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まっさらな状態からでもいい。自信がないまま飛び込んだ設計という仕事が彩りを与える日々

クルマのステアリングスイッチの設計グループでアシスタントリーダーを務める相澤 郁。入社前は仕事に多くを期待していなかったという相澤ですが、知識がまったくなかった設計という仕事を通じて新たな自分に出会い、人生を楽しんでいる姿をお伝えします。【talentbookで読む】

仕事はお金を稼ぐ場所と割り切っていた昔、お客様と喜びを分かち合う今

私は高校卒業後すぐアルプスアルパインに入社しました。入社してすぐのころは働くということに対してあまり前向きに考えていませんでした。

家庭をもって生活できるくらいのお金を稼げて、それなりに仕事とプライベートを両立できればよく、職場の人間関係にもまったく期待はしておらず、ドライな関係を築くんだろうと漠然と考えていました。

学生時代は学校と家庭という狭いコミュニティの中だけで生きていてあまりおもしろく感じていなかったので、社会人になってもその延長だろうなと決めつけていたのかもしれません。大卒の人に比べれば未来に天井もあるだろうと思っていたこともその要因の一つです。

そんな想いを抱えたまま、入社後は設計アシスタントに配属され、指示された通りに図面を直すことや、サンプル品を操作して測定データを取るなど、設計の人たちのお手伝いのようなことをしていました。

今振り返ると受け身の姿勢で仕事をしていたように思います。高校では普通科だったため技術の専門知識があるわけでもなく、仕事は生きるためと割り切っていたため、与えられた仕事にとくに不満はなく、ミスなく目の前の業務をこなすことだけに集中していました。

転機は入社後6年目のときに訪れました。

当時の上司から、「設計の仕事に興味はないか?」と聞かれました。最初は嫌だと答えました(笑)。周りの設計者たちがやっていることが難しそうで自分ができるか自信がなかったからです。

しかしその後再び打診され、「今までのアシスタント業務をさらに発展させて設計の仕事をやってほしい。厳しい言い方になるけれど……これからもずっと今と同じ仕事をやっていくことはできないよ」と言われハッとしました。

将来への漠然とした不安な気持ちと、これは成長のチャンスなのかもしれないという前向きな気持ちが、設計という知らない世界へ飛び込む勇気をくれたのです。

それから8年。始める前は自信がありませんでしたが、今はきちんと設計者として働けています。現在はあるクルマのステアリングスイッチの設計チームのアシスタントリーダーを務めています。

私たちが設計と呼んでいるのは、お客様からの要望を受けそれを形にしていく仕事です。要望は、デザインやボタンのフィーリング、耐久性、同じクルマに載る他のパーツとのバランス、シンボルマークの光具合までと多岐に渡り、それに合うように製品の形状や構造、使用する部品や素材などを検討します。

設計を始めたころは、たとえば照光の光具合やラバーの厚みや使用するスイッチなど、個々の仕様だけを考えていたのですが、アシスタントリーダーとなった今は視点が上がり製品全体を見るようになりました。デザイン性を重視すると耐久性が落ちてしまったり、コストが合わなかったりするので、バランスを見ながら仕様を検討していきます。

背反する要素も多く悩むことも多いのですが、仕様を検討する上で最も優先しているのは安全性です。命が危険にさらされないこと、ケガをしないこと。関係者やお客様に相談しながら安全性に関わる条件は死守しています。

設計を始めてから製品が市場に出るまでは、長い時間を要します。その間、社内関係者だけでなく、お客様であるクルマメーカーの担当者とも何度も直接議論します。思い通りに進められず、つらいと感じたことも一度や二度ではありません。

それでも、自分たちが設計した製品が載ったクルマが市場に出るときに全ては報われます。そのクルマの紹介サイトを見たり、街中で走っているところを見たりすると嬉しくてにやけてしまいます。一緒に苦労してきた社内の関係者やクルマメーカーの担当者と喜びを共有するときが最高に幸せな瞬間です。

今まで開発に携わったクルマは10車種以上になります。つまり、10回以上最高の瞬間を味わっているということですね。

今でこそ喜びを共有できるくらいお客様との関係は良好ですが、初めのころはお客様からの問い合わせへのレスポンスが悪く、不快な想いをさせてしまって上司と謝りに行ったことがあります。自分の知識不足からすぐに回答ができず、忙しそうにしている上司に聞くのも気が引けてうまく立ち回れず、結果としてお客様へのレスポンスが遅れてしまったんです。

当時は目の前のこと、目の前の人しか見えていませんでした。今では社内の人脈も広がったのでわからないことはすぐに関係者に聞くことができ、問い合わせにすぐに答えられるようになりました。

