『わたし、定時で帰ります』第5話 セクハラに限らない “断れない苦しさ”に共感相次ぐ 「営業を経験した女性なら似たような経験があるはず」
結衣は副部長の種田(向井理)と共に中西に問いただすも、逆に「桜宮は楽しんでいる」と、飲み会でノリノリの動画を見せられる。後日、結衣は桜宮に「ほんとにあれが楽しい?」と聞くが、逆に「どこまでならやっていいですか?」と開き直られてしまう。
桜宮は、「基本相手に気を持たせるレベルでやめてます」として、自分も結衣と同じで、効率よく仕事がしたいからしていることだという。
「相手がこっちの意見を尊重してくれるようになれば、仕事もうまく進みますよね。皆さんの残業も減るし、東山さんにとってもプラスになると思います」
と、人それぞれの働き方に対する理解を求めた。
しかしある日の就業後、桜宮は中西に呼び出され、競技場で露出度の高いランニングウェアを着ることを要求される。桜宮は断り切れず、走る姿の動画まで撮られてしまった。
正直、筆者は泣きそうになった。仕事をしていて、取引先や上司に逆らえず、嫌なこと・人として貶められるようなことにも耐えねばならないときがある。それはセクハラに限らず、昔からサラリーマンが当然のように耐えてきたことだろう。
共感する視聴者は多く、ネット上には、「桜宮さんの考え方、行動が自分に似すぎてた」「フラッシュバックするドラマだった」「営業やってる若手女性なら、桜宮さんに近い状況になったこと一度くらいはあるかも」など、共感や過去の苦しみを思い出す声が上がった。
「横暴が許された時代はもうとっくに終わってる。最低限の敬意を払って」
ドラマは、桜宮を決して悪者にしていないところがいい。これまでのフィクションでは、「女性の武器を使って仕事を取る」的なキャラは、直球で頑張る主人公の天敵として扱われがちだった。しかし、愛想を良くして客の心をつかみ、仕事をやりやすくしようと考えることは悪いことではないだろう。相手が求める仕事の成果を聞き出すコミュ力には、大変な努力や才能が要るとも思う。
ただ、このやり方はかなり危うさもある。相手の言いなりに時間や精神を削っていては、本筋の仕事にかける労力やスキルアップの時間がなくなってしまう。ひどい時には使い捨てにされ、結果として何も残らないということにもなりかねない。 また、相手のエスカレートする要求をコントロールすることは難しく、ましてや桜宮のような派遣では尚更だ。桜宮は、仕事を得たいがために「断われない」苦さを、結衣に明かしていた。
ネット上では、「現実には中西のような上司はいるが、種田や結衣のように守ってくれる上司はいない」といった指摘があり、共感してしまう現実が悲しい。
救いは、結衣がクライアントに対して間接的に、「お互い助け合ったり認めあったりする中でしか、いい仕事は生まれない」と訴える場面だ。
「横暴が許された時代はもうとっくに終わってるんです」
「一緒に仕事する以上、最低限の敬意を払ってください!」
パワハラ、セクハラの基準が分からないと悩む方々に、届いてほしい言葉である。どんな考え方をするのも自由だが、仕事相手を尊重する気持ちは持っていて欲しいのだ。難しい問題を絶妙なバランスで展開し、世代間や性別によるギャップ、体育会系の考え方を描きながらも一括りにしない、見応えのある回だった。