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「部下がいきなり辞表を持ってくる」という事態を回避するために管理職が知っておくべきこと

私が実施している管理職向け研修では、組織の課題や悩みを出していただくのですが、よく出てくるのが「急にメンバーから辞表が提出されて困っています」という声です。最近では「いきなりメンバー本人でなく、退職代行業者から辞める連絡が入り、もうわけがわかりません」という嘆きもありました。

管理職の皆さんにもこのような経験が少なからずあるのではないでしょうか。メンバーが辞める理由の多くは”人間関係”と”仕事の量と質”です。今回は、仕事の質、いわゆる「働きがい」に繋がる部分に焦点を絞って、その理由と対策を考えていきます。
(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

人口ボーナス期と人口オーナス期に見る働く人の思いの多様化

皆さんは人口ボーナス期や人口オーナス期という言葉を聞いたことがありますか? 人口ボーナス期とは、一言で言えば人口が増えている時期のことです。具体的に言うと生産年齢人口(15歳から64歳)の割合が、それ以外の人口(0歳から14歳、65歳以上)の2倍以上にある状態のことを言います。

この時代は豊富な労働力を背景に、増えた人口が消費者にまわるといった構造のもと、作れば売れるという時代でした。そして、戦後の高度経済成長の中、人々は「一生懸命働けば給料も上がるし、いい生活も出来る」といった思いで長時間労働を続け、そこに働きがいと生きがいを感じていました。

しかし、今は人口オーナス期です。オーナスとは負担・重荷といった意味で、人口ボーナスの対になる言葉です。いわゆる少子高齢化社会で、生産年齢人口が減少していく時期をさします。

人口ボーナス期には大規模製造業で働く人が増え、家庭と仕事場の距離が離れることにより家事は女性、仕事は男性といった構図が出来上がり、核家族化が進みました。こうした背景から、大規模家族は少なくなり少子化が進みました。少子化が進むと一人当たりにかける教育費の額が上がり、教育水準が上がります。

そして、教育水準が上がると価値観も多様化します。今の世の中は成熟社会です。昔のように「一生懸命働けば給料も上がるし、いい生活もできる」といった思いで働いている方ばかりではなくなってきています。

これからのチーム作りで目指すべきは「サークル型組織」

そうした中で、求められているのが部下一人ひとりを活かす”オーダーメイドマネジメント”です。オーダーメイドマネジメントの根幹になるのが部下の”内発的動機付け”です。いわゆる部下自身が”この仕事をやりたい”といかに思わせることが出来るかが問われています。

この状態を作ることが出来れば、冒頭のような急に部下が辞めるといった状況を回避することもできるのですが、どのように内発的動機で動く組織を作っていけばいいのでしょうか?

ピラミッド組織からサークル組織へ

ピラミッド組織からサークル組織へ

私が担当する上司力研修の中では、これから作らなければならない組織を”サークル型組織”とお伝えさせていただいております。図をご覧いただきたいのですが、昭和から平成初期の時代までは左側の”ポストと報酬で動機づけするピラミッド組織”が主流でした。

しかし、働く人の思いの多様化が進む現在においては右側にある”組織の目的と個々の尊重で動機付けするサークル型組織”が必要になってきます。サークル型組織とはいわゆるNPO型組織です。組織の目的が中心にあって、皆が自分の力を活かしてお互いに助け合って、その目的を達成していく組織形態です。ドラッガーも晩年には”これからの組織の主流はNPO型になっていくだろう”と語っていたと言われています。

では、実際にそのような組織をどのように作っていったらいいのでしょうか。サークル型組織のつくり方に関しましては、次回と次々回にわたってご説明していきます。

筆者近影

筆者近影

【著者プロフィール】田岡 英明

働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント

1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。

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