起業家ならば一度は観た方がいい「4本の映画」――夢見ること、起業とは何かを考えさせられる
文芸作品の中には、人生に大きな影響を与えるものがあります。道に迷ったときのヒントになったり、モチベーションの源泉になったりするものも。特に壁に直面しがちな起業家の中には、映画が大事な友達という人もいることでしょう。
米Entrepreneur誌には、起業家のブライアン・ハミルトン氏が自らの経営哲学に影響を与えた映画を「起業家が観るべき4本の映画」として紹介しています。そのうち2本は日本語版の、もう2本も英語版のDVDが出ているようですから、いちど見てみてはいかがでしょうか。(文:夢野響子)
1.Steve Jobs: The Lost Interview(2012)
起業家向けの映画を考えた時、まず思い浮かぶのがこの映画です。テクノロジー企業を始めようとする人には特別役立つドキュメンタリーですが、他分野の起業家にとっても価値ある教訓がたっぷり詰め込まれています。
内容はドキュメンタリーというよりも、ジョブズとの1時間半にわたる校正なしの会話といったもの。ジョブズは、その名を出すだけでも論争を巻き起こす存在でしたが、それより注目すべきは、彼がこのインタビューで語っている内容です。
個人的な逸話や信念を介して、成功する企業運営についてざっくばらんに語る彼の姿。中でも印象的なのは製品の品質に集中し、それを企業の成功の基とする彼の姿勢です。ジョブズの率直な話し方と明確な説明能力が、人々を共感させます。
インタビューは1995年にNeXT Software本社で行われ、2000年にAppleのCEOに復帰する前の「敗者」時代のジョブズ研究として観ることもできるでしょう。邦題は「スティーブ・ジョブズ1995:失われたインタビュー」。日本語版DVDは2014年に発売されています。
2.Tucker: The Man and His Dream(1988)
フランシス・フォード・コッポラ監督の映画で、1940年代の実話をもとに、自動車製造企業家のタッカーがビッグスリー(フォード・GM・クライスラー)の妨害で「ありもしない車を売ろうとした詐欺師」に仕立て上げられるという筋書きです。
タッカーが語る「来るべき現代にふさわしい新車の設計開発」への熱意に、真の起業家のもつエネルギーが感じられます。夢見ること、起業とは何かを考えさせられる作品です。残念ながら日本語版のDVDは出ておらず、輸入版のアマゾンのレビューにも不満が書き込まれているほどです。
3.Startup.com(2001)
ドットコム・バブルの時代に失敗したベンチャー企業govWorks(ガブワークス)のドキュメンタリー。見事なまでに同社に密着し、撮影されています。華々しい成功と急激な下降。会社経営の反面教師の全てが詰まっている、ジョブズの映画とは対照的な内容です。
創設者たちが巨額の資金を集め、ビル・クリントンと親しくするさなか、同社のインフラと製品の質が崩壊していきます。世の中に間違いを犯さない起業家はいないので、皆がこの起業家の愚かさに共感することでしょう。
ベテラン経営者には自己反省と謙虚感を促し、新参起業家には学びを与える映画です。こちらも残念ながら日本語版のDVDはないようです。
4.Man on Wire(2008)
1974年に米ワールドトレードセンターのツインタワー間の綱渡りを達成した、フランスの大道芸人フィリップ・プティの挑戦を、本人や関係者の証言を交えて紹介するドキュメンタリーです。合理的な人には、プティの動機はどう見ても理解しがたいものです。なぜ敢えてそんな危険を冒すのか。しかし、プティは単にそうしたいからするだけなのです。
表面的には起業家精神とは全く無関係な映画ですが、ある意味これは起業家にも通じるところがあるのかもしれません。起業家には歌いたい歌があり、それが他人には意味をなさなくても、単にそれを歌いたいもの。
このような本能を共有する人が他にもいることを知るのは、起業家の慰めになるはずです。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞をはじめ、全世界の映画賞50冠以上に輝いたこの作品は、幸いなことに邦題「マン・オン・ワイヤー」で日本語版DVDが出ています。
(参照)4 Movies Every Entrepreneur Should Watch (Entrepreneur)
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