「障害は人生を暗くするものではない」ありのままを受け止める前に進むレゲエのマインドを伝えたい | キャリコネニュース
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「障害は人生を暗くするものではない」ありのままを受け止める前に進むレゲエのマインドを伝えたい

レゲエミュージシャンで動画配信者としても活躍しているしゅがーあきら(sugar)さんは2020年に首の骨を骨折し頸髄を損傷、体を自由に動かせない障害を負いました。受傷直後に医師から宣告されたのは「生涯寝たきり」。しかしsugarさんはリハビリによって機能回復を実現し、今もなお機能回復に向けたリハビリを重ねています。

一時は「絶望」と言っても過言ではない状況にあったにも関わらず、前向きな心を持ち続けることができたというsugarさん。困難にぶつかっても動じない心は、いかにして作られてきたのか。そのヒントは「レゲエ」にありました。

頸髄損傷で「生涯寝たきり」を宣告された

 

「本当に突然のことだったんですよ。家の廊下で気を失って転倒して、気がついた時にはもうすでに首から下が動かせなくて、触れられても感覚がない、という状態でしたね」

sugarさんが頸髄損傷という大怪我を負ったのは2020年のゴールデンウィーク中のことでした。転倒時に首の骨を骨折し、全身が麻痺。さらに、治療のための入院中に肺炎を起こして喉元から気管に管を通し、一時は声も出せない状態になったといいます。

レゲエのボーカルとして活動していたsugarさんにとって、体が不自由になった上に声も出せないという事態は、まさに「絶望」という他ない状況です。しかし、sugarさんはそんな状況下においても、前向きでポジティブなメンタルを持ち続けていました。

「怪我をして体が動かなくなったことで何が最悪だったかって、(受傷した当時)ゴールデンウィーク明けにいく予定だったワーキングホリデーに行けなくなったことでしたよ。もう、本当に楽しみにしていたから…それが結構ショックでした。

そのときの病院の医師からは『生涯寝たきり』と言われましたが、再生医療を受けて少し動かせるところが増えて、さらにリハビリを重ねていくうちにできることも増えています。

とにかく、やれることをやるしかないなって。今思うと、生きてるだけでも儲けものなんです。生きてるんだったら、やるしかないですよ」

「できることをやるしかない」。前向きで肩肘を張らないレゲエのマインド「ラガ」

そう話すsugarさんは、現実を受け止めることについて無理をしている様子はありません。先の人生を悲観してしまう状況にも関わらず、自分自身を奮い立たせることができるのは、どうしてなのでしょうか。

「レゲエって音楽は、常に前向きなんですよね。例えばロックミュージシャンだと「ロック魂」「ロックな生き様」とかがあると思うんですが、似たようなものでレゲエには「ラガ」っていう音楽の持つマインドがあるんです。

自分はどれだけ「ラガ」に生きられるか、っていうのが人生のテーマにあるんですね。どう動くことがラガなのかなって考えていたりするんです。

体が不自由になってしまったことは当然ショックですよ。くよくよする時間だってもちろん大事で、考えたり向き合う事は無駄なわけではないんです。ただ、自分は向き合っているより動いていないと落ち着かないタイプってだけです」

レゲエが持つポジティブなマインドは、物事が思うように運ばない時の心の持ちようにも大きく影響しているといいます。

「とりあえず今できるのは何かといったら、リハビリだと。ただ頭を起こすという動作だけでも大変だったんですが、それが明日明後日につながるんだったら今それをやるっきゃない。

リハビリしていく中では、やっぱりどうしたって動かない、出来ないことがあるからムカつくこともいっぱいあります。でも焦っていても仕方ない、ムカついたところで出来るようになるわけでもないですから。

ただ、こういうことって普通に(健常な体で)生きていたってそうじゃないですか。今日できないことは、明日もできないかもしれないし明日になったらできるかもしれない。やっていることが違くても、何かをできるようになろうとした時にはみんな同じですよね。

だから今日はできなくたってしょうがないって思いながら、また明日もやってみる。それで、レゲエを聴いて、モチベーションを上げていく。その繰り返しです」

ラガのマインドでリハビリを続けてきたsugarさん。上半身の麻痺は大きく改善し、自ら車椅子を動かせるほどに回復しました。

リハビリの様子をTikTokで配信。応援のコメントに「励まされる」

怪我をしたことが契機となり、新たに始めたこともあります。それは動画やライブ配信を投稿する「TikTok」での発信です。入院した頃から動画投稿をスタートし、リハビリの様子や歌っている様子、美味しかった食事など、生活の中からさまざまな切り口で投稿をしています。

発信し始めたきっかけは、同じ音楽クルーに所属しているTikTok芸人から勧められたこと。やはり「できることは、やってみよう」というラガの前向きなマインドで、気楽にスタートしたと言います。

リハビリに取り組む投稿に対してユーザーから励ましの声をもらうことも多く、「すごく励まされるんですよね」と顔を綻ばせるsugarさん。現在は動画の投稿が中心ですが、今後はライブ配信も積極的に取り入れていきたいといいます。

「周囲から『どうしてそんなに前向きでいられるの?』とか『どうして頑張れるんですか、しんどくないんですか』みたいに聞かれる事は多いので、自分の考えていることだったりマインドをライブ配信で伝えられるといいかな、と考えています。

いまでも結構、障がいを持った方でいろんな方法で発信している人がいると思うんですが、どうしてもカテゴリとしてシリアスになってしまいやすいと思うんです。こんな障がいで、暮らしにどんな困難を抱えているとか、頑張っている姿が…とか。姿勢を正して見なくちゃいけない感じがあると思うんですよね。

自分はもう、飯食いながら見られるくらいにライトなコンテンツにしたいです。動画も含めて、そういうものをやっていきたいですね」

sugarさんのTikTokを見る
 →しゅがー@頸損Deejay

新曲制作やライブ配信、バリアフリーなライブの開催も

レゲエミュージシャンとしての活動もさらに積極的に取り組んでいくというsugarさん。挑戦したい事は、バリアフリーな環境でのライブイベントです。

「もし自分が主催してイベントをするなら、障がいのある人も入場できるような箱でやりたいなと思っているんですよね。車椅子ユーザーだけど音楽好き、ライブ好きっていう人も少なくないと思うので。車椅子ユーザーと介助者は入場無料にしたり、楽しんでもらえる仕組みを考えてやりたいなと思っています」

障がいの有無に限らず、人は生きている中でさまざまな壁にぶつかるもの。そんなときにどんなマインドを持つのか。モチベーションを持ち続けるにはどうしたらいいのか。そのヒントが、sugarさんの生き様の中に見えてきたように思えます。

「差別的な意味ではなく、『障がい者なのにあいつ、人生クソ楽しんでんじゃん』と言われる生き方をしたい」。

インタビューの最後にそう締め括ったsugarさんの表情は、未来への希望が満ちていました。

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