“バリキャリ女子”とまでは行かなくても、肩肘張って日々の仕事をこなす女性は少なくはないだろう。2020年1月3日公開の映画『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』は、仕事に打ち込むすべての婚活女子に観てほしい作品だ。(文:市ヶ谷市子)
同作は、大統領候補のスーパーウーマンと失職中のダメ男の恋を描くラブコメディ。キャッチコピーは「男女逆転版シンデレラストーリー」。
たしかにそうなんだけど、アラサー婚活女子の筆者としては、もう「シャーロットとフレッドの関係性が最高」の一言に尽きる。超エリートのシャーロットだけど、無職ダメ男のフレッドを選ぶのも当然!と思ってしまうシーンが多々あった。働く女子にめちゃくちゃ刺さる映画なんじゃないだろうか。
婚活女子の考える「こういう人と付き合いたい!」を満たす無職のフレッド
国務長官として活躍するキャリアウーマンのシャーロット(演:シャーリーズ・セロン)は大統領選への出馬が決まる。しかし”女性”というだけで国民からの支持率は低く想定されてしまう。
そんな中、頑固で無鉄砲がゆえに失職中のジャーナリスト・フレッド(演:セス・ローゲン)と再会。ふたりは幼馴染で、フレッドに大統領選挙のスピーチ原稿を依頼する。フレッドは、彼女に親しみやすさを覚えてもらえるような原稿を作るものの、彼が破天荒すぎてアドバイザーたちは大混乱のドタバタラブコメだ。
鑑賞前は「バリキャリ女子と無職がなぜ!?」と思ったけど、観たあとは婚活女子として「こんな男性最高じゃん!」となった。そりゃシャーロットはフレッドに惹かれる……。その理由はこの3点。
1.相手に言いたいことが言える
結婚に焦ってくると、相手に「ん?これってどういうこと?」と違和感を覚えても「まあいっか。どうにかなるでしょ」スルーしてしまうことがままある。でもその違和感が積もり積もって最終的に爆発して終了、というのが筆者の常敗パターンだった。
でもこのふたりは、まずは言いたいことを主張する。体裁重視のシャーロットが原稿の修正を依頼しても、フレッドは「それは君の信念を曲げることになる」と拒否することもある。それが時にはケンカに発展するけど、どちらかが自分を抑え込むより、さらけ出して爆発するほうが今後の関係を築くにもいいと思う(ことに気づくのに27年かかった)。
「シンデレラストーリー」というけど信頼を自分のスキルで掴み取っていっている
2.よりかかれる存在であること
人に甘えることが苦手だという人も少なくはないだろう。筆者も、そもそも甘えるとは……?というレベル。この甘え下手の理由は、「本当に相手に寄りかかっても大丈夫なの?迷惑じゃない?」という変な遠慮が大きいと思う。
シャーロットがフレッドに大切なスピーチ原稿を任せられたのは、「この人なら私を支えてくれる」という確信があるからだろう。フレッドは原稿作成にあたって、改めてシャーロットに「君はどういう人?」「何を考えているの?」と問いかける。
その返答から、フレッドはシャーロットの人物像を的確に把握して原稿に反映。シャーロットの伝えたいことをしっかり伝え、さらに彼女を魅力的に思わせるいい原稿になっている。この「自分のことをわかってくれている」ってすごく安心。こんなに私のことわかってくれてるなんて……となれば相手に心を開くのも納得だ。
3.卑屈にならない
一番すごいのはふたりとも卑屈さが(そんなに)ないところ。作中でシャーロットは「男だったらもっと大統領選の支持率は高かった」「感情的になれば弱い女に見られる」と言っているんだけど、それを嘆くのではなく「じゃあこうしよう」と行動を変えていく。本当はそんなこと自体なくなればいいんだけど。
また一般的に”バリキャリ女子”に気が引けてしまう男性も少なくはない。そんな中、フレッドは無職にも関わらず「でも自分は原稿が書ける」「どういう面で彼女をサポートできる」と彼女と張り合うのではなく、自分にできることをしている。
男とか女とか、エリートとか無職とか関係なく、お互いを尊敬してサポートしているふたりを見るのはとても気持ちがよかった。
「シンデレラストーリー」というと、見初められて玉の輿というイメージがある。でも同作は、見初められはするけどフレッドはシャーロットの信頼を自分のジャーナリストスキル(と昔からの恋心)で勝ち取っていくのが現代的だ。
いいな、好きな人とこういう関係性を築いていきたいな、と思わせてくれる映画だった。ただ筆者はシャーロットではないので、やっぱり相手にも働いてもらいたいけど。
映画『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』は2020年1月3日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。