古家 「小学4年生のときに、転校をしたのですが、転校を目前にしたある日、担任の先生から『明日は古家くんのための日だよ』と言われた私は、なぜだか『明日は休みだ』と思いこみ、学校を欠席してしまいました。実はその日、クラスメイトがサプライズでお別れ会を計画してくれていたんです。

休んだ翌日、私は先生に『昨日は風邪をひいてしまって』と嘘をついてしまいました。そのとき、担任の先生はきっと嘘だと気づいていたとは思うのですが、快く許してくれて。そのときの先生の寛容さに感動したことが、教職をめざしたいと思うきっかけでした」

そんな古家が教師ではなくエンジニアの道を選んだ理由は、大学時代にありました。

古家 「就職を考えたとき、“教師=教育”、つまり教育は必ずしも教師だけが行うものではないと考えるようになりました。そこで、教育支援を行う仕事をしようと決意したのです。前職では、学校向けのITインフラ整備の仕事をしており、さまざまな学校を回っていました」

AKKODiSへの転職はエンジニアとしてのスキルを高めるとともに、課題解決の重要性を感じ、自ら課題解決に取り組んでいきたい、という想いからでした。

古家 「入社当初は自動運転の開発に携わる部署に配属されました。課題解決の能力を最大限高めるための最初の段階だ、と捉えて業務に取り組んでいました。その後は、エンジニアとしての経験を積み重ね、配属先で開発環境などの改善提案を積極的に行うなど、課題解決力を高めることに邁進しました」

そして2021年、社内公募に自ら手を挙げて地方創生部に異動します。

古家 「プロジェクトには、教育に関わる機会があると信じてチャレンジしました。まさか本当に教育現場に行けるとは思っていなかったのですが。異動の際にも周囲に自分の夢を話していたのがよかったのかもしれません。言葉に出すと実現するものだなあと実感しています。20年来の夢が実現し、毎日が楽しくて仕方ありません」

東京と南伊豆、場所に縛られない働き方を実現。自分の存在が地域の活性化につながる

タブレットを取り入れた授業の様子

古家は現在、月の半分は南伊豆町で勤務しています。東京と南伊豆町を往復する生活はどのような変化をもたらしたのでしょうか。

古家 「東京から南伊豆町まで、特急で2時間ちょっと。南伊豆町内で、東京の仕事をリモートで行うことも少なくありません。場所に縛られない形で仕事ができています」

古家の職場は南伊豆町では学校、東京では民間企業です。タイムスケジュールや働く環境、一緒に仕事をする人や業務内容などもまったく異なります。

古家 「東京での仕事は、他の企業との提携や、メタバースの企画、プログラミング事業の設計や実装など。ビジネスと地方創生の仕事では、課題解決も質的に異なります。利益優先のビジネス思考を地域創生に持ち込んでしまうと、関心を持ってもらえず見向きもされません」

国の「地域活性化起業人」制度は最長3年と規定されていますが、古家は南伊豆町の課題解決のため、町に断られるまで続けたい、と考えています。

古家 「南伊豆町には、高校が4校ありますが、うち3校は定員割れの状態です。進学先として選択できる学校が限られてしまうことから生徒は競争意識が少なく、結果的に学力が向上しづらい状況にあります。

また、町には塾がないので、親御さんが車で送迎して隣町にある塾へ通っているといった現状も。こうしたことから、学校や地域、保護者も含めて、地域一体となって、みんなで協力しながら学力を高めていこう、という話が出ています」

古家は、将来的に、地域の人が持続可能な状態で「自走」できる環境を整備することをめざしています。

古家「地域の皆さんには、幸せ、健康、子育てや環境など、人それぞれに多様な目的やビジョンがあります。ですから、地域の皆さんと一緒にビジョンの達成をめざしながら課題解決をしていくことが求められます」

古家は学校全体での成長を実感しています。

古家「なんといっても、先生たちが前向きになっていると感じます。職員室に教育アドバイザーがいることで、何かあったら相談すればいい、という安心感が生まれているのだと思います。令和4年10月に行ったアンケートでは、9割以上の先生が課題意識や視野が広くなるなど、意識変容につながったと答え、行動変容につながったとする回答が約8割となりました。

また、生徒からも『タブレットの授業が増えて楽しい』、『先生がいろんな授業の工夫をしてくれるようになって楽しい』などの回答も得られています。私の存在が地域の活性化につながるのだ、と確信できています。人財育成の観点から、我々も地域の皆さんもともに学んでいくのが理想的な姿です」

教育は派生していく。ICTの導入で先生が前向きになり、学校や町を変える原動力となる

先生たちと町の課題について整理する活動も開催

古家は2022年6月、1カ月間の育児休業を取得しました。

古家「社内では、男性の育休に関するセミナーや説明会が実施されているほか、役員が積極的に育休を取得するなど、会社全体で男性の育休取得を支援しています。家事や育児を分担することで妻の負担を減らすことができればと考え、育休を取得することにしたときには、上司や同僚は快く送り出してくれました」

育休が明け、古家が職員室に戻ると、思わぬ事態が起きていました。

古家「職員室の壁から大きな黒板が取り除かれ、大型モニターに変わっていたのです。モニターの導入を主導していたのは、ICTの活用に苦手意識を持っていた先生でした。後日、『学校ってこんなに変わるんですね。毎日が楽しいです』と話してくれました。小さな成功体験の積み重ねが、組織を変えていくのだと実感しました」

さらに、育児を経験した古家にとっても、新たな発見がありました。

古家 「育児にはロジカルシンキングや課題解決の手法は通用しません。決まった育児の方法があるわけではなく、自分のやり方でやればいい、という開かれた環境がある。自分たちなりのやり方で妻と一緒に試行錯誤しながら育児に取り組むことは、今まで認識していなかった自分自身の能力に気づくきっかけになりました」

自身の能力をビジネス的な視点から認知するのではなく、まったく違う視点から捉えることができたことで、視野が一気に広がったと分析する古家。今後のビジョンとして古家は「躍動と幸せの共有」を挙げています。

古家 「これからも家族を大切にしていきたいですし、自分の教育にかける夢も諦めたくありません。自身が躍動していく中で、家族や周囲の人々をはじめ、みんなが幸せになれる方法を模索し歩んでいます」

活動対象は現在、小中学校だけですが、町全体の教育という観点では、幼稚園、保育園、社会教育など、まだまだできることは限りなくあります。常に学びながら、さまざまなことに取り組んでいきたいと語る古家。

古家 「現在は、町の課題を先生たちと整理しています。観光産業への生徒たちの社会見学を通じ、商店街と学校の連携も始まりました。対話は非常に重要です。対話することによって、相手の考えや能力も生かすことができる。その先に課題解決があると考えています」

教育は派生していく──古家が南伊豆町で確かな存在を示すことで、地域も躍動し始めています。地域全体を巻き込んで教育の新しいカタチを推進していく古家の活躍から、今後も目が離せません。

※ 記載内容は2023年5月時点のものです

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