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働かない年上部下を変える秘訣とは 先輩の姿は「将来の自分」と捉えるべし

先輩部下のやる気を引き出す方法とは

先輩部下のやる気を引き出す方法とは

「年上の方って、やる気ないですよね」「かつての先輩が部下になってしまって、どうしたらいいものか」――。私が研修を行う中で、最近よく聞かれた管理職の皆さんの悩みです。

少子高齢化による人材不足の時代、これまでの年功序列は成立しなくなってきています。長く働く時代が訪れ、今後はますます年配のメンバーが増えていくのです。今回は、そんな先輩メンバーを、管理職としてどのように応援していけばいいのかを考えてみます。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

先輩部下の心にともる火、上司に求められるのは「いかに炎に変えるか」

先輩の姿は、将来の自分の姿です。役員までのぼり詰めることが出来るわずかな人以外は、役職定年などの制度によって年下上司の下で働く日が必ずやってきます。その時になって初めて空虚感に苛まれるのでは、人生を無駄にしてしまいます。今から準備をしていかねばなりません。では、何をすればいいのでしょうか?

まずは、年上の先輩の思いをしっかり聞いていきましょう。それが、将来の自分の思いかもしれないからです。

多くの場合、年上の先輩方はモチベーションを無くしているように見えることが多いかと思います。ですが、ただ”見失っている”だけなのであって、心の中の火は消えていません。上司には、その火を炎にしていく関わりが求められるのです。では、どのように炎にしていけばいいのでしょうか?

両価性に着目、やる気を引き出す「動機付け面談」

今回は「動機付け面談」と呼ばれる技法をお伝えします。これは、もともと医療分野で考案された面談技法です。医療の世界においては、患者さんが自分の病気に対して積極的に関わっていくことが大切です。

例えば、アルコール中毒の患者が「どうしても、お酒に手がいってしまうのです。私には自分の病気を治すことができません」といった状態のままでは治療は上手くいきません。アルコール中毒に限らず、患者自身が自分から「治すぞ」と言う強い思いを持って、初めて治療は進むのです。

アルコール中毒患者と同様に、先輩部下にも「働くぞ」「自分のため、組織のために頑張るぞ」と思ってもらわねばなりません。

そこで動機づけ面談です。動機づけ面談は「人間の持つ『両価性』に注目し、『抵抗』を受けとめつつ、変化へのやる気(チェンジトーク)と取組(コミットメント)を引き出す対話法』」と定義されています。

定義にすると少し難しいですが、両価性の「変わりたいけど、変わりたくない」といった思いを受け止め、前者の「変わりたい」という言葉を引き出していきます。職場であれば、先輩部下の「働きたいけど、働きたくない」といった思いのうち「働きたい」という部分を引き出していくことになります。

面接技法は”OARS”と呼ばれるものから構成されています。「O」は”Open Questions”の頭文字です。「仕事は楽しいですか?」のような「はい」「いいえ」で答えられるような質問でなく、「仕事での最近の課題はどのようなものですか?」「最近仕事で楽しいなと思える部分はどんなところですか?」のように「はい」「いいえ」で答えられない質問を指します。

「A」は”Affirmation”です。これは”承認”に近いです。過去に先輩部下が成し遂げてきたことなどをしっかり聞きながら「たくさんの経験をお持ちですよね」「数々の困難を乗り越えていらっしゃいます」と会話の中で相手の自己効力感を高めていきます。自己効力感とは「自分にはできるのだ」という思いのことです。これが高まると人はモチベーションを上げていきます。

「R」は”Reflection”です。「オウム返し」と「言い換え」と呼ばれる技法です。「もう年齢も年齢だから、そっとしておいてくれ」と言う先輩に対して「年齢も年齢だから」と繰り返したり「心穏やかに過ごしていきたいと思っていらっしゃるのですね」と言い換えたりしていきます。これらの関わりによって、人は自分の言った言葉を心の中で反芻し、本当の思いに気付いていきます。先輩部下の心中にある「本当はモチベーション高く働きたい」といった思いに気付かせていきましょう。

そして「S」は”Summarize”の頭文字です。ここでは、話してきた内容を要約します。一般的な要約では「先輩の言っている事って、こういうことですよね」といった具合ですが、動機付け面談では、これまでの話の中から見えてきた両価性の言葉を入れ、語尾を下げた言い回しをするのがポイントです。

両価性の言葉と語尾を下げる関わりによって、頭の中に「いや、そうじゃないのだ」といった思いが巡り、現状を否定して変わりたい思いが募っていくのです。

今回は、先輩部下を動機付ける方法をお伝えしました。繰り返しになりますが、先輩の姿は将来の自分の姿です。先輩部下が活躍できる組織を今から作っていくことは、将来の自分のためにもなります。

筆者近影

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【著者プロフィール】田岡 英明

働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント

1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。

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