10月下旬、元でんぱ組.incのタレント最上もがさんが、UberEatsに不満を表明し大きな反響を呼んだ。彼女は2日後に投稿を削除。「誤解&不快を与えるような書き方をしました」と謝罪した。
最上さんが不満を抱いたポイントは、次の4点だった。
(1)配達時間を1時間以上オーバーした。
(2)一切連絡がなく、こちらから連絡がとれなかった。
(3)料理が冷めていた。
(4)置き配にしてるのにピンポンされた。
なぜ、こんなことが起きてしまうのか? これまで6000件以上を届けた現役Uber配達員ライターの飯配達夫さんに解説してもらった。(文:飯配達夫)【連載第14回】
「配達予測時間」は配達員に知らされていない
(1)の「配達時間を1時間以上オーバーした」は確かに、頼んだ側からすると相当イライラするだろう。だが、配達員からすれば、注文時に表示される「25分~45分」といった数字は目安にすぎないと思っている。
肌感覚では、注文から配達までの平均時間は約30?40分だが、どれだけベテラン配達員でも予測は難しい。
そもそも飲食店に行って食事をするときも、必ずxx分以内に料理が出てくるとは限らない。そのタイミングでたまたま注文が大量に重なればテーブルで待たされる。それはUberでも一緒だ。
Uber側の事情で時間がかかるのは、主に「近くに動ける配達員がいなかった」というケースだろう。(a)注文が多い時間帯(b)夜遅い(c)雨が降っている(d)店が少ないエリアだったりすると、すぐ動ける配達員の数が少なくなってくる。
最上さんが注文した日付は不明だが、削除されたブログでは「夕方」「夜暗くなってから~」とあるのでちょうど夕食時で、店も配達員も大忙しの時間帯だったのかもしれない。
(2)「一切連絡がなく、こちらから連絡がとれなかった」だが、配達員が決まった後は基本的に連絡がとれるはずだ。問い合わせに答えなかったのなら、配達員にも落ち度があるだろう。
一方で、配達員の側からユーザーに連絡するのは、配達場所がわからないときなど例外的なケースに限られるだろう。店頭で料理待ちが長引いているときも、良心的な配達員なら連絡するかもしれないが義務ではない。
実のところ、配達員はユーザーの「注文時刻」をそこまで意識していない。わざわざ意識的にチェックしないと確かめられないし、確認する義務もないからだ。
また、意外かもしれないが、配達員が決まってからユーザー側に表示される「配達予測時間」は、配達員に知らされていない。この時間は注文が確定した後、距離やバイク/自転車の別により、Uber側が自動算出しているようだ。
表示される時間は、配達員の走行速度や交通事情などに基づいて、随時更新される。だから、到着時間が近づくにつれ、予想時刻もどんどん正確になっていくはずだ。後出しの帳尻合わせなので、利用客にとって納得出来ないだろうが……。
「利用客」と「配達員」と「店舗」のトライアングル・マッチングというフードデリバリーの仕組み上、現場としては「そこを責められても……」と思ってしまう。
ちなみに、Uber配達員が得られる報酬は1件あたり300~800円くらいだ。中心価格帯は400?500円台にすぎない。配達員には拒否権があるので、面倒な配達はたらい回しにされてしまう。これは Uberの仕組み上、避けられない。その代わり安価だ。バイク便でフードデリバリーした場合の報酬(配達1件あたり1500?1800円程度)と比べれば、格安なのがわかると思う。
(3)「料理が冷めていた」、これは気の毒だと思う。Uberは時間のかかった配達に割引を適用すべきだろう。お店で聞いたところによると、雨の日の注文では配達員が足りなくてマッチングが成立せず、つくった料理を廃棄せざるを得ないケースがちょくちょく起きているという。今の仕組みでは避けられないロスだが、これを解決した企業が業界の覇者になるかも知れない。
(4)「置き配にしてるのにピンポンされた」という部分についてだが、「子供が寝ているのでインターホンを鳴らさないで」と張り紙していたそうだ。にも関わらず鳴らされたので、怒りを覚えたという。
これはこの配達員が全面的に悪い。ただ、疲れてくると全自動のような感じで体が動いてしまい、つい習慣になっているピンポンをしてしまったことが僕にもある。
ピンポンは義務ではない。配達が完了すると利用客に通知がいくので、本来不必要かも知れない。しかし「ピンポンしてくれなかったので気がつかずに料理が冷めてしまった」というクレームが入ったことがあるので、僕は原則鳴らしている。
長々と私見を書き連ねたが、自分が彼女と同じ目にあったら、やはり不愉快に感じるだろう。「有名人だから」という理由で、人として自然な感情の発露が問題視されるのも理不尽である。
ハイテク企業の例に漏れず、Uberも「走りながら考える」企業だ。Uber に厳しい目が注がれるのは期待の裏返しだろう。より一層システムの改善を図ってもらいたい。