「光る君へ」は視聴率が低い=失敗は早計では? ドラマとしては十分魅力的だった
2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』もいよいよ12月15日の放送分をもって最終回となる。このドラマは平安時代を舞台として、紫式部・まひろ(演:吉高由里子)を主役に据えた恋愛あり、作家活動の苦悩あり、美麗な映像表現ありの作品となっている。
最初はあんま期待していなかったが、血みどろ合戦描写ファンの僕でも楽しく視聴してきたし、SNSの大河ファンたちの反応もそこそこ良いようだ。
Xでは毎週の放送終了後には相変わらず番組タイトルがトレンド入りしているし、本作はキャストの演技力も俳優、芸人問わず高いので安心して物語を楽しむことができるのも嬉しい。正直、そうじゃない大河もあったので……。
しかしながら、こと視聴率の面で言えば苦戦しているという話はもう何度も耳にしてきた。僕はテレビメディアの人間ではないので視聴率が高かろうと低かろうとどうでもいいが、そうじゃない立場の人にとっては本作はどうも、失敗のようだ。(文:松本ミゾレ)
「分かる人にしか分からないドラマ」? それなら調べればいいのでは
先般、日刊ゲンダイが「過去最低視聴率は免れそうだが…NHK大河『光る君へ』はどこが失敗だったのか?」という記事を配信していた。
僕はこういう記事結構好きでよく読むんだけど、本記事は『光る君へ』は失敗であったとの前提のもと、どこでやらかしてしまったのかという話が中心になっている。
たとえばベテラン放送作家の
「左大臣や蔵人などの官位制、天皇の権力、当時の婚姻習慣などの予備知識がないと理解しにくいんです」
「時代や社会背景の説明部分が薄く、分かる人にしか分からないドラマになっちゃったというのが致命的でしたね」
というコメントを掲載している。
平安時代特有の文化や習慣については、これはたしかに2クールの途中ぐらいまで、正直僕もちんぷんかんぷんだった。
しかし! しかしである! 分からないなら調べればいいわけで、今僕がこの原稿を書いているパソコンで検索してもいいし、書籍を取り寄せてもいいし、皆さんが今この記事を読んでいるときに使う端末でも、ある程度の調べ物はできる。
たびたび、「これは知ってる人しか楽しめない」みたいな評価をする人っているけど、知らなければ知ろうと動くことができる今のような環境なので、多分僕みたいに「右大臣と左大臣ってどっちが偉いんだ」とか疑問を抱いて調べた人、結構多いんじゃないかな?
むしろ大河ドラマって、作中で出てきた合戦の経緯や登場人物の出自なんかを自分で調べて知識を独力で拡充させる部分に楽しさが詰まってると思うんだけど……。それをやらないって、蟹のミソだけ食って鋏の中の肉を食わないで捨ててるみたいなもんだよ。
っていうか「だったら信長、秀吉、家康についても、俺たちは割と知らないことばっかりだし」という気持ちにもなってしまう。件の記事では『光る君へ』の視聴率の低さにも触れつつ「意識高い系の女性には評判がいい」という話も見受けられる。
実際に、意識高い系の女性(その定義はよく分からんが)にもウケるっちゃウケるんだろうけど、しかし一方でまひろって究極的には“めちゃくちゃ長い時間、待ち続けた女”という立場なので、意識が高くない女性や男性にも共感をあたえる存在だったと感じる。
なんとなくだけど、内裏で右往左往する貴族たちがいっぱい出る=意識高め、というイメージが拡大解釈されているだけなようにも。違ったらすみませんが。
合戦もない、血みどろの粛清劇もない、そんな大河があってもいいじゃないか
本作もいよいよクライマックスに至ったわけだが、僕はどちらかと言えば、合戦に次ぐ合戦で毎週誰かが死ぬ感じの大河が好きだ。そういう意味では『光る君へ』は本当にそういった栄養分は乏しい。
しかしながらこの時代と鎌倉時代、戦国時代とでは争乱の性質が違うし、まだ足軽が槍を持って集団で戦うという戦術そのものが存在しなかった時代の話なので、そこはもう完全にさっさと切り替えて観るようにした。
権力闘争こそあるけど、正視に耐えないレベルのえらいことに発展する前に、闘争に敗れた者は退場をする。そここそ、本作が描く時代の空気感の一つだなぁと思うし、セットだって例年通り豪華なのも目を引く。
特にまひろの住む屋敷に見られる水辺。あれめちゃくちゃ綺麗じゃない?ずっと眺めたくなるぐらいに丁寧に仕立てられている。
話だってしっかり面白いし、合戦描写がほとんどなくても、全然苦にならなかったんだよなぁ。視聴率が低い、低いと言われても、僕は別に数字とか関係ない立場だ。本来の紫式部の人物像も皆目わからない中で、よくこんなに魅力的なお話を作れたもんだなぁと、ただただ感動するばかりの1年だった。
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