真面目な子どもが中学生になって成績が落ちる理由 真面目さゆえに「理解しないで暗記」
今まで個別指導塾でさまざまな個性を持つ1000人以上の生徒と接してきました。その中で、その子の”性格”をみれば、勉強方法やテストにどのような傾向が出るかが分かるようになりました。
今回は「真面目で言われたことをちゃんとやる生徒」と「安全志向が強い生徒」の2タイプについて、得意・不得意なことや、おすすめの対策を紹介します。(文:個別指導塾「STORY」取締役 妻鹿潤)
なぜこの問題でこの公式を使う? 考えないでひたすら暗記は注意
「真面目で言われたことをちゃんとやる生徒」は女の子に多く見られます。親の言うことをしっかり守り、言われたことを期限までにちゃんとやる。一見手のかからない模範的な生徒です。
学校での態度は真面目で、遅刻もしない、提出物や宿題も完璧。家では弟妹の面倒を見て、お手伝いもする。このタイプの親御さんは、「ちゃんとやっていて、手がかからないので大丈夫だと思った」とよく言います。それなのに、ある時点から伸び悩むことが多いです。
公立中学校に進学した人だと、最初のテストで80~90点をとれますが、2学期には60~70点に下がる人が多いです。そこからどれだけ勉強しても伸びず、中学2年の後半には40~50点になってしまい、塾に通い始める傾向があります。
私立中学受験をする子だと、小学5年生くらいから勉強量をかなりこなしているのに、緩やかに成績が下降。結果、第2、第3志望校に入学する傾向があります。こうした伸び悩みの背景には、「真面目」な性格ゆえに「理解ではなく暗記」していることが多い、ということがあります。
学校や塾の授業で習ったとき、なぜこの公式や構文を使用するのか最初は理解できないことがあると思います。このタイプの生徒は、真面目さゆえに「ちゃんとやらなければ」という気持ちが強く出て、「わからないけど、こういうものだ」「こう来ればこう」と無意識に暗記してしまうことが多いのです。
最初のうちは反射的に解けますが、受験が近づき、暗記した内容と”違った聞き方”をされたときに対応できなくなります。この生徒は、今まで「ちゃんとやってきた」ことで点数が上がったり、周りから褒められたりした経験があります。
そのため、「もっとちゃんとやろう」と量をこなして暗記します。しかし理解はできていないため、勉強量を増やしても成績が上がりづらくなるのです。
真面目にやれることは良いことです。しかし子どもがこのタイプの場合、「ちゃんと理解すること」「なぜこれをやるのか、何が原因で間違えたのか。どうなれば良いのか」など、考える機会を作ることで、得意を活かしながら、不得意を克服することができます。
安全志向が強い生徒は「不安を動機」に勉強を頑張り続けるポテンシャルがある
もうひとつ多いタイプが「安全志向の強い生徒」。何事も「安全かどうか」を確かめたがる傾向がある人たちです。ケアレスミスが起こらないよう丁寧に解いたり見直しをしたりするあまり、ほかの問題にかける時間が少なくなることもあります。受験のような一発勝負や、スポーツの大会やコンクールなどミスが許されない環境に強いとはいえないタイプです。
問題集も、とにかく最初のページから全部解いていきます。良い面としては「全部やろう」と頑張る動機になることですが、悪い面としては「どこをやれば一番点数が上がるのか。どんな風に勉強をすれば良いのか」とあまり考えないところがあげられます。
そのため、「全部やれなかった」状態で本番を迎えると、「やりきれていない問題が出るのでは?」と不安になってしまいます。そして、まさに”やりきれなかった問題”が1つでも出題されると、「やっぱり出題された」と不安感が一気に増大し、パニックに陥ることも。
この対処法は、「不安感を動機にして、勉強を頑張り続けること」です。普段から努力を積み重ね、「”もう後がない”と思わない」という気持ちで受験に臨めると強いです。不安感を持っている人だからこそ、「もう大丈夫」と思えるまで勉強を仕上げると、本番でも大いに実力を発揮することができます。
「真面目」も、「安全志向が高い」も、それがその人を表す一部です。根本的にその性格を変えることはかなり難しいでしょう。ただ、得意を活かして不得意をカバーすることはできます。この記事が、その助けのひとつになれば幸いです。
【筆者プロフィール】妻鹿 潤(めがじゅん)
株式会社STORY 取締役/SB学び事業部責任者・キャリアコンサルタント
関西学院大学法学部卒。大手学習塾で教室長として、生徒・保護者からの信頼を得る。
1000人近くの小・中・高生と、それ以上の保護者と関わり、培った知識と経験から、その生徒に完全オリジナルのオーダーメイドカリキュラムを確立するに至る。地域で評判となり、10か月で100名以上の生徒が入塾するまでになる。
大手個別指導塾で生徒へ価値提供ことへの限界の痛感や、大学や社会でのミスマッチに絶望する現実を目の当たりにしたことから、理想の教育を形にしているSTORYに参画。現在、SB学び事業部責任者として、子供達に点数アップ・志望校合格に加え「社会で生き抜く力」を提供する。