高卒と大卒の初任給の違いは「大した根拠ない」 いっそ同じにしてもいいのでは?
労働政策研究・研修機構の資料によると、高卒で大企業に就職した男性の生涯賃金は、大卒で中小企業に就職した男性を上回る傾向にあるそうです。高卒から大企業のルートは狭き門ではありますが、必ずしも「大学に行けば高収入」とはいえない証左といえます。
とはいえ同じ会社内でみれば、ほとんどの会社で大卒と高卒の初任給に大きな差をつけているのが現状です。しかし大卒であっても理系なら専門を直接活かせることもありますが、文系にはその可能性はほぼありません。なのに、なぜ差をつけているのでしょうか?(文:河合浩司)
上位校は別としても、下位校と高卒は一緒でいい
ひとことで言えば、過去には学歴が「比較的大多数の人が納得する材料」だったからです。大学進学率がまだ2~3割だった頃であれば、優秀な人材を得るために「大卒採用」を推し進めることは有効だったのかもしれません。
しかし進学率が5割を超え、希望すれば基礎学力が崩壊している人でも大学に入れるようになった今では、大卒の資格の有用性が下がっています。正直な本音ですが、私個人としては大卒と高卒に給与差をつける必要性はなくなっていると感じています。
即戦力になる新卒社員は、極めて稀にしか存在しません。となると高卒も大卒も、同じ「入社一年目」として同様に扱う方がいいのではないでしょうか。当然ながら、1年2年と経つ中で、実績や実力を反映した評価に変えていく必要はありますが、学歴だけで給与に差をつけることは今や合理的でないように思えてならないのです。
もしも潜在力の実態に見合う形で初任給に差をつけるなら、上位校とFラン大とを同じ「大卒」という括りにするのは無理があります。大学を難易度等で3グループくらいに分け、ランクに応じて初任給を決める方が、納得感があるかもしれません。
下位校の初任給は、入社4年目の高卒者よりも低くするのが妥当でしょう。ただし、こんなことを堂々と進めれば世論の反発は必至ですから、本音ではそう思っていても、多くの企業は「今までどおり」を続けています。
優秀な高卒の初任給を上げてモチベーションを高める
ただしこれからは、大卒と高卒に給与差をつける明確な理由を企業が説明できないようでは、採用に支障が出てくると私は考えています。不合理な格差があれば、優秀な高卒を採用しようにも「なんで大卒だけこんなに高いの?」と不満を抱かれるからです。
それならいっそ「大卒と高卒の給与や待遇の格差をなくす」という方針を貫き、優秀な高卒にはこれまで以上の給与を支払い、モチベーションを高めた方がいいのではないでしょうか。
もちろん「初任給を下げたら、大卒が受けに来なくなるじゃないか!?」という反論も出てくるかと思います。大卒の初任給を高くする説明のひとつとして、大卒者(あるいは出資した親)側の「教育コストを回収したい」という目論見があるからです。
しかし、かけたお金が本人の成長に結びついていなければ、企業側の評価には関係のないことです。「できる業務・できない業務」を分ける知識や学力、スキルや資格などを持たない限り、給料に差があることに合理性はないことになります。
高卒と大卒との賃金格差が解消されれば、「高卒では肩身が狭いし給料も安くなるから、とりあえず大学に行っておくか」という進学理由が減るかもしれません。
あわせてよみたい:高校生の就活自由化でFラン大学は存在意義を失う