どうしても自分一人の引き出しには限界がありますので、一人で抱えていてもしょうがありません。人の引き出しを借りることは仕事をする上で大切なことだと思います。

人間関係を大切にした先にあったのは、学生時代よりも楽しい日々

設計者となり、仕事を通して社内外の多くの人と関わっていく中で、入社当時に抱いていた仕事と仕事上の人間関係に対して多くを求めないという私の考え方はどんどん変わっていきました。

人に喜んでもらえることが嬉しい。人と話し、知識が増えていくことが楽しい。お客様と共通の目標に向かって議論し歩み寄り新しいモノを考えることがおもしろい。仕事上の人間関係はドライでいいと思っていたのに、周りの人たちとの関係が自分を変え、人生に彩りを与えてくれました。

学生時代より今の方がずっと楽しいです。当時から今のようなオープンな気持ちを持てていれば、もっと視野が広がっていたかもしれないと少し後悔しています。こんなに人生を楽しめているのは、8年前、不安を抱えながらも設計という仕事に思い切って飛び込んだからだと思います。

入社時に設計の知識はまったくなくかった。それでも、周りの人たちから多くのことを学び、刺激を受けて、いろんなことに気づかされて、今の自分があります。だから、もし設計をやってみたいけれど経験とか知識がなくて悩んでいる人がいるとしたら、「まっさらでもいいかもしれないよ」と伝えたいと思います。

きっと、学校よりも会社で学ぶことの方が圧倒的に多いだろうし、固定観念を持っているよりも人の話を素直に聞く姿勢があれば、はじめはまっさらでも設計という仕事を楽しんでいけるようになると思います。

私が本格的に設計の業務を始めたのは24歳のころ。大学院生が入社する年齢ですよね。私はその年齢の時にゼロから始めてもやれているので、知識は入社してから身につければ十分間に合うと思います。

女性管理職の先輩と話す中で生まれてきた新たな選択肢

今後の自分のキャリアを考える中で、周りからの勧めもあって管理職という選択肢も浮かぶようになってきました。もともと、私はサポート側のポジションが向いていると思っていたのですが、最近複数の他社の女性役員や管理職の方とお話する機会があり、多くの女性管理職の方が口をそろえて「上に行けば行くほどおもしろい」と言うので興味が湧いてきました。

とくに、印象が強かったのが「上司が知っているというのは、部下にとっては不幸」という言葉です。上司というのは、すべてをわかっていて自分が教えたり指示をしたりする存在である必要はなく、むしろ部下の方が知っていることが多いから、部下をプロとして敬いながら上司がサポートするという姿勢が望ましいということです。

私も、過去を振り返ってみると、上司から丁寧に教えられるときよりも「やってみな」と振られたときの方が自分の成長につながったように感じます。そういう自然体のままのスタンスで良いなら、私も管理職を務められるのかもしれないと思うようになりました。

もし管理職になるのなら、部下に頼るところは頼って、わからないことは聞いて勉強する。会社として何が一番大切かということを考えながらミッションをこなせるようになりたいと思っています。

もちろん、管理職というのは一つの選択肢でしかないので、これからじっくり自分のキャリアと向き合っていきます。

新たな趣味から広がる世界と可能性

▲ふくしまチェロ・コンサートにて

最近、自分の年齢を意識したときに人生は思ったよりも短いのではないかと思うことが増えてきました。「もっと楽しまなくてはいけない」。残りの人生の中で一番若い今のうちに何か始めようと思い、2年ほど前からチェロを始めました。

中学時代に吹奏楽部だったこともあり、ずっと楽器をやりたいと思っていたのですが、たまたま職場の先輩がチェロを習っているということで私も一緒に習い始めたのがきっかけです。最初は楽器をレンタルしながら練習していたのですが、ついに自分の楽器を購入し、さらにやる気が増しています。

今年5月、日本中から老若男女500人のチェリストが福島に集結する「2023ふくしまチェロ・コンサート」が開催され、私もそこに参加してきました。500人が12のパートに分かれて合奏するコンサートは心踊る経験で、練習期間も含めて人脈も広がりました。プロチェリストや、定年後からチェロを始めたという年配の方とも交流ができ、今までとは違う人間関係を築いています。趣味から広がる知識や人脈もおもしろいです。

今は、仕事も趣味も充実していますが、さらに人生を楽しむためにこれからも知らない世界に積極的に飛び込んで、たくさんの人とつながりを深めていきたいです。何かを始めるのに遅すぎることなんてないと設計の仕事とチェロが教えてくれたので、この先の人生にもたくさんの可能性を感じています。

※ 記載内容は2023年7月時点のものです

アルプスアルパイン株式会社

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