「ハラミタ企業」の見分け方2 採用方法から分かる企業風土<身勝手体質・建前体質編>
前回から、採用手法を通じて企業風土を見分けるポイントを解説しています。前回は多くの人にとって入社を避けたい「ハラミタ企業」(ハラスメント、ミガッテ、タテマエ)のうち、「ハラスメント体質」の見分け方を説明しました。
今回は、自社の利益しか考えない「身勝手体質」と、表面的な大義名分だけ重んじる「建前体質」の見分け方を検討します。採用担当者からこのような対応をされた場合、入社には慎重になった方がいいかもしれません。(文:曽和利光)
不合格になる人への配慮が足りない会社は問題
「身勝手体質」とは、相手と共生(いわゆるwin-win)することを考えずに、自社の利益しか考えない社風を持つ会社を指しますが、採用においては以下のような特徴があります。
まず面接などの日程について、学生に選択肢を与えず強引に指定してくる会社は要注意です。応募者にとって重要な外せない所用があった場合は、どうすればよいのでしょうか。初期選考など大勢の応募者がいる場合はともかく、最終面接にいたっても遠隔地からの選考参加にもかかわらず交通費などの支給がない会社も、どこか問題がありそうです。
面接回数が2桁以上と多かったり、拘束時間が異様に長かったりする場合も「身勝手体質」のおそれがあります。それは会社側に「ていねいに評価をしたい」という思いがあったとしても、自社のメリットだけで引き延ばすような場合は問題です。
応募時に、重いエントリーシートや「手書きの履歴書」などの提出を義務付ける会社も怪しいです。応募者に何時間も貴重な時間を使わせるだけの目的や利用意図があるわけでもなく、「あった方がいい」くらいで実施している場合が多いのです。
他社を受けられないようにするために、特異日(各社の選考開始スタート日など)に長時間拘束する会社も論外です。自社に入社する意図の強い人に対しては問題ないかもしれませんが、「拘束を受けないと内定がもらえない」となると問題です。いずれも応募者の労力や途中で不合格になる人への配慮が足りていないことの表れに思えます。
また、一見身勝手には見えないけれど、学生に勘違いをさせる嘘に近い説明をしたり、学生に同調するふりをして物分りのよさを演じたりする会社は、他者のことを考えずに「嘘でも何でもいいから、とにかく入社さえさせてしまえばOK」という体質を持っています。
「学歴フィルター」を隠す会社は建前重視
3つ目の「建前体質」とは、表面的、形式的な形だけ整っていれば、本質が伴わなくとも「それでよし」「バレなければいい」とするような社風を持つ会社を指し、採用では以下のような特徴があります。
まず、本当は学歴だけでスクリーニングしているにもかかわらず、隠れ蓑としてエントリーシートを全員に提出させている会社は「建前体質」といっていいでしょう。見抜くことはなかなか難しいですが、最終的な内定者の卒業校が極端に偏っている場合には疑われます。
リクルーターや採用担当者から「今日ここで話した内容は、絶対に誰にも言わないように」と口止めをされるような会社も、そのような体質かもしれません。本人たちもいけないことをしていると分かっているが、表に出なければそれでよいということです。
「就活応援セミナー」「業界研究セミナー」等、一般的な内容のセミナーとして開催しているにもかかわらず、コンテンツの大部分が自社のPRに使われている会社も問題でしょう。一般的な内容のセミナー自体を、採用広報のためにやること自体は何ら問題ないと思いますので、バランスの問題です。
完全なる選考なのに「面接」を「面談」と呼び変えたり、リクルーターを単なる「OB・OG訪問」としたり、会社説明会なのに「懇親会」とだけしたりと、建前を維持するために微妙な言葉遣いで言い張る会社もあります。
採用プロセスで違和感持ったら少し立ち止って
ここまで厳しいことを書いてきましたが、前回も書いたように理想論すぎるところがあるかと思います。昨今の「就活後ろ倒し」や「短期化」で、背に腹は代えられないと泣く泣く不本意な採用活動をしている会社もありますので、一概には非難できるものではないかもしれません。
特に日本社会は全体的に「建前体質」とも言えるので、このあたりは致し方ない部分もあります。ここは逆にそういう周囲からの圧力の中で建前体質を脱ぎ捨てて、勇気を持って「言行一致」を貫く企業を積極的に評価するといったところでしょうか。
以上、採用活動などからでも、その会社の体質や社風がよく分かることを例示してみました。どんなに最初は憧れていた企業でも、採用プロセスにおいて違和感を持ったら少し立ち止まって冷静になって、前回と今回述べたような「ハラミタ」企業ではないかどうかを考えてみることも重要だと思います。
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