あんなに人気だったのに…… 「マリトッツォ」ブームはなぜ急激にしぼんでしまったのか | キャリコネニュース
おかげさまで9周年 メルマガ読者数
65万人以上!

あんなに人気だったのに…… 「マリトッツォ」ブームはなぜ急激にしぼんでしまったのか

あのブームはどこへ……

2021年に全国的なブームを巻き起こした洋菓子・マリトッツォ。洋菓子やパンを扱う店では、どこもマリトッツォをラインナップに加え、生クリームを口いっぱいにできる幸せを与えてくれた。

しかし、ブームも束の間でマリトッツォは消えた。最近では売っている店もあまり見かけない。あの溢れんばかりの生クリームが幸せだったのに、マリトッツォのブームはどうして、こうも早く終わってしまったのか。(文:昼間たかし)

結局、見た目のインパクトだけだったのか

「マリトッツォ」は、イタリア発祥のパンに大量のクリームを挟んだ菓子のこと。正確にはパンの部分を「マリトッツォ」と呼び、生クリーム挟まれたものは「マリトッツォ・コン・ラ・パンナ」と呼ぶ。日本では2010年代に入ってから「イタリア人が朝食で食べるもの」として知られるようになっていた。

ブームのきっかけはコロナ禍。福岡市にあるパン屋「アマムダコタン」が火付け役とされている。同店では、コロナ禍の2020年3月に外出自粛の影響で売上が激減。そこで、インターネットでアイデアを探していて見つけたのが「マリトッツォ」だった。

試作を重ねて20年4月ごろから販売。インスタグラムで発信したところ、見た目のインパクトが大きい「マリトッツォ」は瞬く間に拡散され、人気に火が付いた。21年4月にはJR博多駅前に2号店をオープンさせた。 (『毎日新聞』2021年5月31日付夕刊)

つまり日本における「マリトッツォ」は本場のものが流行ったわけではなく、最初から日本向けにアレンジされたものが開発されてブームとなったというわけである。開発経緯は、中国の麺料理をアレンジして日本独自のラーメンが生まれたのに近いといえるだろう。

ただ、見た目のインパクトが強いマリトッツォだが、突き詰めれば、パンと生クリームの美味さで食べさせるシンプルな食べ物だ。いくら見た目が豪華でも、そのどちらもが美味くなくてはならない。かつ、工夫しないと単調な味になりがちだ。

ネギトロをシャリで挟んだ「寿司トッツォ」もあったが……

当初、ブームは、ベーカリーや洋菓子店が導入することで広がっていった。この段階では、各店舗がフルーツ入りのものを開発するなど、独自の工夫を施していた。ところが、ブームによって多くの業者が「マリトッツォ」を導入するようになると、工夫もなく単に生クリームをパンに挟んだものとなっていった。

もともとがインパクト先行で人気を得ていたものだけに、凡庸な商品が増えたことで、次第に消費者は気づいてしまった。 「これは、単なる生クリームサンドなのではなかろうか」 そうなのだ。もともとがイタリアでは朝食パンとして食べられていたものだけに、味は極めてシンプル。一口目から「濃厚に絡みつく……」みたいな重い味わいはない。日本では、朝食パンではなく、オヤツのお菓子として受容されたがゆえに、味の単調さに気づかれると 飽きられるのも早かった。

この部分を誤魔化すためにインパクトだけを狙ったような後追い商品が登場したのも致命的だった。フルーツをトッピングしたものならまだしも、おはぎにクリームを挟んだ「はぎトッツォ」、ネギトロをシャリで挟んだ「寿司トッツォ」も登場したが、話題になったのは一瞬だった。

一時期、大ブームになったタピオカドリンクと同じく、見た目のインパクトに頼ると飽きられるのも早いことを示してくれたわけだ。 ブームは過ぎ去ったとはいえ「マリトッツォ」は決して不味いものではない。生クリームの豊富な糖分は、朝の眠い頭を目覚めさせるのに最適だ。しかし、問題は、いま再び「マリトッツォ」を食べてみたいと思った時に、どこにも売っていないことだ。この記事を書くにあたって、あちこちの店を訪ねてみたが、もはやどこにも売ってない。ティラミスやタピオカがブームが過ぎた今でも販売されているのとは大違いだ。もしも、ここで売っているという情報をお持ちなら、ぜひ教えて頂きたい。

【PR】注目情報

関連記事

次世代バナー
次世代バナー

アーカイブ