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これから「知性派人事」の重要性が高まる理由 対人コミュ力だけではやっていけない

採用担当者が身につけたいスキルは?

採用担当者が身につけたいスキルは?

人事採用担当者が身につけなくてはならないスキルや能力とは、これまでは面接のスキルや面と向かって候補者を動機づけるトーク力、採用活動という大プロジェクトのマネジメントスキル、労働法の知識などでした。主に対人コミュニケーション能力+段取り力+法律と言ってもよいかもしれません。

これらはこれからも同様に必要なものですが、近年の採用手法の変化に伴い、採用担当者に新たに求められる力が増えてきています。本稿ではそれにはどのようなものがあるのかについてご紹介したいと思います。(人材研究所代表・曽和利光)

テキストで動機づけする「文章力」

これまではさほど必要とされていなかったのに、これから必要となるスキルや能力のトップバッターは「文章力」でしょう。候補者とテキストベースでコミュニケーションをする機会が大変増えているからです。

以前は、採用広報はプロのクリエイターに依頼し、採用担当者はディレクションをしておけばよかったのですが、現在では、自分で候補者一人ひとりにスカウトメールを打ち、その文章の力で動機づけて実際に会うまでにつなげることが求められています。

ある意味、コピーライター的な表現力、刺さる力のある言葉を紡ぎ出せるか、ということが個々の採用担当者にも必要となっています。

求める人材を発掘する「検索力」

企業側から採用候補者をターゲティングして積極的に探しに行く「スカウト型採用」が増えています、これに伴い、自社が求めている人物がどこにいるのか、何をしているのかを具体的に想像し、スカウトメディアのデータベースから検索して発掘する力が必要になります。

事業におけるマーケティング活動のように、抽象的に定義された人材要件から、より具体的な人物像(マーケティングの言葉で言えば「ペルソナ」にあたるもの)をイメージできなければいけません。

例えば、論理的思考能力の高い人を欲しいと思ったときに「理系かな」くらいしかイメージできないのではダメです。おそらく多くの人が同じことを考えて検索するので、同じような人にたどり着き競争が激しくなるからです。

そうでなく、例えば「論理的思考能力が高い人は将棋を趣味にしているかもしれない」と想像し、「将棋」で検索することで、属性を問わず将棋をやっているおそらく論理的思考能力が幾分かあるだろう人に、競争が少ない中でたどり着くことができるのです。

事実と論理で推論する「統計学」

服部泰宏先生(現神戸大学准教授)のベストセラー『採用学』(新潮選書)において「面接の精度が実は低い」という事実が広く流布することになりました。

このことにより、これまで人事担当者の経験や感覚で行われてきた配置や昇格などにもデータのメスが入り始めました。いわゆるピープルアナリティクス。要はデータを統計学的に分析して、感覚ではなく事実と論理に基づいて推論していくことです。

統計学的分析の波は採用分野にも押し寄せており、求める人物像を決めるのにも、ハイパフォーマーの特性をパーソナリティテスト(性格検査)のデータ分析から行なったり、選考においても、これまでスクリーニングでは能力テストくらいしか使われていなかったものが、パーソナリティの適性などもみるようになったりしてきました。

素人理論を乗り越える「心理学」

最後は心理学です。人事は心理学の応用分野であるはずなのにもかかわらず、これまで企業の人事担当者はあまり心理学をきちんとは勉強をしてこなかった人が多いように見受けられます(もちろんすごい見識をお持ちの方もいらっしゃいますが)。

ローテーションで人事担当になる人が多いというのも、その理由でしょう。法務や経理財務などの他の事務系スペシャリストの仕事と違い、人事業務はとっつきやすく見えるために、誰でも自分の「素人理論」を持ちやすいということも理由の一つかもしれません。

しかし、問題なのはその「素人理論」が結構な確率で誤っていることです。世界中の研究で明らかに否定されている、あるいは証拠が上がっていないような理論が現在でも人事の現場では横行しているのが現実です。

誤った理論に基づく施策は、うまくいくわけがありません。せっかくいろいろなことが判明しているわけですから、人事は心理学を学ぶべきでしょう。

「人が好き」だけでは足りない時代に

このような新しいスキルが求められる背景には、これはどんな仕事にもいえることですが、人事という仕事がどんどん知的になっている流れがあります。採用広報ひとつとっても、感性勝負の広告クリエイティブから、すべての効果がデータ化されるネット広告に変わりました。似たような動きは、面接にも配置にも評価にも起こっています。

人事には「人」という文字がついているだけに、「人と接することが好き」「人のことを慮る力がある」といったことが必要特性とされてきました。しかしこれからは、そういう「人情派人事」だけではなく、様々な「知性派人事」の重要性が高まってくることでしょう。

【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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