原因究明なしでも問題解決できる? 「ポジティブアプローチ」という手法
皆さんは、犬や猫にいるノミを見たことあるでしょうか?
ノミは本来、自分の身体の何百倍も跳び上がる能力があります。しかし、透明なガラスコップを被せられ、コップにぶつかって落ちる学習を繰り返すと、そのうちに飛ばなくなってしまうそうです。そして、そのガラスコップを開けてみても飛びません。
組織でも同じようなことが起こっています。「人が辞めるのは当たり前……」「休職者が出るのも当たり前……」「この生産性で当たり前……」という意識が、透明なガラスのコップのように働いて、自らの可能性を狭めてしまうのです。そして、原因と思われるガラスコップを開けてみても、問題は解決されないのです。
日々の行動を振り返り、違和感に気付こう
管理職は、こうした状況を解決しなければいけません。まずは自分自身が「当たり前」から抜け出す必要があります。そのためにお勧めなのは、自身が最近やったマネジメントをノートに書き出し、振り返ることです。その時、もし何か違和感を抱いたなら、そこには様々な問題が含まれているはずです。
以前は、何か問題があったら、その原因を究明し、解決策を考える「問題解決型アプローチ」が主流でした。しかし最近は、人と組織の課題の複雑性が増す中で、別のアプローチが推奨されるようになってきました。
理想状況からのアイデア出しから行動へ!
ハーバード大学の公共政策大学院で教えるロナルド・A・ハイフェッツは、その著書『最難関のリーダーシップ』の中で、人と組織の課題の多くは”適応課題”だと言っています。
彼のいう適応課題の定義は、「未知の状況で解決法がわかっていない」「既存の解決策がない(既存の思考様式では解決できない)」「既存の思考様式を変えて、行動を変える必要がある」「関連する人々との探求と学習が必用」「問題の当事者である(本人がシステムの一部)」というものです。
彼によると、この適応課題の解決に効果的なのが、”ポジティブアプローチ”です。
ポジティブアプローチは、問題の原因を探るかわりに、まず理想状況を描くことから始めます。そして、理想状況を実現するためのアイデアをメンバーと共に考え、具体的なアクションを決めていくのです。
人と組織の問題は複雑で、簡単に原因究明ができたり、明確な解決法が見つかったりするものばかりではありません。それに比べ、理想を思い描き、そこに向けて何をするかを考えることは「ポジティブ」でやりやすいという発想です。
「人が定着しないのは何故か」と原因探しをするよりも、「人が定着するためには何が必要か」を考えるほうがポジティブに考えられる。これはそういうアプローチです。
従来のやり方で解決法がなかなか見つからない、難しい課題に直面したときは、このアプローチを試してみてください。