タワマンに住んでいると、それだけで羨ましがられることがある。特にいま、タワマンが増えている地方都市では、その傾向が余計に強い。大都市圏に比べて賃金も安い地域でタワマンが買える人は、それだけで尊敬されるのだ。
しかし、中国地方の県庁所在地でタワマンの低層階を購入した30代男性(世帯年収1000万円)は、いささか疲れている。
「自分の顔を見れば、みんなタワマンタワマン……いい加減にしてほしいですよ」
実際、どんな問題が生じているのか男性に話を聞いた。(取材・文:広中務)
竣工しただけで地方紙のニュースになった注目のタワマン
男性が購入したタワマンは、県庁所在地の中心駅から徒歩圏内にある。商業施設も併設しているし、スーパーもデパートも徒歩圏内に揃っている。同じ市内でも、実家は郊外にある男性にとっては大都会に引っ越した気分だ。
「最上階は億超えですが、低層階なので3LDK、71平方メートルで約5500万円でした。頭金は妻の実家からも援助してもらって多めに入れました。それに、自分は公務員なのでローンの審査もすんなりでした。いま、保育園に通っている子どもが小学生になったら、妻も時短勤務を解消するので、二馬力で早めの返済を目指します」
ちなみに、男性の購入したタワマンは竣工しただけで地方紙のニュースになったくらいに、地域で注目されている物件だ。
「もっと築年数が古い物件だったら、同じ金額で90〜100平方メートルのもあったんですが、せっかくだから広さよりも、設備の整った物件がいいなと思ったんです」
都内ならば億ションクラスの設備で、ゲストルームに加えて、シアタールームも完備。商業施設には、フードコートも併設され、なぜかアートスペースまで。なお、筆者もこのタワマンのフードコートを利用したことがあるのだが、フードコートなのに、基本はメニューが1000円超えという謎の高級仕様である。
仕事は公務員。そして、住まいは県民が総じて住みたがるタワマン。男性は、30代にして、頂点まで上りつめた気分を味わった。しかし、それも現在では過去の話である。
親戚の農家のおじさんには説教される
「とにかく、自分と話す人が会話の中で一度は必ずマンションの話をしてこようとするんです」
聞けば、なにかと話の枕がタワマンになるという。
「友人と会えば、挨拶の次の会話はたいてい『ローンが大変でしょう』です。別に興味があるわけじゃないのに必ず聞かれます。大変だったら、代わりに払ってくれるんでしょうか。むしろ、払えなくなるのを期待されているような気すらしますよ」
自分よりも年上の人との会話もやはりタワマンだ。
「大抵『結婚もして、子どももいるし頑張ってローンを返さなきゃ』と言われますね。職場の上司なんかも月に数度は『ローン、頑張ってるか』と言ってきます。よっぽど身の丈に合わない買い物をしたヤツと思われてるんでしょうか」
さらに、先日の法事ではこんなこともあった。
「久しぶりに会った親戚の70代のおじさんから、長々と説教されましたよ。『タワマンを買ったからには、もっと努力しなきゃいけない』とかなんとか。なぜか、タワマンに住む上での人生を説かれたわけです。そのおじさんは、田舎の農家なのに……」
とにかく男性の顔を見ると誰もが「タワマン…」と話題にする。
「器用なほうではありませんが、仕事でも成果をあげているつもりなんですが、自分はタワマン以外に特徴もない男なんでしょうか」
最近男性は、タワマンの話題になった時にふいにキレそうになることもあるという。
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