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「風通しのよい職場」は本当に働きやすいのか? 誰にでも意見が言える組織にもリスクはある

採用面接などで応募者が「御社はどんな組織文化ですか?」と尋ねると、面接担当者から「風通しのよい職場ですよ!」といった回答がなされることは非常に多いです。軽やかで清々しい言葉の響きがあり、爽やかな感じがしてよいですね。

しかしよく考えると、「風通し」というのは比喩的に過ぎて今一つ意味がわかりません。それは本当に、誰にとっても「働きやすい職場」なのでしょうか。とてもよく使われる表現ですので、あえていろいろ考えてみたいと思います。(文:曽和利光)

「社会的望ましさ」を象徴するような言葉ではあるが

言葉の響きのよさに惑わされない

言葉の響きのよさに惑わされない

「風通しがよい」の意味として一番よく使われるのは、「意見が言いやすい職場である」というものです。どんな人にも等しく発言の機会が与えられ、職位の如何にかかわらず発言内容が吟味される職場ということです。

確かにこう聞くとフラットな民主的な組織であり、素晴らしい社風のように思えます。これに対してネガティブな評価をする人はあまり考えられず、いわばマネジメントにおける「社会的望ましさ」を象徴するような言葉ともいえます。

しかし本当に「風通しがよい」組織にするためには、コミュニケーションコストをかなり上げる必要が出てきます。誰でも発言が容易ということは、深い経験から来る貴重な意見も浅い経験しかない人の発する思いつきも、等しく優しく丁寧に扱われるということです。

不勉強な新人や若手がろくに分かりもしないことに対して、自分の思い込みだけで会社の方針に茶々を入れるようなこともあるでしょう。正直、マネジメントをする側からすれば「もうちょっと色々考えてから発言してくれないかな」としか言いたくないような拙い意見でも、一度聞いてしまった以上、

「いや、これはね、こういう理由があるから、君の言っていることは全然違うんだよ」

と丁寧に伝える必要が出てきます。発言した本人としては気分がよいのでしょうが、組織全体にとってそこまでして「風通しをよくする」メリットはあるのでしょうか。

真剣勝負の場に「拙い意見に対する優しさ」は必要なのか

そもそも本当に「意見の言えない職場」など、あまりないものです。多くの場合、壁を作っているのは往々にして、その人の心です。壁があると思い込むことで、自分の意見に自信がないことを覆い隠し、意見が言えないことを「壁のせい」にできるという他責な考えからではないかとも思います。

他責が当たり前の状態に対して「意見の言いやすい」「拙い意見にも優しい」場を作ろうとする試みは、もしかすると「徹底的に考え抜く姿勢」「意見を具申する気概」「真剣に議論する気風」を阻害することにつながるかもしれません。

ビジネスは真剣勝負の場です。もちろん創造性を生むためには、遊び心や余裕は必要かもしれませんが、それでも「真剣に遊ぶ」ことが重要です。適当に遊んでいて成果を出しているような人はあまり見たことがありません。

侃々諤々、丁々発止、議論をすることは大いに結構でしょう。しかし、その場は切磋琢磨の真剣勝負の場であるべきではないかと思います。そこに生半可な気持ちで発せられた中途半端な「ノイズ(雑音)」のような意見など必要でしょうか。

極端な例ですが昔の軍師は、出した意見が間違っていて軍に大損害をもたらしたら、自分の首が飛んでいました。それぐらいの覚悟で自分の頭を働かせるからこそ、乾坤一擲の大勝負もできていたのだと思います。

「集団浅慮(グループシンク)」現象を招くおそれも

さらに付け加えると、「風通しのよい」「優しい」職場は、個人で考えると当然判断できたようなことが集団で考えることで誤った判断を導く「集団浅慮(グループシンク)」現象を招くおそれもあります。

意思決定に際して不必要に多くの人が絡んでくる状態になると、「赤信号、皆で渡れば怖くない」のように過度に物事を楽観視したり、外部からの警告を無視したり、リスクを見落としたりすることにつながります。

また、課題の中身自体ではなく社内のパワーで意見が評価されたり、一度決めたことは覆さないように集団圧力がかかったりするようになります。そういうことからも、あまり誰でも彼でも意見が言えるという状況は、手放しで良いとは言えないように思えます。

無論、以上の話は「ブレーンストーミング」や「ダイアログ」といった自由でフラットな場を作る手法を否定するものではありません。むしろそれらの手法は、良い意味で「風通しがよくない」(意見を言うのに、びしっと背筋が伸びるような覚悟がいる)職場とは補完関係にあるので、大変重要なものであると思います。

このように、理想の組織を開発していく際に「風通しのよさ」といった社会的望ましさを尺度とすることは、思考停止を招くことがあります。皆様におかれましても、自社の文化風土をどうしたいのか考える際に、このような罠に陥らないようにお気を付けください。

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