才能のない人間がマクドナルド”創業者”になるには? 映画『ファウンダー』に学ぶ、根気と執念でムリヤリ夢を掴む方法
「自分の実力はこんなもんじゃない」「今は芽が出ないけど、いつか必ず成功してやる」――仕事をしていると「意識高い系」でなくとも現状を打破したいと考える人は少なくないだろう。
映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』の主人公はレイ・クロック。「マクドナルド」の創業者だ。この映画はレイがただのセールスマンから世界にマクドナルドを広めて億万長者になっていく実話を描いたただのサクセスストーリー……だけではない。才能のない人にも関わらず、いかに「本当の創業者」を食いつぶしたかという話だ。
執念だけでアメリカン・ドリームを掴んだビジネスマン
舞台は1954年アメリカ。52歳のレイはマルチミキサーのセールスマンをしているが、業績は振るわない。そんな中、あるドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのかと思い興味を持ち向かうと、ディック&マック兄弟が経営するハンバーガー屋「マクドナルド」があった。
店は、効率よく合理的に作業が行える調理システムを開発し、コスト削減かつ高品質という革新的なコンセプトを打ち出して繁盛していた。これに勝機を見出したレイは壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得して契約までこぎつける。
しかし根っからのビジネスマンで利益を追求するレイと、品質を大切にする兄弟との関係は悪化。それでも成功への執念は凄まじく、あの手この手を尽くしてマクドナルド兄弟を屈服させていく。
主演は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で主演を務めたマイケル・キートン、監督は『ウォルト・ディズニーの約束』『しあわせの隠れ場所』を手掛けたジョン・リー・ハンコックだ。
皮肉的な『創業者』 マクドナルドは制作に一切関わらず
このストーリーの注目すべき点は、レイが「トップに立つ器ではない人間」というところだろう。例えばミキサーが1台も売れなくても妻には「今日も注文が入った」と嘘をついたり、夜に自己啓発レコード「ポジティブの力」を聞いて成功を渇望したり、不都合があると周囲に怒鳴り散らしたりなど、何かと人間が小さい。
脚本を手掛けたロバート・シーゲルは「レイの感心すべきところは、どんなに打ちのめされても立ち上がるところだ」という。
「平凡な男で特別な存在になれる器じゃないという証を突きつけられても、これをやる意義があるはずだと思い込んでいる。そこまで歯を食いしばってやる理由。何としてもやり抜くのが彼という男なのだ。勉強家で、それだけの意欲と信念をずっと持っていた」
たしかにレイは超効率的なシステムを考案してはいない。しかし彼がいなければ、マクドナルドは世界的ブランドになっていなかっただろう。シーゲルは語る。
「マクドナルド兄弟はオリジナルのアイディアを生みだし野心もあった。だがレイは発想が桁外れで3000店舗はフランチャイズ化したいと思っていた。だからレイは創業者ではなかったが、自分を創業者と呼んだ」
タイトル『The Founder(創業者)』には皮肉も込められている。しかしレイにとっては事実だろう。”本当の創業者”と”ビジネスマンの創業者”はドラマチックに決裂して行く。この映画をただのサクセスストーリーと言いきれないのは、マクドナルド兄弟の視点も取り入れられているためだ。決裂や陰謀などダークな側面に後ろめたさを感じながらも、羨望すら感じる。反発覚えながらもレイの快進撃に圧倒されてしまう。
キャッチコピーに「怪物か。英雄か。」「きれいごとだけでは夢は絶対叶わない」とあるように、今までと違った目でマクドナルドを見るようになるかもしれない。実際、マクドナルドは制作に一切協力をしていないという。
この映画を観て「成功のためなら手段を選ばずにいけ」と後押しされるか、それともマクドナルド兄弟のように手の届く範囲の仕事にこだわりたいと思うか、はたまた別のことを思うかはその人次第だろう。
映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』は7月29日(土)角川シネマ有楽町ほか公開。